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生物環境物理学特論 Environmental Biophysics 小杉緑子

生物環境物理学特論 Environmental Biophysics 小杉緑子. 第4回:乱流フラックスデータの特性と使い道. 今日の参考書. 「フラックス観測マニュアル」 フラックス観測マニュアル編集委員会編、 2009 http://www2.ffpri.affrc.go.jp/labs/flux/manual_j.html 「植物と微気象 - 群落大気の乱れとフラックス」 文字信貴、大阪公立大学共同出版会、 2003 「陸域生態系における二酸化炭素等のフラックス観測の実際」  Asia Flux 運営委員会編、 2003

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生物環境物理学特論 Environmental Biophysics 小杉緑子

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Presentation Transcript


  1. 生物環境物理学特論Environmental Biophysics小杉緑子 第4回:乱流フラックスデータの特性と使い道

  2. 今日の参考書 • 「フラックス観測マニュアル」 フラックス観測マニュアル編集委員会編、2009 http://www2.ffpri.affrc.go.jp/labs/flux/manual_j.html • 「植物と微気象-群落大気の乱れとフラックス」 文字信貴、大阪公立大学共同出版会、2003 • 「陸域生態系における二酸化炭素等のフラックス観測の実際」 Asia Flux運営委員会編、2003 http://www-cger.nies.go.jp/publication/M015/M015.pdf

  3. 乱流フラックスとは • 生物体と環境の間の運動量・エネルギー・物質の交換過程は概ね乱流輸送であり、潜熱(latent heat flux)・顕熱(sensible heat flux)・CO2などは乱流(eddy)によって輸送される。 • 乱流変動法(渦相関法):乱流フラックスを求める方法として、用いる仮定が少なくもっとも直接的な方法であると考えられている。CO2などの微量気体の鉛直フラックスは次式のように表される。 • cは物質濃度、wは風速の鉛直成分でバーは時間平均、プライム(‘)は平均からの偏差を表している。平坦で一様な地表面でwの平均wが0と仮定できる場合、鉛直フラックスはwとcの共分散の平均  で表される。

  4. 乱流フラックスとは 風にのって運ばれるH2O分子 鉛直風速の向き H:顕熱フラックス(W m-2)、Cp:空気の定圧比熱(J K-1 kg-1) lE:潜熱フラックス(W m-2)、 l:気化潜熱(J kg-1)、E:蒸発散量(H2Oフラックス)(kg m-2s-1)、r:空気の密度(kg m-3)、w:風速(m s-1)、q:比湿(kg kg-1), rv:水蒸気密度(kg m-3) • 鉛直風速が下向きのときH2O濃度が高く、 • 鉛直風速が上向きのときH2O濃度が低ければ、 • HO2は下向きに輸送される(H2O吸収=凝結) • 鉛直風速が下向きのときH2O濃度が低く、 • 鉛直風速が上向きのときH2O濃度が高ければ、 H2Oは上向きに輸送される( H2O放出=蒸発散)

  5. 風にのって運ばれるCO2分子 鉛直風速の向き 乱流フラックスとは • CO2もH2Oや顕熱と同様、乱流によって輸送される。 乱流変動法での群落CO2Flux測定=NEEが直接測定可能。 Fc:CO2フラックス(吸収が正)(mmol m-2 s-1) rmol:空気の密度(mol m-3)、w:風速(m s-1)、c:CO2濃度(mol mol-1), rc:CO2密度(mol m-3) • 鉛直風速が下向きのときCO2濃度が高く、 • 鉛直風速が上向きのときCO2濃度が低ければ、 • CO2は下向きに輸送される(CO2吸収) • 鉛直風速が下向きのときCO2濃度が低く、 鉛直風速が上向きのときCO2濃度が高ければ、CO2は上向きに輸送される(CO2放出)

  6. フラックスが算定されるまで (1)観測 まず樹冠上のある高度で、応答のよい測器を使い0.05~0.2秒間隔程度でx,y,z方向の風速、温度、CO2濃度、H2O濃度を連続測定する。 x,y,z方向の風速と温度の変動 を測定する超音波風速温度計 CO2,H2O濃度の変動を測定する オープンパス式ガスアナライザー

  7. フラックスが算定されるまで (2)データの分割 フラックスを計算するためには、まず延々と続く生データをある長さで分割する必要がある。この時間のことを「平均化時間」という。 平均化時間は、短すぎると乱流フラックスに寄与する波の全てを捕らえることができず、長すぎると日変化のような大きな変動までひらってしまうので、 30分から一時間程度がよいとされる。

  8. フラックスが算定されるまで (3)生データのチェックや異常値の除外 2003/6/29 9:00-9:30の赤穂常緑広葉樹林のデータ

  9. フラックスが算定されるまで (4)座標回転 w’c’の平均からフラックスを算出するためには、水平一様な地形上でwの平均が0でなければならない。しかし実際には地形の影響などからz風速の平均は0にならない。これを補正するために座標を回転し、計算にはz風速の値ではなく、座標回転後のw風速を用いる。 Double rotation (wを毎回ゼロに) Planer fit (wが長期平均的にゼロになる一平面を仮定)

  10. フラックスが算定されるまで (5)タイムラグを見積もる 風速・温度とCO2密度・H2O密度は別々の測器で測定している。このため測定時間に若干のずれが生じる。このずれ時間を把握し、共分散の計算時にデータをずらして計算しなければならない。 オープンパス式ガスアナライザーLI7500の例:測器自体の問題により0.25s程度のずれがあるので、ずれ時間を記録データ間隔に併せるため、測器からの信号の時点であらかじめ0.3s(10Hz測定の場合)に調整しておく。 クローズドパス式の例:チューブでの吸引に伴うずれ時間を見積もる。共分散が最も大きくなるずれ時間を各平均化時間毎に算定した結果をもとに、各システムにおける最適ずれ時間を決定することが多い。

  11. フラックスが算定されるまで (6)トレンド除去 平均からの偏差(プライム) 平均値が30分の間にどんどん変化していく場合もある。 このような時には、青いラインではなく赤いラインが 平均値として用いられる。(=直線回帰によるトレンド除去)

  12. フラックスが算定されるまで (7)平均・偏差・共分散の計算 座標回転後の水平風速(u)、鉛直風速(w)、CO2濃度 (赤穂2003/6/29 9:00-9:10の10分間。鉛直風速とCO2濃度の変動を較べると反対の形になっていて、CO2を吸収している。)

  13. フラックスが算定されるまで (8)単位換算・湿度補正・密度変動(WPL)補正 単位換算 共分散を、必要とするフラックスの単位に調整する。 超音波温度計の水蒸気補正 超音波温度計で測定される音仮温度から水蒸気の変動成分を除くために必要 密度変動補正(WPL補正、Webb et al 1980) 微量気体の場合、空気密度変動により発生するwc項を考慮しなければならない

  14. フラックスが算定されるまで (9)スペクトル解析・応答補正 フラックスが正しく評価されているかどうか確認するために、パワースペクトル・コスペクトルをチェックする。必要に応じて低周波側トレンド除去や高周波側応答補正などを行う。 「植物と微気象」文字信貴著 P99より転写 パワースペクトルのチェックポイント Kosugi et al, 2007, J. Hydrol. Fig. 3 クローズドパス法ではコスペクトルが高周波側で減衰するのでその分嵩上げする必要あり

  15. フラックスが算定されるまで (10)定常性・乱流統計量・フェッチなどの品質管理 定常性 Stationarity (Foken and Wichura 1996) 1run(30分ないし一時間)内の定常性が満たされているかどうかをチェックする。データを5分程度に分割し分割区間間のコバリアンスを比較し、範囲外であればデータを棄却する。 乱流統計量 Integral Turbulence Characteristics (Folen and Wichura 1996, Aubinet et al 2000) 安定度z/Lと各物理量の無次元標準偏差の関係をとり、 Monin-Obukhov相似則によるフラックスと分散の関係が成り立っているかを判定する。予想されるラインから外れて極端に大きくなっているときは、障害物や非一様性が疑われる。 フェッチ(Fetch) 風上側に十分なフェッチ(吹走距離)が確保できているかを評価する。Footprintモデル(Schuepp et al 1990、Leclerc and Thertell 1990、Horst and Well 1994など)を用いて、測定されたフラックスが風上側のどの範囲の寄与をうけているかを評価する。

  16. 乱流フラックスの特性 • 時間スケール:フラックスデータは30分-1時間スケール •           扱う範囲は~10年程度(今のところ) • 空間スケール:「フェッチ」の範囲=「群落」「生態系」スケール • 測れるのはあくまである一点での「乱流フラックス」(青渦) • 現実は、あるBOX内のガス交換=「乱流フラックス」(赤渦)+「貯留フラックス」(緑丸)+「移流フラックス」(赤矢印)

  17. 乱流フラックスの短所 • 乱流変動法のインバランス問題 • 乱流変動法によって測定された潜熱と顕熱を足しても、有効エネルギーに足りないことが多い。(=エネルギーインバランス問題) • 夜間に移流項の影響が大きくなるために、夜間の生態系呼吸を過小評価する。 • 現在のところ測定点・測定期間が限られている。ようやく10年未満程度のデータが取れ始めたところで、より長期(数十年~)の解析には向かない。またあくまで一群落スケールの測定であり、より大きな空間スケールへの拡張には工夫が必要。

  18. 乱流フラックスの長所 • 乱流変動法によるフラックス観測のもつ世界的・今日的な意義 • その短いタイムスパンゆえにガス交換の決定要因も含めた詳細な動態の把握という目的に対して大きなAdvantageを持つ。「いかにして」の部分、森林システムの機能を解明する上で役立つ。 • 扱う空間スケールがちょうど群落・生態系のスケールであり、これまで個別に扱われてきた生態系システムの各構成要素についての研究を、より大きな空間スケールの話へとスケールアップする際に大きな威力を発揮する。

  19. 乱流フラックス関連研究インバランス問題への取り組み乱流フラックス関連研究インバランス問題への取り組み Kosugi and Katsuyama, 2007. Evapotranspiration over a Japanese cypress forest. II. Comparison of the eddy covariance and water budget methods. Journal of Hydrology 334, Fig. 5 乱流変動法と流域水収支法による蒸発散量のクロスチェック

  20. 乱流フラックス関連研究インバランス問題への取り組み乱流フラックス関連研究インバランス問題への取り組み Ohkuboet al, 2007. Comparison of the eddy covariance and automated closed chamber methods for evaluating nocturnal CO2 exchange in a Japanese cypress forest. Agric. For. Met. 142.Fig.7 乱流変動法とチャンバー法による夜間生態系呼吸量のクロスチェック

  21. 乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線 • 「フラックスネット」による観測網・データベースの組織的整備 • 衛星リモセン研究・モデル研究など上位スケールの研究との連携 http://www.fluxnet.ornl.gov/fluxnet/graphics.cfmより

  22. 乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線 Saigusa et al, 2008. Temporal and spatial variations in the seasonal patterns of CO2 flux in boreal, temperate, and tropical forests in East Asia. Agric. For. Met. 148. 11サイトのNEP,GPP,RE比較

  23. 乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線 Kosugi et al. under submission. Influence of inter-annual climate variability on evapotranspiration and canopy CO2 exchange of a tropical rain forest at Pasoh in Peninsular Malaysia. J. For. Res. 半島マレーシア(パソ)熱帯雨林の6年間の蒸発散量年々変動

  24. 乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線乱流フラックス関連研究より大きな時空間スケールを志向する路線 Nakaji et al, 2008. Utility of spectral vegetation indices for estimation of light conversion efficiency in coniferous forests in JapanAgric. For. Met. 148. CO2フラックスと各種リモセン指標(の地上観測)との比較

  25. 乱流フラックス関連研究特性&長所を最大限生かそうとする路線乱流フラックス関連研究特性&長所を最大限生かそうとする路線 左:Kosugi et al, 2007. Evapotranspiration over a Japanese cypress forest. I. Eddy covariance fluxes and surface conductance characteristics for three years. J. Hydrol. 337. Fig. 11 右:Kosugi, Y et al, 2005. Three years of carbon and energy fluxes from Japanese evergreen broad-leaved forest. Agric. For. Meteorol. 132. Fig. 8 乱流フラックスから植生のバルク応答特性やガス交換関連フェノロジーを抽出する

  26. 乱流フラックス関連研究特性&長所を最大限生かそうとする路線乱流フラックス関連研究特性&長所を最大限生かそうとする路線 Kosugi et al. 2006. Impact of Leaf Physiology on Gas Exchange in a Japanese Evergreen Broad-leaved Forest. Agric. For. Meteorol. 139. Fig. 8 多層モデルを使って、個葉ガス交換などの生態系内の素過程を積み上げて乱流フラックスと比較し、どのような要因が生態系全体のガス交換を決めているかを定量化。

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