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「まず医療人が医療制度の真実 を知らねば国民を守れない」 ー スムーズな病診連携のために ー 玖珂中央病院 吉岡春紀 岩国市内科医会例会 19 年 4 月 13 日. 第 1 章 国民医療費について知ろう 1. 日本の医療費の現状. 2. 老人医療費と一般医療費 老人医療費は 5 倍もかかっているのか. 3. 同じ医療を受けても診療所と病院で 外来医療費が違うのか。. 4. 医療費の使われ方 レセプト順位からみた医療費の分析 . 5. 生命の値段 超高額レセプトの検討. 日本の医療費 平成 16 年度 32 兆 1111 億円.
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「まず医療人が医療制度の真実 を知らねば国民を守れない」「まず医療人が医療制度の真実 を知らねば国民を守れない」 ースムーズな病診連携のためにー 玖珂中央病院 吉岡春紀 岩国市内科医会例会 19年4月13日
第1章 国民医療費について知ろう 1.日本の医療費の現状 2.老人医療費と一般医療費 老人医療費は5倍もかかっているのか 3.同じ医療を受けても診療所と病院で外来医療費が違うのか。 4.医療費の使われ方 レセプト順位からみた医療費の分析 5. 生命の値段 超高額レセプトの検討
日本の医療費 平成16年度32兆1111億円 一般診療医療費 24兆3627億円入院医療費 11兆8464億円 入院外医療費 12兆5163億円 歯科診療医費 2兆5377億円 薬局調剤医療費 4兆1935億円入院時食事医療費 9780億円 国民1人当たり年間医療費は25万1500円
国民医療費の構成割合 32兆円 医科の医療費は約3/4の24.4兆円
国民医療費の年次推移 国民所得の伸びと連動しているがこの数年は増加は頭打ち。 平成12年介護保険実施 厚労省調べ
国民医療費の年次推移 一般医療費と老人医療費 医療費が財政を圧迫するといわれながらこの数年一般・老人とも医療費の伸びは抑えられている
薬局調剤医療費・院外処方率の伸び 薬局調剤費は年々増加し4兆円を突破 院外処方率 16年に50%を突破
まだマスコミは薬漬けと言うが。 薬価差の推移1986年 23.6%2004年 6.3% 薬剤比率と薬剤費近年の薬剤費6.4兆円 厚生労働省:第17回社会保障審議会医療保険部会配付資料
老人医療費は一般医療費の5倍もかかっている老人医療費は一般医療費の5倍もかかっている 高齢者の医療費は高いというのは本当なのか
16年厚労省報告 一般・老人別国民一人当たり年間医療費は 老人一人当たり医療費は4.6倍となっている
しかし 外来・入院別の医療費を比べると 一件あたり医療費 一日あたり医療費 外来 入院 外来 入院 一般・老人の差はほとんど無いのです 16年度厚生省医療費動向調査より
一人当たり医療費とは総医療費を年代別の人口で割ったもの。一人当たり医療費とは総医療費を年代別の人口で割ったもの。 若年世代には健康な人が多く医療費は当然低いが、高齢者は多くの疾患をもち多くの医療機関にかかることが多いので、若年世代が低くなるのは当然。 老人医療費を削減するため、医療費増加の危機を煽る国の作為的な数字のトリック。 1件当たり・1日当たり医療費は一般・老人に差がないのです。 各個人として考えれば一生のうちで高齢期に医療費を多く使うだけのことで、全ての人に平等だと考えるべき。
同じ医療を受けても診療所と 病院では外来医療費が違う。同じ医療を受けても診療所と 病院では外来医療費が違う。 それも、一物ニ価どころか、外来の 診療費はバラバラ。 患者さんにどう説明できるのか。 外来診療報酬制度の不思議
例えば70代の中等症の糖尿病患者さん 毎月1回通院し、この時は診察と指導、 血糖検査・HbA1c検査・検尿検査をうけたとします。 (治療薬については今回は考慮せず) この患者さんの受診する医療機関で診察料は こんなに違います。どうしてなのか。 1日の外来診察費 200床以上の病院 糖尿病外来 専門医の診察 4440円 (研修医でもおなじ) 100~200床の病院外来 5980円 100床以下の病院外来 6580円 診療所(生活習慣病管理加算算定) 11730円 一般の診療所外来 7500円 医師の専門科は問わない 最大 2.6倍
診療所と病院の外来医療費糖尿病で再診の場合 投薬は省略 18年改定(改定前)診療所と病院の外来医療費糖尿病で再診の場合 投薬は省略 18年改定(改定前) ※院外・院内処方によって外来医療費は異なる
診療所と病院の外来医療費に差がある原因 再診料に71点と57点と差はあるが、それほ ど大きな差はない 原因は診療所では内科系の疾患には再診料に「特定疾患療養管理料」と言う上乗せがある。 高血圧や糖尿病、がん、脳卒中など、ありふ れた病気を広く対象として「計画的な療養上 の管理を行った場合」に、月2回を限度に請 求できると定められています。 診療所 225点 100床未満の病院 147点 200床未満の病院 87点 200床以上の病院 0点 加算できない
「特定疾患療養管理料」 なぜ大病院では算定できないのか。 原因は、はっきりしているわけではありませんが、病院と診療所の機能分担、特に大病院では入院に専念し再来の外来は診療所に誘導させる目的だと思います。しかし大学病院や総合病院での専門外来などでの専門的な指導を行ってもこれらの指導料が算定できない矛盾の説明ができませんし、病床数によって外来の指導料が違うなども説明できない項目の一つです。また病院の外来医療費を安くした事により、患者さんにとっては診療所より安い診察費となり、政策誘導も逆効果になっています。 また、特定疾患療養管理料の算定できる疾患は、主として内科系の慢性疾患であり、慢性疾患を診療する他科からも不公平だと思われています。 大病院の対抗策→外来分離が横行した。
生活習慣病指導管理料とは 対象は高脂血症,高血圧症又は糖尿病を主病とする患者治療計画を策定し,当該治療計画に基づき,服薬,運動,休養,栄養,喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な指導及び治療管理を行った場合に,200床未満の病院及び診療所で算定する。指導管理等、検査・投薬・注射の費用はすべて包括。 1ヶ月の医療費高脂血症 9001460 (院外処方)高血圧症 9501310 糖尿病 10501560 「生活習慣病指導管理料」は、大病院の専門外来で、専門医による治療・指導が行われた場合に算定できる包括化診療費であるべきです。
医療費の使われ方 レセプト順位からみた医療費の分析 平成10年6月分レセプト調査
レセプト順位と医療費 平成10年6月 厚生省発表の政管健保・国保・老人保健の資料 レセプト数4800万枚
外来・入院別レセプト枚数と医療費 レセプト枚数 医療費 平成10年6月 厚生省発表の政管健保・国保・老人保健の資料 レセプト数4800万枚
レセプト順位と請求額 上位1%未満のレセプト おおよそ月40万円 上位5% 月 5〜6万円台、 上位10%3〜4万円台、 上位20%25000円程度 上位5%のレセプトとは 月5-6万円の 予想外の低医療費であった。 上位0.1% (月100万円を超えるレセプト) は総医療費の約5%を消費している 外来平均診療費 1487点(14,870円) 入院平均診療費 32667点(326,670円)
1.上位20%で75%の医療費を使っている。 逆に言えば100人の患者さんのうち80人の大多数の患者さんたち(軽医療グループ) にかかる費用は、医療費総額のたった25%なのです。それも金額は月2万5千円以下ですから、外来で特別な検査や治療、投薬を受けていない人がほとんどでしょう。 開業医の外来患者さんの大多数が「軽医療グループ」と考えられますが、このグループに医療費の負担を増やして、受診を抑制しても25%の部分を少し削るだけで、医療費全体から見るとあまり削減効果はありません。
2、 上位5%で55%の医療費を使っている。 上位5%とは月の医療費は5-6万円。 このレベルですと、短期間の入院や、外来でも(特に 病院の)ちょっとした検査や手術をすれば時にありま す。これが上位5%なのです。 3、上位1%の患者さんに25%の医療費を使っ ている 上位1%の1ヶ月の診療費は、おおよそ月40万円です。 平均入院医療費より少し高い金額です。医療費の上位 1%というともっと高い金額かと思っていました。 上位1%はほとんどが入院患者のレセプトといえるで しょうが、上位1%レベルでは本当の「高額医療」と は言えません。
4、上位0.1%のレセプトで5%の医療費。 「高額医療」と言える月100万円を超えるレセプトは、総レセプト枚数の0.1%でした。この月100万円を超すグループの使用している医療費 は全体の約5.5%となります。 このグループは急性期医療、高度先進医療、延命医療などで、高齢化や医療の進歩に伴い、今後ふくらんでくる部分ではありますが、思ったほど大きい比率ではありません。 無駄な延命医療は削減すべきですが、急性期医療や高度医療に、今以上にもっと公的医療費をつぎ込むことが必要だと思います。 全体をみて日本の医療費は安いと言えます。
生命の値段 超高額レセプトの検討
1ヶ月のレセプト(保険請求) 最高額をご存じですか1ヶ月のレセプト(保険請求) 最高額をご存じですか なんと1ヶ月 4,007万円です 病名 血友病Aこの患者さんのこれまでの 総医療費 5億1362万円
年度別月額1000万円以上の 高額レセプト件数年度別月額1000万円以上の 高額レセプト件数
平成16年度 高額レセプト ベスト10 血友病5例と拡張型心筋症2例が目につきます死亡3例・治療継続中7例
16年度高額レセプト疾患別分類 89件 血液疾患 血友病 19 白血病 8 循環器疾患DCM 7 大動脈解離 12 狭心症 3 弁膜症 4 先天性他 7 悪性腫瘍 腎がん・肺癌など
血友病と拡張型心筋症の医療費内訳 血友病の治療費の97%は注射・薬剤費拡張型心筋症では70%は手術費
最高高額レセプトの 血友病Aの患者の月額医療費の推移 1000万円を超過した月分最高高額レセプトの 血友病Aの患者の月額医療費の推移 1000万円を超過した月分 1億4754万円 治療継続月 113ヶ月 総治療費は なんと5億1362万7350円 ほぼ全額公費負担
第2章日本の病院の現状について 地域医療計画を無視した病床・施設削減が進められています 1.一般病棟と療養病床 2.日本の病床数 3.急性期病院では老人はなぜ3ヶ月しか入院で きないのでしょうか。 老人特定入院基本料・特定患者とは 平均在院日数について
「一般病床」と「療養病床」 平成13年3月第4次医療法改正 ○病床区分の定義 結核病床、精神病床、感染症病床を除いた病床(従来の「その他の病床」)を「療養病床」 及び「一般病床」に区分しました。 1.一般病床とは 精神病床、感染症病床、結核病床及び療養 病床以外の病床 2.療養病床とは 主として長期にわたり療養を必要とする患 者を入院させるための病床 平成5年の療養型病床群より改変
一般病院・療養病床施設基準 100床あたりの基準 (既存病床) 病室の一人当たりの面積と、廊下幅の規程があり多くの療養病床は全面改築・新築をおこなった
日本の病床数 平成18年7月現在 病院の病床数 163万床 一般病床 91万床 精神病床 35万床 療養型病床群 35万床 結核・感染症 1.3万床 診療所 16万床 平均利用率 85%程度 厚労省 医療施設動態調査
病床数の年度別推移 12年より一般病床と療養病床に分けられた総病床数は160万床前後で増減変わりなし
急性期病院では老人はなぜ3ヶ月しか入院できないと言われるのでしょうか。急性期病院では老人はなぜ3ヶ月しか入院できないと言われるのでしょうか。
一般病院の入院日数と入院基本料 老人特定入院基本料 経営上・一般病棟の入院料が90日で打ち切り病院の格・平均在院日数の確保 90日を超えると 1日包括928点
まず、「老人特定入院基本料」 一般病棟に入院している高齢者(*一部の特定患者を除く)は入院90日(ほぼ3ヶ月)を超えると、「老人特定入院基本料」という料金体制が適応され、「1日928点=9300円程度」と言う一般病院の点数とすればびっくりするような低い点数になっている。しかも、これは包括化された点数で検査・投薬・注射・処置を全て包括しているのです。 これでは、1ヶ月約28-29万円の入院医療費で、療養病床の入院費(月およそ34-36万)はもとより、介護保険制度の介護福祉施設(入所費月27-29万)とほぼ同額で、介護保健施設(入所費・月およそ30-32万)よりも安い設定なのです。一般病院は経営のため3ヶ月以上継続入院させられないのです。
一般病棟90日超老人特定患者から除外される対象者の概要一般病棟90日超老人特定患者から除外される対象者の概要 (1)難病患者 (2)重症者等療養環境特別加算を算定する患者 (3)重度の肢体不自由者、脊髄損傷等の重度障害者、重度の意識 障害者、筋ジストロフィー患者 (4)悪性新生物に対する治療(重篤な副作用の恐れがあるもの 等に限る。)を実施している状態 (5)観血的動脈圧測定を実施している状態 (6)各疾患別リハビリテーションを過3回以上実施している週が 月に2週以上ある患者 (7)ドレーン法又は胸腔若しくは腹腔の洗浄を実施している状態 (8)頻回に喀痰吸引を実施している状態 (9)人工呼吸器を使用している状態 (10) 人工腎臓又は血漿交換療法を実施している状態 (11)全身麻酔その他これに準ずる麻酔を用いる手術を実施し、 当該疾病に係る治療を継続している状態 (12)上記に掲げる状態に準ずる状態にある患者。 この状態なら90日で退院しなくても良いのですが
老人は最高3ヶ月で追い出されるという原因は、この「老人特定入院基本料」・「特定患者」 制度のような3ヶ月以上入院させると経営が出来ない極端な診療報酬制度の縛りと、 もう一つ、その医療機関の格ともなる看護基準を決めている平均在院日数による縛りです。最近はこの方がウエイトが高いかもしれない。 従って急性期病院は、重症の患者さんが入院し、長期化が予測される時には急性期の入院当初から転院先を探すよう家族に要求することになる。 退院見込みの紹介は紹介された病院にも、いつ転院されるのか解らず難しい対応となる
平均在院日数について 一般病棟の平均在院日数基準 看護基準 平均在院日数の計算式 期間の在院患者延べ数平均在院日数= ------------------------------------------ (期間の新入院患者数+期間の退院患者数)×0.5
本邦一般病院の平均在院日数の推移 19.8日 平成17年に初めて20日をきりました。
平均在院日数を維持するために、急性期病院では入退院が少ない月には、分子(その期間の在院患者延べ数)を減らすしかない。平均在院日数を維持するために、急性期病院では入退院が少ない月には、分子(その期間の在院患者延べ数)を減らすしかない。 その時は空きベットがありながら退院させなくてはならないこともある。 ベットの有効利用という点でも大きな問題点だし、平均在院日数を守るため空床をたくさん作ることは、国にとって「一般病床」はそれほど数は必要ないと、とられても仕方なくなる。 その結果→急性期一般病棟の削減。→医師数も充足しているという 誤った結論になる
第3章 ますます増える包括医療 1.大学病院より始まった急性期病院 の包括化医療 DPCについて 慢性期入院医療はほぼ包括化 高齢者の外来包括化も再燃
DPCについて DPC(Diagnosis Procedure Combination) 急性期入院医療の診断群分類に基づく一日当たりの包括的診療報酬制度 主傷病名、処置、合併症の3つの因子を組み合わせた日本独自の新しい入院診療報酬制度 平成15年4月より全国82の特定機能病院(大学病院,国立がんセンター,国立循環器病センター)の一般病床に導入された
DPCでは包括と出来高を「評価」「加味」して合算した制度であるDPCでは包括と出来高を「評価」「加味」して合算した制度である 手術料,麻酔料,千点以上の処置料などは出来高、検査・投薬・レントゲンなどは包括化
DPCの1日当たりの点数は、主病名・治療・合併症などによって詳細に決められており、在院日数に応じて漸減する仕組みとなっている。DPCの1日当たりの点数は、主病名・治療・合併症などによって詳細に決められており、在院日数に応じて漸減する仕組みとなっている。 DPCの入院費は、その疾患の決められた入院日数にあわせて、初期には高く、その後漸減することになり、日数を超えると出来高になり、入院費は極端に低くなる。 医療機関別係数の補正があり、前年実績が確保されている。
ICD-10コード&DPCのネット検索 標準病名集ver.2.50準拠(H18年版DPC用) http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/dpcchk/dpcchk2006/icd/index.html