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第3章 消費者の問題認識と 購買意思決定 . 1節 問題解決としての購買意思決定 不良定義問題・ヒューリスティックス(発見法) 2節 購買意思決定問題の認識 現実の状態,目標事態,問題解決の3つのタイプ 3節 購買意思決定問題の認識のされ方 決定フレームとフレーミング効果 4節 消費者の状況依存的な問題認識 心理的財布. 1節 問題解決としての 購買意思決定. デューイ( Dewey) の思考の5段階 “ How we think” (1910) 問題解決が広く,現場的 情報処理の考え方からの問題解決 定義の仕方が厳密. デューイ( 1910) の思考の5段階.
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第3章 消費者の問題認識と購買意思決定 • 1節 問題解決としての購買意思決定 • 不良定義問題・ヒューリスティックス(発見法) • 2節 購買意思決定問題の認識 • 現実の状態,目標事態,問題解決の3つのタイプ • 3節 購買意思決定問題の認識のされ方 • 決定フレームとフレーミング効果 • 4節 消費者の状況依存的な問題認識 • 心理的財布
1節 問題解決としての購買意思決定 • デューイ(Dewey)の思考の5段階“How we think” (1910) • 問題解決が広く,現場的 • 情報処理の考え方からの問題解決 • 定義の仕方が厳密
デューイ(1910)の思考の5段階 • (1)ある困難が感じられ(問題事態) • (2)それの所在がつきとめられ(問題発見) • (3)解決のプランが思い浮かべられ(仮説構成) • (4)解決のプランがもたらすであろう帰結が推理によって展開され(推理) • (5)その帰結を観察や実験に移し、それにより仮説は採択あるいは棄却される(検証)
情報処理の考える「問題解決」とは(その1)情報処理の考える「問題解決」とは(その1) • 生物が一つの目的をもちながら、しかもこの目的にどうして到達したらよいかを知らないときに、いわゆる「問題」が発生するのである。 • 与えられた状態から、たんなる行動(ここで行動というのは、簡明な操作の遂行をいう)によって、目指された状態に到達されないときには、思考によらなければならない。
情報処理の考える問題解決とは(その2) • だから、思考はまず第一に、現存の状態と目指された状態とを媒介する操作を工夫考案すべきである。 • したがって、このような実際的問題の解決は、二つの要求を充たすことになる。 • すなわちその実現(実践への移行)は、第一に、目指された目標状態の現実化をはかり、 • 第二に、与えられた状態から簡単な操作によってそれに到達するものでなければならない。 • Dunker,K. 1935. (小宮山栄一訳 問題解決の心理 金子書房 1952)
問題解決 • 初期状態(空腹) ↓ 操作(変換)(ご飯を食べる) • 目標状態(空腹を満たした状態) • 状態空間
問題解決(人工知能の定義) • 問題とは,初期状態,目標とする最終状態,(ある状態を別の状態へ変化させる)操作の集合の形式で与えられる。 • 問題解決とは,初期状態から順次,適用可能な操作を探してこれを適用することにより,最終状態へ到達することをいう。 • 「枝刈り」と「問題の表現の選択」が重要 • Michalski,R.S.他編『知識獲得用語集と総合文献集』共立出版,1989,p62
目標の最終状態(空腹を満たす)に至るための下位(副)目標目標の最終状態(空腹を満たす)に至るための下位(副)目標 • (1)自分で料理する(2)出来合いを利用する • (2)→(1)すでに家にあるもの (2)買ってくる (3)食べに行く (4)誰かにつくらせる • (2)(2) 何を買うか,どこで買うか • 上のように下位目標を決めて行く
不良定義問題(ill-defined problem) • 「おいしいものを食べる」 • 「きれいな服を買う」 • 明確に規定できていない。人や状況によって異なるなど。 • 上の例は目標状態が明確に規定できていない。 • 「初期状態と目標状態が、どの程度明細に規定されているか」
消費者行動の試験は難しいですか? これはどのような意味で 不良定義問題か?
構造化されている(well-structured) • 目標や解決のために取りうる手段がはっきりしている • 問題の3つの要素 • (1)初期状態 • (2)目標状態 • (3)初期状態から目標に到達するのに使われるだろう処理のセット • 3つが完全に明確にされていれば その問題は十分に定義されている。 • 同義well-defined (ill-defined ill-structured)
方略 (ストラテジー)(strategy) • 初期状態から目標状態にたどりつく手順を探索する仕方。 • 例 • 順向探索(初期状態から目標状態の方向へ探る) • 逆向探索(目標状態からそこに到達する手段を逆に探っていく) • しらみつぶし方略(あらゆる操作を適用の試み) • 手段・目標分析 • アルゴリズムとヒューリスティックス
アルゴリズム 正しく適用すれば必ず正しい結果が得られる一連の手続き(オセロにおける「しらみつぶし」方略,2次方程式をとく手順) (コンピュータアルゴリズムの場合,この定義と違う場合がある) ヒューリスティックス(発見法) しばしば経験から導かれるものであり,必ずしも正しい結果に至ることは保証されていないが,適用が簡単な手続き
ヒューリスティックス(発見法) • 習慣的問題解決以外は,ヒューリスティックスになっていることが多い。 • 習慣的問題解決以外は多くは不良定義問題である。→デューイの定義の見直し
2節 購買意思決定問題の認識1 購買問題認識の生成過程 • 現実の状態(actual state) • 目標状態(goal state =>desired state 望みの状態・所望状態)
目標状態=所望状態が高められたとき(あれいいや)→基本的には楽しみ目標状態=所望状態が高められたとき(あれいいや)→基本的には楽しみ • 現実状態が低められたとき(靴が履けなくなった)→基本的にはやっつけ仕事(補充) • もちろんいろんな条件で変わってくる。
2 購買問題認識の状況 • (1) ルーチン的問題解決(習慣的問題解決) (醤油が切れた) • (2) 限定的問題解決 (テレビの買い替え。だけど前の ブランドはない) • (3) 広範(的)問題解決 (クルマを初めて買う)
広範問題解決の場合 • クルマ,ステレオなどを初めて買う • 「この製品クラスは私のものか?」 • どのような基準で選んだらいいのか?(選択基準の作成) • 属性(靴のクッション,色など)についての学習や概念形成や,複数の選択肢について,複数の属性に関する検討を必要としており,その問題認識は,非常に複雑である • デューイの「思考の5つの段階」
問題解決タイプの特徴Loundon & Bitta(1993) Consumer behavior. 4th ed. McGraw-Hill p486より
《必要性認知の原因》(Engel et al. 1995) • (1) 時間(一定の時間経過→心理的陳腐化, 季節) →次のスライド • (2) 環境の変化(引っ越し,進学,収入増) • →次のスライド • (3) 製品の獲得(新しい服→ネクタイ,靴) • (4) 製品の消費(使用) (壊れる,なくなる,ストック)→スライド • (5)マーケティングの影響(製品クラス,ブランド) 味の素マヨネーズの広告 • (6) 個人差(actual state typeとdesired state type)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2007/0703table10.pnghttp://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2007/0703table10.png
消費動向調査(全国、月次) • 平成19年(2007年)3月実施調査結果 • 平成19年4月17日公表経済社会総合研究所景気統計部 • http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2007/0703shouhi.html • 調査時点 調査基準日は平成19年3月15日 • 調査時点 今回の調査基準日は平成19年3月15日 • 細かくは • http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2007/0703sousetai.pdf
(6) 個人差(actual state typeとdesired state type) • 現状が変化したために必要性が生じるタイプ(ASタイプ) 例.靴がすり切れないと買わない人 • 望ましい状態が変化したために必要性が生じるタイプ(DSタイプ) • 例.いい靴を見ると買ってしまう人 • 注意:(たいていの便宜品(最寄り品)の必要性は現状が変化したために生じる)
必要性認知の刺激(Sheth et al.1999) • 問題刺激(空腹,汚い服,リスクを訴える保険の広告) • →現実状態 • 解決刺激(焼きたてパンの匂い,新しいスタイルの服) • 理想状態 • 誘因
その他必要性認知で考慮すること • Loundon & Bitta,1993
意思決定を延ばす理由(Loundon & Bitta,1993) • (1) 一番のブランドを選ぶのが困難 • (2) 時間がない • (3) 製品の性能のリスク知覚 • (4) 不確実性 • (5) 課題を忌避と不快感 • 電通 ついかいそびれてしまうものは • http://www.dentsu.co.jp/trendbox/topics/2002/020930.htmlも参照のこと
つい買いそびれる理由(電通) • 金銭的問題(高いなど)50件 • 新機種が出た・でそう(17件) • 欲しい製品がない(17件) • 商品選択を迷う(14件) • まだ使えるものがある(13件) • 時間がない(13件) • 自由回答n=167(サンプル数は400,2002年) • http://www.dentsu.co.jp/trendbox/topics/2002/020930.html
3節 購買意思決定問題の認識のされ方 • (決定フレームとフレーミング効果) • ここで紹介する理論は2002年ノーベル経済学賞受賞のKahneman氏とすでに故人となったTversky(1937-1996) によるもの。
フレーミング効果= 心的構成効果(竹村)フレーミング効果= 心的構成効果(竹村) • 意思決定問題の客観的特徴が同じで,かつその情報が指示する対象が同じであっても,その問題認識の心理的な構成(決定フレーム)によって,結果が(劇的に)異なることがある。このような現象のこと。(Tversky & Kahneman,1981)
A,Bのタイプの当たりくじがでる箱がある。A,Bどちらの箱を選びますか?A,Bのタイプの当たりくじがでる箱がある。A,Bどちらの箱を選びますか?
実験結果 • 実際にこれで賭をします。という教示58% A(N=124)Bのほうが確率的に得なのにAを選ぶ • 同じ内容をわかりやすく表現すると次のようになる。
C,Dのタイプの当たりくじがでる箱がある。C,Dどちらの箱を選びますか?C,Dのタイプの当たりくじがでる箱がある。C,Dどちらの箱を選びますか?
実験結果 • 100% D(N=88) • 実際にこれで賭をします。という教示58% A(N=124)Bのほうが確率的に得なのにAを選ぶ • B,Dと同じ。 • →Aは1つがマイナスでBは2つがマイナスというのが違い。この見かけが選択の仕方を決めた。
ポジティブ・フレームの問題 • あなたが持っているお金の他に,2万円が入ったとします。さらに,あなたは, • (a) 確実に5千円もらうか, • (b)2万円得られる確率が25%で何も貰えない確率が75%のクジを引くか, • の2つのうちいずれかの選択肢を選ばなければならないとしたら,どちらを選ぶ。
ネガティブ・フレームの問題 • あなたが持っているお金の他に,4万円が手に入ったとします。そして,あなたは, • (a)確実に1万5千円失うか, • (b)2万円失う確率が75%のクジを引くか, • の2つのうちいずれかの選択肢を選ばなければならないとしたら,どちらを選びますか。(竹村,1996改)
この2つの教示のバージョンは,表現は異なるが,その期待値やリスクに関しはまったく同じ。この2つの教示のバージョンは,表現は異なるが,その期待値やリスクに関しはまったく同じ。 • Tversky & Kahneman()内竹村,1996 • (a) はリスク回避型(リスクがない) • (b) はリスク探索型(リスクがある) • フレームのタイプ • ポジティブ ネガティブ • (a) 72%(65%) 36%(21%) no risk • (b) 28%(25%) 64%(79%) risky
Tversky & Kahneman(1988)の実験 • $300増えた • (a)$100確実に得る • (b)$200得るチャンスが50%,なくなってしまう確率が50% • $500増えた • (a) 確実に$100失う • (b)[すべて得る]のと[$200失う]が半々
実験結果の知見 • 利得を含む選択の場合(ポジティブフレーム) • はリスク回避 • 損失を含む選択の場合(ネガティブフレーム) • はリスク探索 • (ただし,損得の確率が低い場合を除く) • フレームによって意思決定が異なる。
1 購買における決定フレームとフレーミング効果1 購買における決定フレームとフレーミング効果
フレーミング効果が存在する。 • →効用理論(経済学)やマーケティングの数理的モデルではこの効果を説明できない。 • 効用理論や数理的モデルの多くは,説明の一般化のために,意思決定問題の言語表現の形式の相違を無視している。
問題A • 「12,500円のジャケットと1500円の電卓を買おうとしたところ,店員から,自動車で20分かかる支店に行くと1500円の電卓が1000円で販売していることを聞かされた。その支店まで買いにいくかどうか。」 • 問題B • 「12,500円の電卓と1500円のジャケットを買おうとしたところ,店員から,自動車で20分かかる支店に行くと12,500円の電卓が12,000円で販売していることを聞かされた。その支店まで買いにいくかどうか。」
実験結果 • Aでは68%が支店までいく • Bでは29%が支店までいく • →2つ一緒の買物なのに電卓とジャケットを別々に考えた。つまり電卓の買物とジャケットの買物という2つの意思決定の問題に分離してフレーミングを行った。 • 問題Aでは,1500円が1000円に注目。 • 問題Bでは,12,500円が12,000円の部分に注目。
2 フレーミング効果を説明するプロスペクト理論2 フレーミング効果を説明するプロスペクト理論 • 意思決定過程は, • (a)編集段階:問題を認識し,フレーミングする • (b) 評価段階:その問題認識にしたがって選択肢の評価を行う。 • の2つの段階に分かれる。 • 編集段階では,わずかの言語表現の相違などによってフレーミングのされ方が異なってしまうので,意思決定問題の客観的特徴がまったく同じであってもその問題の認識が異なってしまう。
編集段階は後続の処理(評価と選択)を簡単にするものである。編集段階は後続の処理(評価と選択)を簡単にするものである。 • 評価段階でも非線形問題がある。客観的価値(金額)と主観的価値(効用)の間の関係。 • ○電卓問題の説明 • ○複数購入の場合,(値段の高いほうよりも)値段が安い商品の値下げ額を大きくする。 • ○ 値引きの比率表示,金額表示
割引 • 割引(小嶋,1986)p179 • 比率表示と値下げ金額表示のどちらがよく売れるか? • 一流ブランド → 値下げ比率表示 • 二流以下ブランド → 値下げ金額表示
4節 消費者の状況依存的な問題認識1 状況依存的な問題認識と心理的財布
「心理的財布」(小嶋) • 消費者が異なる複数の財布をあたかも所有しているように行動し,購入商品やサービスの種類や,それらを買うときの状況に応じて別々の心理的な財布から払う。 • それらの心理的財布は,それぞれが異なった次元の価値尺度を持っているので,同じ商品に同じ金額を支払った場合でも,その金額を支払う財布が異なれば,それによって得られる満足感や,出費に伴う心理的痛みも異なる。