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統合的流域水資源管理における合意形成システムの構築についての検討 国際航業 ( 株 ) 海外事業部 田島正廣 (mt32972@kkc.co.jp) - Patos-Mirim Lake Basin, Brazil -. Feb10,2005. Outline of Patos Lake Surface area : 10,150km 2 (About 15times the size of Lake Biwa) Length : 250km Width : 40km Depth : 5.4m Basin area : 150,000km 2
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統合的流域水資源管理における合意形成システムの構築についての検討統合的流域水資源管理における合意形成システムの構築についての検討 国際航業(株)海外事業部 田島正廣(mt32972@kkc.co.jp) - Patos-Mirim Lake Basin, Brazil - Feb10,2005 Outline of Patos Lake Surface area : 10,150km2 (About 15times the size of Lake Biwa) Length : 250km Width : 40km Depth : 5.4m Basin area : 150,000km2 Basin population : 6,000,000 1.日本の流域水資源管理の課題 2.海外の流域管理システム 3.これからの流域管理の合意形成システム
1. わが国の水資源管理問題 渇水時の水利用の現状 • 利根川水系では、2003年現在、都市用水の約1/4(約36m3/s)が暫定豊水水利権。安定水利権は約125m3/s (出典:国交省(H15),水マネージメント懇談会提言。 • 東京都の上水の水系別依存度は平成8年現在の東京都水道水量は602万m3/日=69.7m3/s(利根川77%(464万m3/日=53.7m3/s),多摩川19%(116万m3/日=13.4m3/s), その他4%(22万m3/日=2.5m3/s) (出典:東京都水道局(H8):安心を未来につなぐ東京水道) • 首都圏の既往最大の1995(H7)年の渇水では、実際の取水制限日数55日(7/15~9/8)について15m3/sの補給水があれば取水制限は不要としている。 (出典:荒井治(1998):水利用高度システムに関する研究(東京大学博士論文)
わが国の水資源管理問題 • 現在の日本全体の下水の総再利用水量(H13年度)は約1.9億m3/yr(6.02m3/s)、 (出典:国土交通省土地・水資源局水資源部編(H16):平成16年版日本の水資源) • 首都圏の水田面積の減少により余剰水の発生(見沼代用水、葛西用水等) • 因みに、利根大堰地点の取水量は、120m3/s(灌漑用水:77m3/s(64%),都市用水:43m3/s) (出典:利根大堰ホームページ) • K農業用水では、計画当初の灌漑面積5,400ha(18.4m3/s)で都市化により面積が減少し半分になった現在でも同量の取水が行なわれている。 • 発電用水(木曽川水系)については、ブラックボックスで実態は不明。
日本の統合的流域水資源の課題に対する方策 合理的かつ効率的な水利用の実現 • 我田引水の水利用実態の見直し(水利用の調整)、利害関係者(水利用者、住民、関係機関等)が話し合い合意のもとで合理的かつ効率的水利用の実現する • ➝水利用の合意形成システムの構築 課題1.渇水時の水利調整システム 課題2.流域住民の参加による合意形成システム Goal:利害関係者が参加し、全流域方式+生態系方式を考慮に入れた統合的流域水資源管理システムの構築
日本の流域管理の取組み • 1997(H9)年に河川法改正:通称「流域委員会」等による関係住民の意見聴取が新たな制度として創設 • 河川整備計画案の作成にあたって、「国は、必要があると認めるときは、公聴会の開催等関係住民の意見を反映させるため必要な措置を講じなければならない」(16条の2の4項) • 現在の河川法の中に流域委員会という用語は無い。流域委員会とは、住民の意見を効率的効果的に聴取するために設置された会議の名称
国土交通省主導の意見聴取の仕組み 1.意見聴取の仕組み • 通称「流域委員会」:全国に34(2004年7月現在) • 渇水調整協議会(河川法53条):26(2004年7月現在) • 流域水利用協議会:42 (2004年7月現在) 2.問題点 • 実際に河川水を使用する農業用水利用者、漁民等はこれらの会議への参加は許されていないか、許されても非常にわずかである。
1.2.日本の流域委員会の問題点1.2.1淀川水系流域委員会1.2.日本の流域委員会の問題点1.2.1淀川水系流域委員会
淀川水系流域委員会の構成図 委員52名(学識経験者:37名、 地域の特性に詳しい委員:15名(その内流域住民1名、漁民1名) また、農業用水利用者は含まれていない
1.2.2日本の民間主導の流域管理の問題点-矢作川流域(愛知県)を事例にして1.2.2日本の民間主導の流域管理の問題点-矢作川流域(愛知県)を事例にして Yahagi River Basin
矢作川沿岸水質保全対策協議会(矢水協)の概要矢作川沿岸水質保全対策協議会(矢水協)の概要 • 組織:農業団体4、漁業団体19、市町村28、県1、合計52団体、事務局(明治用水土地改良区) • 活動:①調査及び監視パトロール②開発行為及び排水放流協議③啓蒙活動④組織運営 • 行動目標①事業所などの排水基準の順守 ②大規模開発行為の適否の検討「矢作川方式」 • 1980年、愛知県は矢水協の河川浄化運動の実績を考慮し、流域内の大規模開発行為の申請に対し、矢水協の同意が無い場合は申請に対し許可を保留(開発計画の適否について矢水協に「協議」をすることにした)
① 事業所の排水指導矢作川流域における主な排水指導基準値(1980)① 事業所の排水指導矢作川流域における主な排水指導基準値(1980) 出典: 内藤連三編著 「水は生きている」 風媒社(1988)
② 開発行為の指導・調整 • 矢水協は、面積3000m2以上の土地利用転換を伴う開発行為について届け出を請求する • また、面積20ha以上の大規模開発行為の開発申請に当たっては県及び市町村の審査の協議に応じ、開発行為における計画と施工をチェックする • 県は開発行為の申請を受理し、矢水協の協議が済むまで許可を保留する。
矢水協の支援団体 出典:内藤連三編著「水は生きている」風媒社1988
日本の合理的流域管理システム(ローカルガバナンス)の成立条件日本の合理的流域管理システム(ローカルガバナンス)の成立条件 • 民間主導(矢水協)及び行政(国交省)主導の協議会方式の流域協議会は、法制度に裏打ちされたものではなぃ(一時的で継続性に欠ける) • 法的な裏づけが無く合理性に欠ける • 民間主導の○○協議会は、ほとんど、一部の少数のリーダーにより主導されている • 適切な組織(組織論)及び必要な権限の確保 • 特に、必要な権限の確保のために流域管理の合意形成システムを位置づける法制度の制定が必要
Gisele Bundchen (RS, Brazil) 2. これからの流域水資源管理の合意形成のあり方・協議会方式から法制度に裏打ちされた委員会方式へ・アメリカは協議会方式、フランス・ブラジル等は委員会方式 Gremio
2.1ブラジルの流域管理委員会Rio Grande do Sul州(Brazil)は流域管理委員会の設置を含めた水法を1994年に制定
RS州の流域管理委員会の機能(水資源管理に関する政策決定機関)RS州の流域管理委員会の機能(水資源管理に関する政策決定機関) • 水域区分 • 水資源の開発・保全に関するマスタープラン • 工事 • 利用規制 • 生態系の優先順位 • 浚渫の必要性 • 料金徴収制度の導入等 (住民参加のもとに協議・決定)
RS州の流域管理委員会の構成例(Sinos River Basin Management Committee) 水利用者代表:40% 住民代表:40% 政府機関代表者:20%
R.S州の流域分割図(22流域) パトス湖流域
流域管理委員会の設立状況(2000年12月現在) 既に委員会が設立されている流域 RS州は22の流域に分割されている
2.2 フランスの流域委員会フランスの6河川流域区分図2.2 フランスの流域委員会フランスの6河川流域区分図 Artois-Picardie
SADE(地方水委員会) • 地方水委員数の割合は水法の第5条によって定められている。 • 委員は下記の団体によって構成されている。なお、代表者の数は、20人から50人である。 • 市町村の代表者:構成割合50%、委員長は、この団体から選出されなければならない。 • 利用者の代表者:25%、下記の組織から代表者によって構成されている。経済的利用者:産業、農業、商業用の漁業、水の消費者団体、環境保護団体、漁業組合 • 国と国立機関の代表者:25%、「知事」(国の代表者)、地域の行政機関:環境、農業、「施設」、社会及び衛生活動、若者とスポーツ等、水管理庁、フランス電力公社、漁業委員会。
2.3 アメリカ合衆国の流域組合アメリカEPAの支援の流域保全地域:チェサピーク湾、エバーグレーズ湿地、五大湖、サンフランシスコ湾デルタ、北西部森林等
アメリカ合衆国の流域保全活動 • EPA(1998):Clean Action Plan, Restoring and Protecting American’s Water • 流域組合の構成:組合の構成員は、流域によって異なるが、住宅所有者、農家、牧場主、漁師、地域社会の長、市民団体や環境保護団体のメンバー、上下水道の管理者、企業や政府の代表者、その他の流域住民などである 。
州レベルの流域管理 • カリフォルニア州:ステークフォルダー間の合意形成➝双方勝利(Win-win) • フロリダ州(南フロリダ水管理局):ガバニング・ボード(統治委員会)、完全公開と住民参加 • ワシントン州:流域調整会議(Watershed Coordinating Council,1994-95,暫定的)
おわりに • フランス等では、流域委員会が法制度化され、利害関係者の役割と権限が付与されている。 • 日本の民間主導の流域管理の成功例は法制度に裏打ちされたものではない。 • 今後は、フランスのように流域の統合的水資源管理において住民参加、水利用者及び関係者による合意形成システムの構築が課題となる(利害関係者が合意のもとで水利用を考える)。 • これからは、法制度的に保証された流域管理システムに住民参加、水利用者の拡大と利害関係者の直接的参加を進める必要がある(農業土木学会誌 2005年3月号参照)。
緑のダムは有効か(私見) • 確かに中小の洪水には有効。 • 大洪水or渇水には有効か? • 水資源問題の本質は、流域での水利調整。 • 流域水資源管理システムをつくり、既存の水利用実態を洗い出し、利害関係者の合意を得ながら合理的かつ効率的な水利用を実現する必要がある(水利用の大半を占める農業用水を如何に巻き込むか、が課題である)。 • 第三機関が、水査察をすべき。このことは、国際河川の水資源管理(量・質)にも有効(国連の役割)。 • 早急に、国内外で住民及び水利用者が参加する流域委員会の法制度を整備すべきである。