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2012 口腔微生物学 10 月 16 日. 口腔微生物学講座 ;前田伸子. セッション2; 口腔微生物学各論. Ⅱ 口腔微生物学各論 1 球菌 A 口腔に常在するグラム陽性球菌. 学習目標. ① おもな口腔レンサ球菌の種類を列挙する。 ② 病原性のある口腔レンサ球菌の種類を列挙する。 ③ う蝕の原因菌であるミュータンスレンサ球菌の 病原性を説明する。 ④ 嫌気性グラム陽性球菌の種類を列挙する。 ⑤ 嫌気性グラム陽性球菌の病原性を説明する。. レンサ球菌 Genus; Streptococcus Streptococci.
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2012 口腔微生物学 10月16日 口腔微生物学講座;前田伸子
セッション2;口腔微生物学各論 Ⅱ 口腔微生物学各論 1 球菌 A 口腔に常在するグラム陽性球菌
学習目標 ①おもな口腔レンサ球菌の種類を列挙する。 ②病原性のある口腔レンサ球菌の種類を列挙する。 ③う蝕の原因菌であるミュータンスレンサ球菌の 病原性を説明する。 ④嫌気性グラム陽性球菌の種類を列挙する。 ⑤嫌気性グラム陽性球菌の病原性を説明する。
形態的特徴;完全な球形ではない →やや楕円形 Streptococcus レンサ球菌 Staphylococcus ブドウ球菌 一方向にしか分裂しない あらゆる方向へ分裂する
従来のレンサ球菌の分類 ●溶血性 ● Lancefieldの群抗原
溶血性 β溶血 完全溶血 γ溶血 非溶血 α溶血 不完全溶血
Lancefieldの群別抗原による血清学的分類 表層抗原*の違いにより AからV群(IとJはない)に分類 *表層抗原;菌体から抽出されるC物質と呼ばれる細胞壁多糖体
Lancefieldの群抗原による血清型別と溶血性 群 菌種名 溶血 感染症 AS. pyogenesβ化膿性炎 B S. agalactiaeα心内膜炎など C S. equiβ創傷感染、心内膜炎 D Enterococcusγ創傷感染、心内膜炎 F S. anginosusβ口腔常在菌 G S. canisβ創傷感染、心内膜炎 H S. sanguinisα口腔常在菌、心内膜炎 K S. salivariusα口腔常在菌 なし*S. pneumoniaeα 肺炎、敗血症 * S. mutans, S. sobrinus, S. oralis, S. gordoniiなど多くの口腔レンサ球菌
Streptococcus pyogenes 化膿レンサ球菌;A群溶血レンサ球菌(溶レン菌) 病原因子 ●細胞壁;・Mタンパク*;抗食菌因子/付着因子 ・リポタイコ酸;宿主細胞への付着因子 ●溶血毒;ストレプトリジンO(ASO試験) ●Dick毒素(発熱毒素);猩紅熱の原因となる外毒素 ●酵 素;・ストレプトキナーゼ;フィブリン溶解酵素 ・ヒアルロニダーゼ;ヒアルロン酸分解酵素 ・ストレプトドルナーゼ; DNA分解酵素 *Mタンパク;もじゃもじゃしてmatのように見えるところから 名付けられた。
Streptococcus pyogenes化膿レンサ球菌; 病原性; ●化膿性疾患;咽頭炎、扁桃腺炎、中耳炎、髄膜炎 皮膚に膿痂疹、丹毒、蜂巣炎 ●猩紅熱;Dick毒素による急性咽頭炎、全身紅斑 ●急性感染症の続発症;急性感染症が収まるころ 以下の続発症を起こすことがある。 ・急性糸球体腎炎 ・リウマチ熱 ・レンサ球菌性毒素性ショック症候群 ・劇症型溶レン菌感染症* *1985年頃から、本菌による感染症から軟組織の広範囲の壊死を 伴う敗血症ショック状態を引き起こす症例が見られるようになった。 マスコミで「人食いバクテリア」として取り上げられた。
さて、従来の分類で口腔レンサ球菌は分類しにくいので現在、似た菌同士をグループ分けする方法が取られているさて、従来の分類で口腔レンサ球菌は分類しにくいので現在、似た菌同士をグループ分けする方法が取られている
口腔レンサ球菌Oral Streptococci 口腔内の全ての場所で優勢な細菌種 ●歯肉縁上歯垢を構成する細菌の28% ●歯肉縁下歯垢を構成する細菌の29% ●舌の常在細菌叢を構成する細菌の45% ●唾液から分離される細菌の46%
成熟歯垢中の口腔レンサ球菌 Corn-cob
口腔レンサ球菌の溶血性 α溶血するものが多く,以前はviridans Streptococcus group;緑色レンサ球菌と呼ばれた。 しかし,実際は口腔レンサ球菌はα,β,γ溶血するものを含んでいる。 α溶血;不完全溶血 β溶血;完全溶血 γ溶血;非溶血
S. mutans groupミュータンスレンサ球菌群 そもそもS. mutansは ●1924年 Clarke ヒトのう蝕から始めて分離.形態が球菌ー球桿菌ー桿菌状(mutation ;変化)に見えることから命名 ●1960年代 Keyes, Fitzgerald 無菌動物も含めた多くの動物実験から,う蝕病原性が確認された.
う蝕は感染症であるKeyes とFitzgerald:1950-1960 う蝕あり う蝕なし う蝕あり う蝕あり う蝕あり
ミュータンスレンサ球菌群 以前は細胞壁の抗原性の違いから8種の血清型があると考えられていた。 現在は生化学的性状も違うことから7菌種に分類 →まとめてミュータンスレンサ球菌群と呼ぶが ヒトに病原性のあるのはS. mutans、S. sobrinusのみ
ミュータンスレンサ球菌群 菌種名 GC含量血清型 バシトラシン耐性 宿 主 S. mutans 36-38% c, e, f ありヒ ト S. ratti 41-43% b あり/なしラット S. criceti 42-44% a なしハムスター S. sobrinus 44-46% d, g あり/なしヒ ト S. ferus 43-45% c なしラット S. macacae 35-36% c なしサ ル S. downei 41-42% h なしサ ル-
S. salivarius groupサリバリウスレンサ球菌群 • S. salivarius • S. vestibularis • S. thermophilus ●S. salivariusは口腔のほとんどの部分に常在 しているが,特に舌に多いので唾液中にも多い ●フラクタンを産生 ●病原性はない
S. anginosus groupアンギノーサスレンサ球菌群 • S. constellatus • S. intermedius • S. anginosus ●歯垢や粘膜から分離されるが病原性 があり、化膿性炎症の原因になる。 ●口腔だけでなく脳、肝なども
S. mitis groupミティスレンサ球菌群 • S. sanguinis( sanguis) • S. gordonii;歯垢の早期定着菌 • S. oralis • S. parasanguinis (parasanguis) • S. mitis • S. crista
S. sanguinis • 水溶性,不溶性グルカン産生→歯垢形成に関係 • H2O2産生 • 歯垢中で最も優勢 • IgA分解酵素 • 心内膜炎の原因となることが多い.
口腔レンサ球菌の病原性 明らかな病原性細菌である S. pyogenesと比べて、病原性は低い しかし・・・ ●う蝕の原因になるもの ●化膿性炎症を起こすもの ●感染性心内膜炎の原因になるもの などがある
S. mutans groupのう蝕原性 ●付着性;表面タンパクによる初期付着と菌体外多糖体(不溶性グルカン)による付着 ●多量の乳酸産生性 ●耐酸性
S. mutans groupの歯面への定着 細胞壁蛋白*がS. mutans groupのペリクルへの最初の付着に関係する いったん、ペリクルへ付着し、周囲にスクロースが十分あると、さらに不溶性グルカンを産生し、強固に定着する *protein antigen; PA
S. mutans groupの不溶性グルカン産生 glucosyltransferase; GTF スクロース(蔗糖)を基質として グルコース重合体(不溶性グルカン) を合成する。
S. mutans groupの GTF S. mutans、S. sobrinusは3〜4種類のGTFを持ち、これらの共同作用により粘着性の強い不溶性グルカンを産生する GTFはスクロースを基質としてグルコシル基を結合し、グルカン重合体を作ると同時にフルクトースを遊離する酵素である
S. mutans groupの GTF フルクトース、果糖 グルコース、ブドウ糖 ATPと酸 グルカン
グルカン ムタンとも言う
S. mutans groupの乳酸産生性 多量の乳酸を産生するかどうかは 供給されるスクロース量に 依存する
ミュータンスレンサ球菌の糖代謝;スクロース量とう蝕の誘発の関係ミュータンスレンサ球菌の糖代謝;スクロース量とう蝕の誘発の関係 ミュータンスレンサ球菌 スクロース スクロース スクロース 菌体内多糖体 菌体外多糖体 =不溶性グルカン ATP 乳 酸 フルクース ATP 乳 酸 ATP 乳 酸
ミュータンスレンサ球菌が主体の歯垢 抵 抗 唾液による希釈 および緩衝作用 不溶性グルカン 耐酸性 エナメル質表層の下から 脱灰;pH5.5以下 乳 酸
ミュータンスレンサ球菌の耐酸性のメカニズムミュータンスレンサ球菌の耐酸性のメカニズム プロトンATPase
S. mutansとS. sobrinusのどちらがより、う蝕原性が高いのか? 大多数のヒトから分離されるのはS. mutansでしかも血清型c、 S. sobrinusは分離頻度が低い ↑ このことから従来S. mutansの方がより重要であると考えられていた
しかし! ●動物実験でS. sobrinusの方が S. mutansよりも、う蝕誘発能が強い。 ●疫学調査の結果、S. sobrinusの方がう蝕の発症に関連がある。 これに関しては結論はでていない。
S. anginosus groupと化膿性炎症 ●口腔領域の化膿性炎症、とくに膿瘍の原因菌となることが多い。 ●膿瘍自体は、う蝕に継発して歯髄が壊死した結果起こることが多い。
膿瘍から分離される頻度の高い口腔常在細菌 膿瘍から分離される頻度の高い口腔常在細菌 通性嫌気性 球菌 Streptococcus milleri group Streptococcus oralis group 桿菌 Lactobacillus, Actinomyces 嫌気性 球菌 Peptococcus, Peptostreptococcus Veillonella 桿菌 Prevotella, Porphyromonas
S. anginosus groupと化膿性炎症 ●口腔だけでなく、口腔以外の様々な組織,臓器(脳,肝)の膿瘍から分離される。 ●多糖体分解酵素を持つ。 ●とくにS. intermediusはヒアルロニダーゼ産生性が強い多糖体分解酵素を持つ。
S. sanguinisと感染性心内膜炎 ●歯性菌血症の結果、直接、細菌が侵入する。 ●あるいは心内膜との共通抗原があり、アレルギー反応として起こる。
腸球菌Genus Enterococcus 形態的にはレンサ球菌で、ホモ乳酸発酵を行い、Lancefieldの群抗原ではDに属するが、GC含量からレンサ球菌とはかけ離れていることが分かり、Enterococcus属が提案された。 以前はD群レンサ球菌と呼ばれた
Enterococcusの特徴 ●一般的に抵抗性が強い 6.5%NaCl pH9.6 10℃ 発育可能 ● 60℃、30分間の加熱にも耐える
Enterococcusの特徴 主に腸管に常在、口腔からも分離されるが、総菌数に占める割合は0.1%以下と低い E. faecalis E. faecium E. avium ←口腔に多い
Enterococcusの特徴 口腔での菌数が少ないにもかかわらず 難治性の根尖性歯周炎や口腔外科領域の感染の原因菌として検出される。 しかも化学療法剤に対する感受性が低い βーラクタム系抗生物質耐性 • ペニシリン • セファロスポリン
Enterococcusの特徴 従来はアンピシリン、ニューキノロン系薬剤が有効であったが、 近ごろバンコマイシンを含めた多剤耐性 腸球菌;VRE; vancomycin-resistant- enterococciの出現が問題となっている。