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インクルージョン時代の 障害理解と生涯発達支援 6 章 自閉症スペクトラムの理解と生涯発達支援 担当:藤田( 1 、 3 節) 木下( 2 、 4 節 ). 第 1 節 生理・心理の視点から. 自閉症 スペクトラムとは 自閉症 を代表とする社会性の発達 障害= 広汎性 発達障害 1979 年 イギリスのローナ・ウィング 広汎性 発達障害の人には程度や様相の違いはあっても、 「社会的な相互作用の質的な障害」 「コミュニケーションの質的な障害」 「想像力の障害」
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インクルージョン時代の 障害理解と生涯発達支援 6章 自閉症スペクトラムの理解と生涯発達支援 担当:藤田(1、3節) 木下(2、4節)
第1節 生理・心理の視点から 自閉症スペクトラムとは 自閉症を代表とする社会性の発達障害=広汎性発達障害 1979年 イギリスのローナ・ウィング 広汎性発達障害の人には程度や様相の違いはあっても、 「社会的な相互作用の質的な障害」 「コミュニケーションの質的な障害」 「想像力の障害」 は、共通した特徴であり、下位カテゴリーには連続性があることから、個別の疾患ではなく、「自閉症スペクトラム」と表現 自閉性障害、レット障害、小児期崩壊性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症) 三つ組
DSM-5の改訂で レット障害以外を自閉症スペクトラムにした 広がりすぎた広汎性発達障害の幅を狭める DSM-Ⅳを使って診断を行うと… 非定型自閉症の割合が最も高い 非定型が多い=診断基準そのものが問題 もともとの動機は
レオ・カナー(アメリカの小児科医) 「早期幼児自閉症」(1943) 11人の特異な症状を示す子どもの報告 自閉性、強迫性、常同性、反響言語に共通点がある 統合失調症の基本的症状と何らかの関係があると考えた 言語の遅れ、多動、対人関係問題など、見てわかりやすい 1.1 自閉症の基礎知識 ハンス・アスペルガー(オーストリアの小児科医) 「自閉性精神病質」(1944)=アスペルガー症候群 言語発達良好だが、対人関係に重篤な問題を示す4人の男児の報告で、性格上の偏奇と捉えた 言語発達良好、知能検査は平均か平均以上を示すことがあるなど、早期に問題としてとらえられず、人間関係の問題は「経験の乏しさ」と判断されていた
知的障害 自閉症 強い 生後5年以内にはっきりとした診断が可能 高機能自閉症と自閉症の判断は知的障害の有無 知的障害を伴う自閉症と伴わない自閉症 ・言葉が全くでない ・言葉の遅れがある ・IQ70以下 アスペルガー症候群 ・IQが高い子もいる ・言葉の遅れはない ・空気が読めない、こだわりが強い 高機能自閉症 ・言葉の遅れは目立たないこともある ・IQ70以上 ・コミュニケーション能力に問題があるた め対人関係に障害をきたす ・こだわりが強い 弱い
自閉症のタイプ (園山繁樹) Aタイプ 知的機能のレベルが高く、少なくとも知的障害を伴わず、自閉性はあっても強くない。対人関係の取り方から、一風変わった人と見られることが少なくない。 Bタイプ 知的機能のレベルは高いが、自閉性も強い。十分な支援や援助がないと社会生活でつまずいたり、挫折を経験することも少なくない。 Cタイプ 知的障害を伴うが、自閉性は強くない。知的障害の子と同じ教育や福祉の待遇を受けることが少なくない。 Dタイプ 知的障害を伴い、自閉性も強い。知的障害の子ども向けの教育を受けることが多いため、自閉性障害の特性に合致せず、不十分なサービスしか受けれないことも少なくない。
「社会的な相互作用の質的な障害」を軸にした分類(ウィング)「社会的な相互作用の質的な障害」を軸にした分類(ウィング) ①孤立群 自分の要求を満たすようなとき以外はほとんど他者との関わりが見られないタイプ。 ②受動群 必要なとき以外には他者と関わろうとしないが、他者からの関わりを否定することは少なく、一緒に楽しむことができることも多い。 ③積極・奇異群 他者に自分の方から積極的に関わろうとするが、相手の気持ちに配慮せずに、関わり方は一方的になることが多い。 ④形式ばった大仰な群 青年期後期から成人期以降に見られるパターンで、知的機能が高く、言語能力の高い人に見られやすい。
1.2 自閉症の特性理解 刺激の過剰選択性 環境の中にあるものを見分けるときに限定された部分だけに反応すること 例)リンゴの絵が描いてあるカードの傷や折り目に反応する ロバースの実験 視覚・聴覚・触覚の3要素で構成された複合刺激を提示。その刺激が提示された場合レバーを押すという訓練を行う。 要素刺激を独立に提示すると 健常児、知的障害児:いずれの刺激でもレバーを押した 自閉症児:特定の刺激のみにレバーを押した
実行機能 活動をプランし、衝動性を抑制し、遂行過程をモニターする能力 ウィスコンシンカード分類テスト(WCST) 四つの形(三角、星、十字、丸) 四つの色(赤、緑、黄、青) 1~4個の図形が印刷されている カードを「色」「形」「数」のどれかで分類させる。 被験者は正答と誤答を重ねていき、分類基準を推測する。予告なしで分類基準を変更する。 例)最初は「色」で分類していたが、「数」に変更 このテストから 柔軟性のなさ、注意配分の障害、反応抑制の障害、 転導性による記憶の障害、記憶を利用した適切な段取りができない
心の理論 他者の心を読む、他者の心の状態を推測する心的機能 プレマックとウッドラフの実験(1978)から始まった →チンパンジーに対しての実験 自閉症児に対して、様々な課題を行っている 「サリーとアンの課題」 「奇妙な物語テスト」 嘘・隠喩・皮肉や冗談の理解が難しい 「4コマ漫画のテスト」 心理的ストーリーが苦手 ほかにも、「スマーティー課題」「二次の誤信念課題」などがある
第2節 保育・早期発見の視点から2.1 早期発見と早期支援のシステム第2節 保育・早期発見の視点から2.1 早期発見と早期支援のシステム • 2歳までに3/4,3歳までにはほとんどの親が子どもの発達の異常に気付いている。(三隅ら) →心配していても、自ら療育機関を訪れるケースは少ない。 ・1歳半検診、3歳児検診の果たす役割は大きい ・家族の抱える困難・ニーズを把握したうえでの援助が求められる。
2.2 自閉症幼児の療育・保育専門機関における発達支援2.2 自閉症幼児の療育・保育専門機関における発達支援 • 療育 • ニューヨーク州健康局 3歳までの自閉症および広汎性発達障害に対するアセスメントと介入におけるガイドライン(支援プログラムの条件 1-6)
≪自閉症スペクトラム児の早期療育に対して求められるもの≫≪自閉症スペクトラム児の早期療育に対して求められるもの≫ • 子どもの発達的変化や行動の変容を促すこと • 家族や保育士に子どもの変容過程を伝え、日常生活における子育てや保育にその効果を反映させるための援助を提供すること
2.3 幼稚園・保育所における自閉症幼児保育 • 保育効果(障害のある幼児が健常の幼児と一緒に保育される場合) : ①ことばの発達 ②友達関係 ③日常生活習慣・スキルの向上 ④社会性の発達 →単に豊富な刺激や活動が用意された保育環境に置かれるだけでは、難しい。
《自閉症スペクトラム児の場合…》 ・ルーチンワークは身につけやすい。 ・先生の声かけや他児の様子を見て自然に身につけることは難しい。 →そのための工夫 ①活動と活動場所は一対一で設定 ②活動の手順は一定に定めて提示 ③細かいステップに分けて、つまずきを見極め ④声かけ、身振り手振り・絵カード、手添え →*重要:「できた」経験を積み重ねる。
2.4 家庭での支援 • 生きていくうえで必要な生活スキル(睡眠・好き嫌い・排泄・着替え・意思を伝える) →家庭で親が働きかけるのは重要。 ⇒いずれの課題も自閉症スペクトラム児には苦手である場合が多い。 ⇒知覚の過敏性が関係。 スモールステップから教える。声かけや提示方法の工夫。できたらほめて自信をつける。
第3節 教育の視点から 3.3 自閉症スペクトラム児の就学と教育形態 自閉症スペクトラム児の就学は知的障害の程度により決定される場合が多い。 ・重度から中度の知的障害を伴う場合:特別支援学校 ・中度から経度の知的障害を伴う場合:特別支援学級または通 級指導教室、通常学級 つまり、 自閉症児の障害特性に応じた教育ではなく、知的障害教育または、情緒障害教育の考え方で学習が進められる 問題
3.2 教育課程の編成、自立活動 現在、自閉症スペクトラムに特化した教育課程を編成している学校は少ない 知的障害の教育課程のもとで、 各教科等の指導・支援における自閉症の障害特性の配慮を図る 自立活動の時間の指導を組み合わせることで支援・指導を進める といった工夫をしている 各学校で自閉症スペクトラムの障害特性に応じた教育課程の研究・検討が行われている
平成21年度 徳島県 《自閉症を併せ持つ児童と知的障害のみの児童に対する自立活動の内容に関する調査》 「人間関係の形成」「コミュニケーション」 → 自閉症児は知的障害児の約3倍 指導項目では 「コミュニケーション」の「言語の受容と表出に関すること」が極端に多い 「人間関係の形成」の「他者とのかかわりの基礎に関すること」が多い 「身体の動き」の「作業に必要な動作と円滑な遂行に関すること」は知的障害児、自閉症児ともに多い
学習指導要領の改訂 他者との基礎的なかかわり、他者の意図や感情の理解、自己理解、行動調整、集団参加、感覚や認知の特性 などへの対応に関する事柄を自立活動に付加 5区分21項目→6区分26項目に改訂 教育課程の違い=指導内容や指導時間の違い 各教科や自立活動の内容の取扱いが異なる 自閉症スペクトラム児の特性に応じた教育課程を編成し、指導内容の分析をすることが求められる つまり
3.3支援方法 コミュニケーションの支援 機会利用型指導法他者とのコミュニケーションスキルの発達に有効 子どもの1日の生活の中の様々な場面をコミュニケーション指導の機会として利用する方法 キューズ・ポーズ・ポイント法 即時性のエコラリアをする子どもの場合、あらかじめ「教えてください」と紙に書いておき、エコラリアで答えたら手がかりを示して、子どもが静かになってから紙を指さしして読ませる方法 *即時性エコラリア:他者の質問の一部を繰り返す言語行動 コミュニケーション手段の活用 サイン、図形シンボル、コミュニケーションブックやコミュニケーションボード、電子機器、PECS など
社会性の支援 相手の表情やしぐさ、その場の雰囲気といった微弱で複雑な文脈を弁別し。社会的行動を使い分ける指導が重要 ソーシャルスキルトレーニングやソーシャルストーリーを取り入れて適切な行動を促進させることも有効 行動問題の支援 自己刺激行動やこだわり行動のメカニズムは不明 自閉症スペクトラム児は感覚過敏の子が多く、感覚を避けたり、感覚を求めて行動が起きる可能性が高い 何に対して、いつ、どのようにそうした行動が起こるのか、おこらない場面はどういうときかを探り、環境の見直しが重要
第4節 移行支援・福祉の視点から4.1 高等部卒業後の進路実態と進路指導第4節 移行支援・福祉の視点から4.1 高等部卒業後の進路実態と進路指導 • 自閉症生徒の進路実態 :特別支援学校(知的障害)高等部卒業生のうち20~30パーセントは自閉症を併せており、一般企業への就労も増えつつある。 ・企業就労以外の進路先 就労支援事業:就労移行支援、就労継続支援(A・B型)
≪進路先決定≫ ・「進路学習・現場実習・進路相談」 ・「自分を知り、社会を知る」→「主体形成」 ・地域生活への移行 *児童期から ・自分の特性理解 ・周囲とのトラブルの解決方法を学ぶ →成人期にスムーズな地域移行
4.2 継続教育・高等教育と支援体制 • 特別支援学校・専攻科 →国立・私立のごく一部。公立にはない。 ・自閉症生徒…地域社会の継続教育資源 ・高機能自閉症…大学、専門学校に進学 →「対人関係のトラブル」「学業上の問題」「不適切な行動」などの問題 ⇒発達障害への理解
4.3 就労と支援体制 ≪自閉症者の仕事中における問題-梅永1990≫
自閉症者の就労・継続 *障害特性に応じた就労に向けた支援 →「ジョブマッチング」;個人のもつ興味や長所をいかせる仕事を結びつけていく。 * 就労先での障害特性理解 →ジョブコーチ(職場適応援助者);障害者が職場に適応できるよう、出向いて直接支援を行い、事業主に対しては障害特性を伝え、対応方法や必要な助言を行う。
4.4 地域生活と支援体制 • 1993年 強度行動障害特別処遇事業 • 2002年 自閉症・発達障害者支援センター事業 • 2005年 発達障害者支援法 施行 • 2005年 「行動援護」 導入 自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援、外出支援を行う。
《参考文献》 ・高橋智(2014):インクルージョン時代の障害理解と生涯発達 支援,日本文化科学社 ・大南英明・石塚謙二(2011):一人一人の教育的ニーズに応じ た特色ある実践ー知的障害ー,教育出版 ・佐々木正美・梅永雄二(2011):完全図解アスペルガー症候群, 講談社 ・田中康雄・木村順(2013):これでわかる 自閉症とアスペル ガー症候群,成美堂出版 ・小林重雄・園山繁樹・野口幸弘(2003):自閉性障害の理解と 援助,コレール社 ・森則夫・杉山登志郎・岩田泰秀(2014):臨床家のためのDSM- 5虎の巻,日本評論社 ・太田俊己・宮崎英憲(2010):知的障害教育総論,財団法人 放送大学教育振興会 ・中村忠雄・須田正信(2013):はじめての特別支援教育ーこれ だけは知っておきたい基礎知識ー,明治図書
参考文献(2,4章) • 全国社会福祉協議会・障害者自立支援法のサービス利用説明パンフレット(平成24年4月改訂版)