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「不安の医学」第13回都民講演会 「躁うつ病治療の実際」. 2007.2.4. 国立精神・神経センター 武蔵病院 精神科 岡本長久. 躁うつ病のうつ状態(双極性うつ病). 躁病エピソード. うつ病エピソード. 症例1: A さん( 37 歳男性、会社員). 従姉がうつ病で精神科通院歴あり。 大学卒業と同時に結婚。 技術職として 10 年間勤務してきたが、 34 歳時の 4 月に事務部門の主任を任されてからは、仕事にやりがいを感じ、張り切って出社していた。 もともと社交的で明るく、人に気を使う性格。. 34 歳.
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「不安の医学」第13回都民講演会「躁うつ病治療の実際」「不安の医学」第13回都民講演会「躁うつ病治療の実際」 2007.2.4. 国立精神・神経センター 武蔵病院 精神科 岡本長久
躁うつ病のうつ状態(双極性うつ病) 躁病エピソード うつ病エピソード
症例1: Aさん(37歳男性、会社員) 従姉がうつ病で精神科通院歴あり。 大学卒業と同時に結婚。 技術職として10年間勤務してきたが、34歳時の4月に事務部門の主任を任されてからは、仕事にやりがいを感じ、張り切って出社していた。 もともと社交的で明るく、人に気を使う性格。
34歳 34歳、主任をまかされて4ヶ月が経つ頃、仕事の疲れがなかなかとれず、気持ちも沈みがちで、ちょっとしたことで不安を感じるようになった。 何事にも気乗りせず、ドライブを楽しんでいた休日も友人と会うのが億劫で、家でゴロゴロとテレビを見て過ごすようになった。 勤務は午前中が倦怠感が強く能率が落ちた感じがしたが、午後からは幾分楽になった。辛いながらも何とか出社していたところ、3ヶ月ほどでうつ状態は改善した。その後は以前のように調子が戻り、再び張り切って事務の仕事を続けていた。
35歳 34歳 35歳時、6月ころから、特に理由なく、自信がみなぎるようになった。寝る間を惜しんで勉強し、仕事とは無関係の資格を立て続けに4つとった。 部下を連れて毎日飲みに行き、気前良くおごってしまったり、妻に毎日プレゼントを買って帰ったり、金遣いが荒くなった。 気分は良いが、些細なことでイライラしやすくなり、同僚から怒りっぽいことを指摘された。次第に上司に横柄な口のきき方をするようになり、職場で問題となったが、3ヶ月ほどで軽躁状態は改善した。
35歳 37歳 34歳 37歳時、11月に事務部門の係長に昇進した後から、自信がなくなり、些細な事が心配となりミスをしていないかと書類を何度も確認するようになった。早朝4時に目覚め、再び眠れなくなった。動悸がし、自分が心臓病なのではないかと心配になった。食事は取れているものの、何を食べても砂をかんでいるようで美味しくなかった。頭がモヤモヤして仕事に集中できず、朝方は特に辛く、ついに出社できなくなった。仕事に行けない焦りはつのる一方だったが、体は億劫で動かず、次第に家族に「生きていても仕方がない」と話すようになった。 このため家族に伴われ翌年1月に当院初診した。
採血や心電図などの体の検査では特に問題なく、心と体のエネルギーが低下した “うつ状態” と考えられます。 過去に軽躁病エピソードがあり、現在は双極II型障害のうつ状態と考えられます。 インシュリンが足りなくなって血糖値が上がる糖尿病などの体の病気と同じように、脳の神経物質の乱れが起きていて、気分や意欲に関してのバランス調整が取れなくなった状態です。 37歳時、当院精神科を初診した。
躁うつ病(うつ状態) 34歳 35歳 37歳 当院初診
一回目の受診:治療の説明 双極性障害の治療の基本は 1.十分な休養をとる 2.気分安定薬をのむ 3.環境を調整する の3つです。 必ずよくなる病気ですから、一緒に治療をすすめていきましょう。まずは十分な休養をとってください。休息が必要であることの職場への診断書を書きますが、よろしいですか? ゆっくり休めるように家族の方も、ご協力お願いします。「あれしたら・・・これしたら・・・」と励まさないようにしてください。
一回目の受診:治療の開始 いきなり抗うつ薬を使うと躁転の危険がありますので、今日は、神経物質の乱れを整える、「炭酸リチウム」という気分安定薬を処方します。効果が出るまで3~4週間かかりますので、効果がないからとやめないでください。手の振るえや喉が渇くなどの副作用がでることがありますので、出現した場合は教えてください。これで改善しなければ、弱い抗うつ薬を処方します。必ずよくなる病気ですので、自殺だけはしないように約束してください。
二回目の受診(14日後) 先生の診断書を出して仕事を休んでから、あせりや不安は少しましになり、「生きていても仕方がない」と思うことはなくなりました。 おいしくは感じませんが食事も少し食べれるようになり、夜も睡眠薬のおかげで少しは眠れるようになりました。 でもまだ体がだるくて、家で寝てばかりいます。
二回目の受診(14日後) 薬を飲み、ゆっくり休んでくださったおかげで、食べたり寝むれたりと少しずつよくなっていますよ。 手の振るえなどの副作用はありませんか? 今回は、血中濃度を測ってから、リチウムを十分量に増やしましょう。その調子で、休養を上手にとってください。休めば休むほど体のだるさはとれてきますよ。
三回目の受診(28日後) 家族には迷惑をかけていると思うのですが、協力してくれて、ゆっくりできています。 先週くらいからおなかも空くようになり、夜も眠った感じがするようになりました。そろそろ仕事もいけそうな感じがするのですが、今日先生に相談してからと思い、まだ仕事は休んでいます。
三回目の受診(28日後) 大分良くなってますが、まだまだ休息が必要な状態です。充電期間だと思って、スローペースな生活でいきましょう。ゆれ戻しが来ることもありますので、来月まで様子を見て、調子がよければ、復職を相談していきましょう。 気分が良すぎたり、活動しすぎてしまうことはありませんか? リチウムは躁うつ病相の再発予防にも有効ですので、良くなってもしばらく内服を続けてください。
炭酸リチウム 躁うつ病(うつ状態) 34歳 35歳 37歳 当院初診
双極性うつ病 炭酸リチウムの追加または増量 選択セロトニン再取り込み阻害薬 または 選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 の追加 非定型抗精神病薬の追加 ドパミンアゴニストの追加 バルプロ酸またはカルバマゼピンの追加 甲状腺ホルモンの追加 三環系抗うつ薬の追加(躁転リスク大) ECTの併用 *精神病の特徴を伴う場合は早期より抗精神病薬併用 *ラモトリジンがわが国で発売されたらLiと同レベルの扱い *気分安定薬以外の無効薬剤は早期に中止 躁うつ病のうつ状態の薬物治療の概要【武蔵病院】
単極性うつ病と躁うつ病のうつ状態(双極性うつ病)の比較単極性うつ病と躁うつ病のうつ状態(双極性うつ病)の比較 抗うつ薬 炭酸リチウム
軽躁病エピソードは見逃されうつ病と診断されることがある軽躁病エピソードは見逃されうつ病と診断されることがある 双極性うつ病と単極性うつ病の治療は異なるが、 うつ状態で受診したときに軽躁病エピソードは見逃されることが多く、双極性うつ病の3分の1が単極性うつ病と誤診されている。(Ghaemi2000)
症例2:Bさん(51歳男性 大学教授) 家族歴: 特記なし 現病歴: 大学院卒業後、出身大学の講師、助教授を経て、51歳時より教授職。 35歳ころより、毎年秋になると、寝つきが悪く、体がだるくなり、仕事に気乗りがしない日が続くことがあった。仕事に支障はなく、毎年春になると回復するため、うつ状態とは思わずあまり気にはしていなかった。 49歳の秋、いつになく気分が落ち込み、寝つきが悪く、やっと寝付いても夜中に何度も目を覚ますようになった。食欲が低下し、疲れやすく、授業をするのが困難となり、休職。次第に自分などいなくなった方が大学や学生のためではないかと思うようになった。
学部長の勧めで、近医精神科受診。うつ病と診断され、パロキセチン(SSRI)を処方された。うつ症状は4ヶ月ほどで改善し、再び教壇に立つようになったが、近医への通院は続け、再発予防のため抗うつ薬内服は継続していた。学部長の勧めで、近医精神科受診。うつ病と診断され、パロキセチン(SSRI)を処方された。うつ症状は4ヶ月ほどで改善し、再び教壇に立つようになったが、近医への通院は続け、再発予防のため抗うつ薬内服は継続していた。 1年後の51歳時の春、特に誘因なく、自信がみなぎり、気分が高揚し、朝4時から大学に行き、論文を書き始めるようになった。次第に多弁となり、機嫌よく話し続ける一方で、家族や学生に怒りっぽくなった。学内規則を守れず、学生を連日飲みに連れ出し、自分の業績の自慢話が多くなった。みかねた同僚の教員や家族が休職するように勧めたが、「俺の仕事の邪魔をするな」と周囲が止めるのを聞かずに大学に出勤した。家族が主治医に相談し抗うつ薬を中止されたが、軽躁状態が改善しないため当院紹介受診した。
双極II型障害の軽躁状態と診断し炭酸リチウム開始。双極II型障害の軽躁状態と診断し炭酸リチウム開始。 軽躁状態は改善し、以後再発もない。 炭酸リチウム 妻の話によれば、過去2回ほど春から夏にかけ、いつもより多弁で、仕事のやる気にあふれ、朝早く大学に出勤し、短期間に論文を仕上げるという年があった。妻や同僚は仕事にやる気が出ているだけと思っており、軽躁病とは思わなかった。 軽躁病エピソードは見逃されうつ病と誤診されることがある 毎年秋から冬の軽うつ病エピソード 35歳 49歳 51歳 当院初診 パロキセチン
抗うつ薬投与を契機に躁うつ病に気付かれることがある抗うつ薬投与を契機に躁うつ病に気付かれることがある • 単極性うつ病を11年間追跡すると、3.9%が双極I型 • 8.6%が双極II型に移行した(Akiskal1995)。 • 双極性障害の56%は以前に単極性うつ病と診断されたこと • がある (Ghaemi2000)。 躁うつ病は意外と多いが、躁や軽躁病の既往のない初回うつ病エピソードでは、単極性うつ病との鑑別が困難。そのため気分安定薬の投与なしに抗うつ薬を投与され躁転することがある。
躁うつ病になりやすいうつ状態がある 初回うつ病相のみで双極性障害を診断できるか? • 病前性格として精力性 • 若年発症 • うつ病エピソードの遷延化 • 双極性障害の遺伝歴 • 頻回のうつ病エピソードの既往ならびに入院歴 • 非定型病像やメランコリー病像 • 薬剤性の(軽)躁状態を呈した既往 双極III型障害として双極性障害の仲間(Soft bipolar spectrum)に含めたほうがいいという意見もある。
症例6:Fさん(29歳男性 内科医師) 家族歴: 父親が躁うつ病 現病歴: 医学部卒業後、研修を終え、病院勤務。24歳時、結婚し1子をもうける。社交的、精力的で、責任感の強い性格。 27歳時に、大学病院から現在の総合病院に転勤し、多忙な生活であった。28歳時の秋、寝つきが悪くなり、動悸、胃部不快感、嘔気、眩暈などの身体症状が出現した。心配になり、各種検査をしたが身体的に異常はなかった。同僚医師に相談したところうつ病を疑われミルナシプラン(SNRI)を服用開始。身体症状や寝つきの悪さは、1ヶ月で改善したが、その後、気分が高まり、イライラしやすく、多弁で同僚に過干渉となったため、抗うつ薬誘発性の軽躁状態を疑われ、同僚医師の勧めでミルナシプラン中止、以後軽躁状態は改善し、問題なく勤務を続けていた。
29歳時、再び早朝に覚醒しその後眠ることができず、食事が美味しく感じられなくなった。趣味のゴルフも楽しめなくなり、TVも見るのが億劫となった。午前中の疲労感が強く、勤務が辛くなった。同僚から睡眠薬を処方してもらい辛うじて仕事は続けていたが、うつ症状が改善しないため、同僚医師に相談し、再びミルナシプラン(SNRI)を服用。徐々にうつ症状は改善したが、1ヶ月程度で多弁で同僚に過干渉となり、香水をつけて病院に行くなどの行動が見られた。29歳時、再び早朝に覚醒しその後眠ることができず、食事が美味しく感じられなくなった。趣味のゴルフも楽しめなくなり、TVも見るのが億劫となった。午前中の疲労感が強く、勤務が辛くなった。同僚から睡眠薬を処方してもらい辛うじて仕事は続けていたが、うつ症状が改善しないため、同僚医師に相談し、再びミルナシプラン(SNRI)を服用。徐々にうつ症状は改善したが、1ヶ月程度で多弁で同僚に過干渉となり、香水をつけて病院に行くなどの行動が見られた。 ミルナシプランを中止しても軽躁症状が進行するため、当院初診した。 初診時の印象 爽快気分を認め、多弁で、自分がいかに一生懸命仕事をしているか話す。医師が質問しても自分の話が止まらず、「ここ2ヶ月ずっとテンションが高い」と自覚がある。
双極II型障害の軽躁状態と診断。一時休職を進め、バルプロ双極II型障害の軽躁状態と診断。一時休職を進め、バルプロ 酸を使用。1ヶ月で症状改善し、その後再発はない。 バルプロ酸 確かにこの時点では、うつ病と診断し抗うつ薬を服用するのは正しい判断。 もしも自分が躁うつ病だったと分かっていれば、まず気分安定薬を使うはずだが、分からないのは当然。 こちらの時点では、躁うつ病の遺伝歴に加え、抗うつ薬誘発性の躁転歴があるため、気分安定薬を使ったほうが良かったかも・・・。 抗うつ薬を契機に躁うつ病に気付かれることがある 28歳 29歳 当院初診 ミルナシプラン
躁うつ病のそう状態(そう病) 躁病エピソード うつ病エピソード
症例3:Cさん(36歳男性、会社員) 家族歴: 母が躁うつ病で精神科通院歴あり。 現病歴:31歳時結婚。営業10年のベテラン。明るくユーモアがあり友人が多い。 4年前の32歳時、仕事にやる気がでず、取引先と話すのが億劫で営業のノルマが達成できないことがあった。眠れなくなり、はじめて会社を無断欠勤した。体がだるく自宅でゴロゴロして過ごすことが多く、会社には出たり出なかったりの日が続いた。仕事への自信がなくなり、「仕事を辞めよう」と考えていたが、病気とは思わず、受診はしなかった。 2ヶ月ほどで自然に元気が出て、再び毎日出社できるようになり、元のように仕事ができるようになった。その後は、元通りやり手の営業マンとして仕事を順調にこなしていた。
4年後の36歳時、理由なく自信がみなぎり、仕事の自慢ばかり多弁に話すようになり、同僚から「テンションが高い」、「性格が変わった」と指摘されるようになった。新車を3台を立て続けに注文したり、高級なクラブで毎日すべてをおごったりし、やがて消費者金融から金を借りるようになった。仕事のやる気にあふれ、ほとんど睡眠をとらず、取引先に深夜まで横柄な口調で電話を掛け続けた。先方より非常識であることを指摘されると、取引先を怒鳴るなど仕事上のトラブルが絶えなくなった。4年後の36歳時、理由なく自信がみなぎり、仕事の自慢ばかり多弁に話すようになり、同僚から「テンションが高い」、「性格が変わった」と指摘されるようになった。新車を3台を立て続けに注文したり、高級なクラブで毎日すべてをおごったりし、やがて消費者金融から金を借りるようになった。仕事のやる気にあふれ、ほとんど睡眠をとらず、取引先に深夜まで横柄な口調で電話を掛け続けた。先方より非常識であることを指摘されると、取引先を怒鳴るなど仕事上のトラブルが絶えなくなった。 「俺は天才だから、今の会社を辞め会社をおこし大もうけする」と話すようになり、周囲が止めるのも聞かず社長室に乗り込み社長に出資を求めるなどの逸脱行動が見られた。家族や同僚が通院を勧めたが、「俺を精神病にするのか!」と怒鳴りちらし、暴力を振るった。 家族と上司に強制的に連れられて当院を受診した。
初診時の印象 初診時、問診に対してすべて「イエス!」「ドゥーユー?」など英語で答え、多弁で上機嫌。「会社をつくれば10億もうかる」など誇大妄想を話し続けるが、話題は次々と飛んでまとまらない。 躁うつ病(双極I型障害)の躁状態であることを説明し、服薬および入院の必要性を説明するが、「損害賠償するぞ!」 「俺は絶好調だ!病気ではない、バカ医者め!」と服薬は拒否する。 妻の同意を得て、医療保護入院とし、個室施錠にて治療開始。上機嫌に歌を歌いだしたかと思うと、薬は飲まないと興奮しドアを蹴るなど、意にそぐわぬことがあると些細なことで興奮状態となった。
再三の服薬の必要性の説明も、了解が得られず、抗精神病薬の静脈注射にて治療開始した。徐々に躁症状は改善。再三の服薬の必要性の説明も、了解が得られず、抗精神病薬の静脈注射にて治療開始した。徐々に躁症状は改善。 3週間で躁症状は改善し、職場でのトラブルや浪費を悔いた。「再発したら大変ですから」と服薬理解が得られ、再発予防のため炭酸リチウムを内服開始し、2ヶ月後退院。再発はない。 抗精神病薬静脈注射 炭酸リチウム 躁うつ病(双極Ⅰ型障害の躁状態) 当院入院 32歳 36歳
そう・うつ混合状態(不快そう病) 躁病エピソード うつ病エピソード
症例4:Dさん(31歳女性、主婦) 家族歴:母方祖母が出産後うつ状態 現病歴:高卒後、事務員として働き、25歳で職場結婚した。26歳時、妊娠を契機に退職した。正常分娩し、出産後は、母子ともに健康であったが、出産3ヶ月後よりイライラして夜寝れなくなった。気分が沈み、今までこなしていた家事や育児が億劫となり、「育児に自信がない」と涙ながらに夫に訴えるようになった。他院精神科を受診し、産後うつ病と診断され、外来にてアモキサピン(三環系抗うつ薬)を処方され3ヶ月でうつ状態は軽快し、服薬を中止した。 28歳時、特に理由なく気分が高揚するようになり、子育てを放棄し、毎日のように友人と外出し、ブランド品を買い漁り、夫以外の恋人を作った。軽躁状態と判断され、他院にて炭酸リチウムが開始となり、2ヶ月で軽躁状態は改善した。
その後は、夫とも和解し、再び育児と家事を問題なくこなしていた。 その後は、夫とも和解し、再び育児と家事を問題なくこなしていた。 31歳時、子供の幼稚園入学を契機に、再び気分が落ち込み、子供がいじめられるのではと心配するようになった。毎日のように頭痛、めまい、動悸、寒気を夫に訴えるようになった。家事ができなくなり、1日中横になって過ごすことが増え、次第に「子供と一緒に死にたい」と話すようになった。 このため他院にて炭酸リチウムと併用してアモキサピン(三環系抗うつ薬)が再開された。 3週間程度で、活動性は改善し、外出できるようになったが、気分の落ち込みやイライラ感、死にたい気持ちなどのうつ症状は持続した。再び大量のブランド品を買い求めるようになり、金遣いが荒くなった。幼稚園で他児の母親から借金をしたり、幼稚園の男性教諭を理由なく食事に誘ったりすることがあった。
一方、家庭では、気分の落ち込みが持続し、家事は億劫でできず、一日中イライラして不機嫌で、夫が注意すると「もう死にたい」と薬を大量に飲んだり、リストカットをして、自殺を図ることがしばしばあった。軽躁症状がある一方、抑うつ気分やイライラ感、希死念慮などのうつ症状が強く、自殺企図を繰り返すため、当院紹介され入院した。一方、家庭では、気分の落ち込みが持続し、家事は億劫でできず、一日中イライラして不機嫌で、夫が注意すると「もう死にたい」と薬を大量に飲んだり、リストカットをして、自殺を図ることがしばしばあった。軽躁症状がある一方、抑うつ気分やイライラ感、希死念慮などのうつ症状が強く、自殺企図を繰り返すため、当院紹介され入院した。 初診時の印象 診察時は多弁だが、不機嫌でイライラした様子で、突然泣き出すなど情緒不安定。多弁、過活動、乱費、性的逸脱行動などの軽躁症状を認める一方で、抑うつ気分、不安、イライラ感、希死念慮などのうつ症状を伴っていた。
不快躁病(躁うつ混合状態)と診断し、アモキサピン(抗うつ薬)を中止し、バルプロ酸を追加した。2ヶ月で躁うつ混合状態は改善し退院。その後再発はない。不快躁病(躁うつ混合状態)と診断し、アモキサピン(抗うつ薬)を中止し、バルプロ酸を追加した。2ヶ月で躁うつ混合状態は改善し退院。その後再発はない。 アモキサピン 炭酸リチウム バルプロ酸 躁うつ病(不快躁病:躁うつ混合状態) 31歳 26歳 28歳 当院初診 アモキサピン
双極性障害 躁状態 抗うつ薬の投与中止 多幸性 混合性 *状態により定型抗精神病薬静注 *気分安定薬以外の無効薬剤は 早期に中止 *BZPを併用することがある *精神病の特徴を伴う場合は早期より 抗精神病薬併用 炭酸リチウムまたはバルプロ酸 バルプロ酸 非定型抗精神病薬追加 リチウム・バルプロ酸・カルバマゼピンのうち2剤併用 定型抗精神病薬の使用 非定型の変更 または リチウム・バルプロ酸・カルバマゼピンの3剤併用 ECT or 躁うつ病の躁状態の薬物治療の概要【武蔵病院】
症例7:Gさん(35歳男性、公務員) 家族歴:父親がうつ病で自殺 現病歴:大学卒業後、省庁勤務。25歳職場結婚し、1子をもうけた。中学校頃より、慢性的空虚感があり自信のない性格。 30歳時、職場の上司が代わり、叱られることが増えた。通勤中の電車で、職場への嫌悪感が募り、めまい、動悸が出現するようになった。イライラすると、リストカットを繰り返すようになった。上司に勧められ、近医精神科を初診。過食や自傷行為を認め、「パーソナリティ障害」と診断された。各種抗うつ薬服用し効果なかったが、31歳時、職場移動したことを契機に職場に行けるようになった。その後も新しい上司との関係の悪化や家族とのケンカの度に、周囲に見捨てられてしまう不安や空しさが強まり、情緒不安定となり、仕事を休むことが多かった。
空しさが強まり情緒不安定となると、「すっきりするから」とピアッシング、リストカット、大量服薬などの自傷行為を繰り返し、時にイライラして妻や子供に手をあげることがあった。 空しさが強まり情緒不安定となると、「すっきりするから」とピアッシング、リストカット、大量服薬などの自傷行為を繰り返し、時にイライラして妻や子供に手をあげることがあった。 仕事への不満が強く、休むことが多い一方で、友人と遊ぶのは楽しく、しばしば飲み会やパチンコに出かけ乱費した。職場の配慮で仕事量を軽減されると「職場にいらない人間」と、被害的となり、上司とケンカをし、その罪悪感から自傷行為を繰り返した。境界性パーソナリティ障害と診断され、各種の抗うつ薬や心理療法を試されたが改善なく、当院紹介受診した。 初診時の印象 茶髪でピアスを10箇所あけている。多弁で気分は高揚し、他責的で職場に対する不満を話しつづける。イライラした様子で、話が上司のことに及ぶと突然泣き出すなど情緒不安定。慢性的な自信低下、空虚感と希死念慮、見捨てられ不安、自傷行為、過食を認めた。
バルプロ酸 境界性パーソナリティ障害と診断基準を満たし、経過観察していたが、経過を良く観察すると、症状が病相性に出現していた。 双極性障害(躁うつ混合状態;非定型)に診断を変更。 抗うつ薬を中止し、バルプロ酸開始したところ、上記のすべての症状は消失し職場適応や自傷行為も改善し、再発はない。 パーソナリティ障害と紛らわしいケースがある 自信低下、空虚感の増悪、見捨てられ不安、過食、過眠、 抑うつ気分、イライラ、自傷行為及び多弁、過活動、他責性 30歳 35歳 当院初診 各種抗うつ薬や炭酸リチウム
急速交代型(ラピッドサイクラー) 躁病エピソード うつ病エピソード
症例5:Eさん(37歳女性 主婦) 家族歴: 祖母が精神疾患で自殺(詳細不明) 父からの虐待歴あり。 現病歴: 高校卒業後、販売会社に勤務。22歳、結婚退職。 28歳時、うつ状態となり、以後他院精神科通院し、うつ病と診断され抗うつ薬を服用。 32歳時、軽躁病相が出現し、以後は、躁うつ病と診断され、抗うつ薬を中止され炭酸リチウムを服用していたが、リチウム十分量の使用にかかわらず、年に2~3回のうつ病相と軽躁病相の病相交代を繰り返していた。 33歳時より、炭酸リチウムにバルプロ酸の併用を開始され、病相交代は年に1~2回に減少した。
35歳時、夫の失業を機に重症うつ病エピソードが出現し、トフラニール(三環系抗うつ薬)が処方された。数週間で軽躁状態となり、トフラニールは中止された。35歳時、夫の失業を機に重症うつ病エピソードが出現し、トフラニール(三環系抗うつ薬)が処方された。数週間で軽躁状態となり、トフラニールは中止された。 以後うつ病相と軽躁病相との病相交代が急速になり、月に1回程度の病相交代が出現するようになった。 軽躁状態のときには、家事をこなし、旅行に出かけ、アルバイトを見つけ就職するが、1ヶ月たたずにうつ状態となり寝込んでしまい、仕事に行けなくなって退職することを繰り返すようになった。「頻回の病相交代を治したい」という本人の希望があり当院外来受診した。 初診時の印象 きっちり化粧をし、ブランド品で身だしなみを整えている。自分の病歴を多弁に楽しそうに話した。現在は、気分が良い状態で、家事をこなせており、アルバイトの面接も6件申し込んでいるという。自分でも軽躁状態と自覚していた。
【薬剤血中濃度】 炭酸リチウム1.0mmol/l、バルプロ酸90ug/lと十分量。 【甲状腺機能】 甲状腺ホルモンは正常だが、TSH10.5uIU/mlと炭酸リチウムによると考えられる潜在的な甲状腺機能低下あり。 年間14回の病相交代を繰り返しており、躁うつ病(双極II型障害)急速交代型の軽躁状態と診断した。 初診時、躁うつ病の治療教育を行い、治療戦略について本人と話しあった。 まず甲状腺機能低下が病相急速交代に関与している可能性を考え、甲状腺機能正常化を目的に炭酸リチウムを中止し、バルプロ酸単剤とした。
リチウム中止にて甲状腺機能は正常化したが、病相交代に変化ないため、カルバマゼピンを追加したところ、うつ病相・躁病相の程度は軽減した。リチウム中止にて甲状腺機能は正常化したが、病相交代に変化ないため、カルバマゼピンを追加したところ、うつ病相・躁病相の程度は軽減した。 クロナゼパム追加は効果がなく、甲状腺ホルモンを併用した。 クロナゼパム 甲状腺ホルモン バルプロ酸 カルバマゼピン 躁うつ病(急速交代型;ラピッドサイクラー) 32歳 28歳 35歳 37歳 当院初診 トフラニール 炭酸リチウム
ラピッドサイクラー(Li+抗うつ薬服用中) 抗うつ薬の投与中止 炭酸リチウムの十分な増量 非反応・甲状腺機能異常 部分反応 バルプロ酸単剤 炭酸リチウムとバルプロ酸併用 バルプロ酸とカルバマゼピン併用 炭酸リチウムとカルバマゼピン併用 *ラモトリジンが発売された らLi/VPAとともに第1選択 *精神病の特徴を伴う場合 は早期より抗精神病薬併用 クロナゼパムの併用 非定型抗精神病薬の併用 炭酸リチウム・バルプロ酸・カルバマゼピンの3剤併用 甲状腺ホルモンの併用 ECT ラピッドサイクラーの躁状態の薬物治療の概要【武蔵病院】
とりあえずここまで☆ 御静聴ありがとうございました。 躁うつ病の薬物療法以外の治療法
修正型電気けいれん療法 電気けいれん療法室 精神科医 麻酔科医 看護師
脳波電極と刺激電極シール の装着 短時間作用型の静脈麻酔と筋弛緩薬 呼吸・循環モニター とその管理