E N D
日中拠点大学交流事業 中国との交流は1970年代から、中国科学院高能物理研究所(IHEP)時代から始まり、80年代にはIHEPのBEPC加速器(北京電子陽電子衝突型加速器)への日本側からの建設協力と、KEKのトリスタンを用いた実験であるAMYへの中国からの参加によって、両機関の交流は飛躍的に進展した。1994年には、両研究所間で学術交流協定が締結され、毎年1回のコラボレーション・ミーティングを開催し、両研究所における共同研究活動の報告並びに今後の進め方等について検討を行っている。この協定に基づき、KEKはKEKBのために920台の補正2極電磁石を製作した。また、IHEPのBEPCを用いた両研究機関の加速器に関する共同研究「光電子不安定性の実験的研究」は世界的に高く評価されている。こうして両研究機関間で恒常的な研究者交流が活発に行われている。一方、放射光科学分野における交流として、上海国立放射光研究センター(SSRC)とも学術交流協定を締結し、同分野における国際協力を強引に推進してきた。 これらの学術交流をさらに推進するために平成12年度から日本学術振興会で実施している拠点大学交流事業を活用し、日本側拠点をKEK、中国側拠点をIHEPとして、これまで以上の活発な国際協力事業を展開しているところである。 BEPC加速器 BEPC加速器の中央制御室
日中拠点大学交流事業 開始年度 平成12年度 事業実施期間 平成12年度~平成21年度 交流分野 加速器/電子加速器による高エネルギー物理学と放射光科学の研究 交流実施形態 研究者交流(日中相互の拠点大学、協力大学における共同研究)、セミナーの開催 研究実施組織 日本側 拠点大学:KEK、協力大学:東京大学、京都大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、他10機関 中国側 拠点大学:IHEP、協力大学:北京大学、清華大学、中国科学技術大学、他7機関 共同研究課題 ・BEPCの高度化、BEPC-Ⅱの設計とR&D、KEKBの高度化、BEPCにおける物理実験、KEKBにおける物理実験 ・GLC建設のための加速器に関する共同開発、GLCにおける物理と測定器 ・NSRL(中国科学技術大学の放射光リング)の加速器本体、ビームライン及び測定器の高度化 ・SSRFのR&Dと性能確保、将来の有望な放射光源であるFEL(自由電子レーザー)のR&D・加速器制御用ソフトウェアEPICSの共同開発 期待される効果 ・中国の加速器科学の発展に対する貢献 ・BEPCⅡとSSRFを舞台とした日中間の共同利用の推進 ・KEKBを始めとした日本の加速器の性能向上 ・日本の最重要将来計画であるGLCの実現に必須であるアジア地域の国際協力体制の確立 Ring Arc Sections of Storage
日中拠点大学交流事業 -これまでの活動の総括日中拠点大学交流事業 -これまでの活動の総括 平成12年度からはじまった、日本の高エネルギー加速器研究機構(KEK)と中国の高能物理研究所(IHEP)を拠点大学とする交流事業は、電子加速器そのものおよび電子加速器を利用する研究に関する交流事業である。 電子加速器を用いた研究は、物質の究極の構成要素と構成要素間に働く力を研究する学問である素粒子物理学から、円形型電子加速器から発生する放射光と呼ばれる光を用いて、物質を原子や分子のレベルで研究する放射光科学まで多岐にわたる。なお、前者の素粒子物理学の研究においては、高いエネルギーまで加速された電子とその反粒子である陽電子を正面衝突させる電子陽電子衝突型加速器が用いられる。 研究テーマは、(1)電子加速器に関する研究、(2)素粒子物理学に関する研究、そして(3)放射光科学に関する研究からなる。 研究は順調に進行中であり、多くの成果を挙げた。以下に主な成果を示す。 (1)電子加速器に関する研究 KEKのBファクトリーKEKB加速器は、2003年5月に人類未到のルミノシティ(衝突加速器の性能)10の34乗を達成した。KEKBの運転と性能向上には、多くの中国人研究者が参加した。 電子加速器における重要問題である電子雲不安定性の研究が日中共同で継続的に行われ、電子雲不安定性が陽電子を蓄積する円形加速器において非常に発生しやすい現象であることを高能物理研究所BEPC加速器(1リング型電子陽電子衝突型加速器)を使って確認し、弱い磁場をビームと平行にかけること(ソレノイド磁場) により、電子雲不安定性を有効に抑制できることを示す、という大きな成果を上げた。 2003年からは高能物理研究所において、BEPCを2リング型の電子陽電子衝突型加速器タウチャーム・ファクトリーBEPC-IIに増強する計画が始まっており、超伝導加速空洞の開発をはじめとする種々の共同研究が進行中である。また、KEKのATF (Accelerator Test Facility)では世界最小のエミッタンス(ビーム収束)を達成した。 (2)素粒子物理学に関する研究 2001年に、KEKのBファクトリーの測定器BELLEは、B中間子においてCP不変性が破れていることを明確に示すことに成功した。この発見は、素粒子物理学における近年の大発見である。この実験・研究に多くの中国人研究者を始めとするアジア人研究者が参加しており、特に中国の大学院学生が博士論文をまとめるべく参加している。この他、リニアコライダーの測定器開発及び理論的研究に関して研究交流が進められている。 (3)放射光科学に関する研究 中国の放射光加速器の研究者とKEKをはじめSPring8、広島大学放射光センター等の日本国内放射光施設研究者の間で活発な研究交流が行われてきた。また、中国政府から2004年初頭に建設開始が承認された第三世代放射光加速器である上海放射光計画が進んでいる。上海放射光加速器における測定器及びビームラインに関して日中共同研究が進行中であり、今後さらに活発な交流が続けられる。
平成12年度 平成12年度 平成13年度 平成13年度 平成14年度 平成14年度 平成15年度 29,990,000 6,404,366 17,430,334 5,988,013 167,287 平成15年度 29,990,000 6,404,366 17,430,334 5,988,013 予算額 予算額 25,000,000 3,116,500 16,641,396 4,785,705 456,339 25,000,000 3,116,500 16,641,396 4,785,705 456,339 29,200,000 29,200,000 31,295,000 31,295,000 研究者交流 研究者交流 2,739,840 18,955,564 7,182,866 321,730 2,739,840 18,955,564 7,182,866 321,730 2,443,730 20,958,301 7,483,403 409,566 2,443,730 20,958,301 7,483,403 409,566 共同研究 共同研究 セミナ- セミナ- その他 その他 平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 29,990,000 予算額 25,000,000 3,116,500 16,641,396 4,785,705 456,339 29,200,000 31,295,000 日中拠点大学交流実績額表 研究者交流 2,739,840 18,955,564 7,182,866 321,730 2,443,730 20,958,301 7,483,403 409,566 共同研究 セミナ- その他