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意識障害:基礎的事項. 上行性網様体賦活系 (古典経路) ascending reticular activating system : ARAS 橋中部から吻側に広がり 脳幹被蓋部を上行 して 視床 から 大脳皮質 へ投射 視床下部調節系 (別経路) hypothalamic controlling system 視床下部 から 辺縁系 に作用 ⇒従来は網様体と一括されていたが、脳幹に起源を 持ち脳の広い領域に投射するものを 汎性投射系 とも 呼ぶ 視床下部前部 : REM 睡眠 ⇔ 視床下部後部 : 覚醒.
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意識障害:基礎的事項 上行性網様体賦活系(古典経路) ascending reticular activating system:ARAS 橋中部から吻側に広がり脳幹被蓋部を上行して 視床から大脳皮質へ投射 視床下部調節系(別経路) hypothalamic controlling system 視床下部から辺縁系に作用 ⇒従来は網様体と一括されていたが、脳幹に起源を 持ち脳の広い領域に投射するものを汎性投射系とも 呼ぶ 視床下部前部:REM睡眠⇔視床下部後部:覚醒
上行性網様体賦活系と視床下部調節系 ヒスタミン 視床網様核 視床の非特殊核 上行性網様体賦活系 Ach 脳幹網様体 知覚 視床下部後部 前脳基底部 (Meynert基底核) 視床下部調節系 視床下部前部
脳幹から大脳皮質などへの投射 視床下部調節系(汎性投射系) noradrenalin作動性投射:青斑核locus coeruleusから serotonine作動性投射:背側縫線核dorsal rapheから acetylcholine作動性投射: 外背側被蓋核laterodorsal tegmental nucleus および脚橋被蓋核pedunculopontine tegmental nucleusから histamine作動性投射:後部視床下部付近から orexin(hypocretin):最近発見、覚醒作用あり orexinあるいは受容体の欠損でnarcolepsyを引き起こす 青斑核、背側縫線核、外背側被蓋核などにも投射 摂食行動にも関与 視交叉上核:circadian rhythmの発信源=生物時計としての役割
意識の維持: 脳幹網様体(網様体賦活系)と 視床下部(視床下部調節系)の二重支配が重視 意識の質:清明度と内容 清明度の低下:意識混濁をもたらす 内容の変容:意識変容 意識混濁が見られると多少なりとも意識の変容を伴うが、 意識障害が強くなると意識の変容は把握困難になる
意識混濁 意識不鮮明 confusion 変容を伴わない軽い意識混濁 傾眠 somnolence 放置すれば意識が低下 嗜眠 lethargy 意識低下傾向が強いが十分な刺激で覚醒 昏迷 stupor 強い刺激で短時間は覚醒 半昏睡 semicoma 強い刺激に対する運動反応は残っている 深昏睡 deep coma 全く反応がない 意識変容 せん妄 delirium 軽い意識混濁+精神運動興奮・幻覚・妄想など 急性錯乱状態 急性に生じたdeliriumに近い状態 acute confusional state もうろう状態 意識混濁+意識の狭窄 twilight state 夢幻状態 dreamy state 夢遊状態に近い
意識障害の程度 :Glasgow Coma Scale(GCS:脳外科で頻用)や Japan Coma Scale(JCS:内科で頻用)が使用される 特殊な病態にはJCSは不適切な場合がある ex)無動性無言akinetic mutismや失外套症候群:開眼して いても実際にはいわゆる植物状態(重篤な意識障害) ヒステリーなどで閉眼している場合、強制的な開眼に強く 抵抗することがある
急性期意識障害と慢性期意識障害 閉眼状態の意義 急性期:ARAS圧迫などによる覚醒障害 慢性期:上位中枢からのARASに対するフィードバック が乏しいための過剰睡眠の状態 ※慢性期意識障害で知的要素が量的に減少すると、 痴呆と区別できない 情動や意欲が質的に偏倚すると、精神病と区別できない
意識障害の原因:障害部位別 1.大脳皮質の広範な障害(通常両側性) 2.ARASの障害 3.両者の合併 原因疾患 :極めて多岐にわたるため、画一的な検索は時間と労力の 無駄になることもしばしばある ※硬直化しないためには、既往歴・現在治療中の疾患・内服薬・ 医科薬以外の薬剤(あるいは化学物質など)への曝露の 可能性・身体所見・発症時の状況、などに注意し、なるべく 短時間に原因を探り、適切な治療を施せるよう努力すべき 『五感を駆使して情報を収集せよ!』
☆AIUEOTIPS A=Alcoholism :急性アルコール中毒 I=Insulin :糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス、 高浸透圧性非ケトン性昏睡)、低血糖 U=Uremia :尿毒症 E=Encephalopathy, Endocrinology, Electrolyte, ECG :高血圧性脳症、脳脊髄炎、脳腫瘍、肝性脳症、 Wernicke脳症、低ナトリウム血症、Adams-Stokes症候群 O=Opiate, oxygen :トランキライザー、鎮静剤、麻薬、呼吸不全、呼吸障害 T=Trauma, Temperature :脳震盪や頭蓋骨骨折を伴う外傷、硬膜下出血、 硬膜外出血、低体温、熱中症 I=Infection :髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、敗血症、結核、梅毒、 高齢者やアル中の肺炎 P=Psychiatric :ヒステリー、うつ状態、分裂病、薬剤(中枢神経抑制剤) S=Stroke, Shock, Seizure, Syncope :脳血管障害、心筋梗塞、各種ショック、急性失血、 心拍出量の低下、房室ブロック、洞不全症候群、 急性心筋梗塞、心筋炎、血管迷走神経性失神、等々…
意識障害を見るときのポイント-その1 1.寝ているのか、意識障害なのか? 深睡眠は強く繰り返して刺激すれば覚醒する 睡眠では脳幹反射は維持される 2.呼吸パターンは? 中枢性の場合、障害部位が大脳から下にゆくに従って Cheyne-Stokes呼吸 central neurogenic hyperventilation apneustic breathing cluster breathing 失調性呼吸
意識障害を見るときのポイント-その2 3.脳幹反射 a.角膜反射:角膜に触れると瞬目 b.対光反射 c.毛様体脊髄反射:痛覚刺激で両側の瞳孔散大 d.咽頭反射:嘔吐反射 e.軟口蓋反射:軟口蓋を刺激すると軟口蓋が挙上 f. 嚥下反射 g.前庭動眼反射:脳幹がintact→頭部を動かした時 視点を一定にしようとする⇔人形の目現象 h.Caloric test:水平半規管を垂直にして冷水注入 →反対方向への眼振
意識障害を見るときのポイント-その3 4.頭蓋内圧亢進を疑う場合 脳圧亢進の症状として外転神経麻痺も来しやすい 瞳孔の不同・散大、対光反射の減弱・消失、徐脈を伴う 血圧の上昇、呼吸抑制、失調性呼吸、嘔吐など 小脳テントヘルニアが進行→除皮質硬直から除脳硬直へ 5.意識障害と失神 失神とは、ごく短時間な意識消失 循環障害が第一義的で、それによって起こる脳血流低下による 十数秒程度で自然に回復することが多い 脳血管障害などによる一過性の意識障害では、脳の局在症候を伴う 一過性の意識障害のみの場合、TIAとは即決できない ※睡眠発作:L-dopa等で長期治療中のパーキンソン病患者
意識障害を見るときのポイント-その4 6.てんかんを疑う場合 ※けいれん発作≠てんかん A.突発性の意識障害を来すてんかん a.強直間代発作:全身の強直けいれんに始まる b.欠神発作:一瞬の意識消失、数秒以内、非定型の 場合自動症が見られる c.脱力発作:一瞬の全身抗重力筋の弛緩による転倒 B.二次性全般化:前兆から始まり強直間代発作へ C.Pseudo-attack:てんかんではない! ヒステリー患者などで見られる 閉眼したままで昏睡のように見えても瞼の下で 眼球がキョロキョロと動いている 転倒しても怪我をしない(怪我をするような転倒を しない)
意識障害を見るときのポイント-その5 7.代謝性脳障害を疑う場合 麻痺があるようだが今ひとつハッキリしない 神経欠落症状が解剖学的に合わない 電解質異常(低ナトリウム血症)や甲状腺機能低下症など、意識障害の 発症時期がハッキリしない(糖尿病の低血糖発作は除く) 基礎に糖尿病・慢性肝疾患・甲状腺疾患・食指不振・下痢・嘔吐・全身 消耗性疾患などがある時 おまけ:high anion gap metabolic acidosisを呈する疾患 KUSMALと覚える K:ketoacidosis U:uremia S:salicylates M:methanol(ethylene glycol, paraldehyde) A:alcohol(ethanol) L:lactic acidosis