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品質管理 Quality Control 6 章 検査・抜取検査 その1 Inspection and Sampling Inspection I. 2005 年度前期 工学院大学 品質管理 担当:山下俊恵 教科書:品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第 3 版 2005 年 3 月 授業内容: http://datamining-statistics.blog.ocn.ne.jp/yamashita/ の中のカテゴリ「品質管理」. 6 章 検査・抜取検査 6・1. 6.1 検査とは (Inspection) :
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品質管理 Quality Control6章 検査・抜取検査 その1 Inspection and Sampling Inspection I 2005年度前期 工学院大学 品質管理 担当:山下俊恵 教科書:品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第3版 2005年3月 授業内容:http://datamining-statistics.blog.ocn.ne.jp/yamashita/の中のカテゴリ「品質管理」
6章 検査・抜取検査 6・1 6.1 検査とは(Inspection): 製品またはロットを合格(良、受け入れる)か不合格(不良、受け入れない)かを判定すること(①判定基準の決定、②特性値の測定、③特性値と基準値の比較、④良・不良の判定)。外部から購入するときの検査を購入検査という。 6.2 検査の目的 (1)品質保証。(2)次の工程や顧客に不良製品や不良ロットの流通を防止。(3)品質の維持・向上。(4)作業者や外注工場の品質向上への刺激。 6.2b 品質保証の主な業務内容 品質基準・検査実施手順の決定、不合格製品の処置判定、管理活動調査、クレーム処理、品質評価・報告
6章 検査・抜取検査 6・2 6.3 検査の種類 ①全数検査:100%検査。検査件数が少ない場合や不良品を見逃すと消費者に重大な事故や損失を与えるときに用いる。例えば、車のブレーキ検査、牛肉の検査など。時間や費用がかかりすぎる場合、破壊検査などには利用できない。 ②抜取検査:検査ロット(検査の対象となるロット)から、あらかじめ決められた「抜取検査方式」に従って、標本を抽出し、判定基準と比較して、そのロットを統計的に合格・不合格と判定する。ねじのように安くて多量にある製品、検査項目が多く手間が多い製品、破壊試験が必要な製品などに利用。 ③無試験検査:過去の信頼できる品質保証情報、また製造工程の安定状態と品質情報、または間接検査に切り替えたときに、標本の試験なしで検査。 ④間接検査:提供者側からの検査成績の受け入れと定期的な検査成績表の受け入れにより試験を省略する検査方法。
6章 検査・抜取検査 6・3 6.5 抜取検査 (1)検査単位:①カウントできるものは1個のねじのように、それぞれの製品1個を検査単位とする。②連続体や流動体の場合、一定の長さ、一定の容量などを検査単とする。 (2)特性値による種類: ①計数抜取検査:ロットの判定基準が計数値で与えられる抜取検査をいう。 a)不良個数による抜取検査。例えば、ロットの大きさN=1000個の中から、標本の大きさn=100個を無作為(ランダム)に抜き取り、不良品がc=2個以下であったら合格⇒抜取検査方式は[n=100,c=2]と表示。 b)欠点数による抜取検査。例えば、大きさ500枚の鉄板から無作為に30枚の標本を抜き取り、欠点数の合計が24以下ならば、ロットを合格⇒抜取検査方式は[n=30, c=24]
6章 検査・抜取検査 6・4 ②計量抜取検査:ロットの判定基準が計量値で与えられる抜取検査をいう。 一般に、ロットの検査単位の測定値は正規分布に従うと仮定し、例えば、電池の起電力を検査するため、ロットから標本10個を無作為に抜き取って、その10個の起電力の平均が1.56V以上ならばロットを合格とし、 1.56V未満ならばロットを不合格とする。 (3)型(実施方式)による分類: ①基準型:抜取検査方式は、確率α(仮説検定の場合と異なり、αは生産者の保護のため、良い製品が不良とされる確率αを小さくする)を一般に0.05、確率β(消費者の保護のため、悪い製品が合格となる確率βを小さくする)を一般に約0.10と決める。 ②(計数)選別型:抜取検査方式に検査を行い、合格の場合はそのまま受け入れるが、不合格の場合、全数選別して(全数検査を行い)、不良品を修正または取り替える処理を行う。よって、検査後の平均不良率(AOL)はある一定の値を超えることはない(AOQL)。
6章 検査・抜取検査 6・5 ③調整型:連続してロットの受け渡しが行なわれる場合、過去の検査履歴により検査方式を調整する方法である。ロットの品質が良い場合は、ユルイ検査を、逆に悪い場合は、抜き取り数が多くなるキツイ検査を行い品質を向上する。ナミ検査、ユルイ検査、キツイ検査の3水準の検査があり、当初の検査はナミ検査を行い、その結果から、キツイ検査あるいはユルイ検査などに調整される。④連続生産型:連続的に生産されている中、次々に送られてくる製品を(例えばベルトコンベイヤ上で)、最初は全数検査を行い、良品が一定個数続いたら、一定個数ごとの抜取検査に変更し、もし不良品が発見されたら再び全数検査に戻る方式である。 6.6 OC曲線(検査特性曲線、Operating Characteristic Curve): OC曲線とは抜取り検査で、ロットの実際の品質、検査方法[標本サイズn,合格判定個数c]によるロットの合格率(抜き取った標本からロットが合格する確率)との関係を示す曲線である。検査の判定基準に必要となる。
6章 検査・抜取検査 6・6 OC曲線の横軸は「ロットの実際の不良率または平均品質」、縦軸は「検査でロットが合格する確率」である。 例えば、ロットに1000個のボールがあり、実際の不良率は0.05%とする。今、検査で、標本サイズ100個を抜取り、以下の検査にかける: 不良件数X<=1のとき⇒合格、不良件数X>1のとき⇒不合格とする。 その時、ロットが合格する確率はほぼ1である。
6章 検査・抜取検査 6・7 不良件数は超幾何分布に従うことが知られている。 N=1000,P=0.5%, PN=5, n=100, X=1,...,n⇒ http://www7a.biglobe.ne.jp/~takuminotie/Tool/inspection.htm
6章 検査・抜取検査 6・8 n/N<0.1の場合、超幾何分布を2項分布で近似してよい。N=1000,P=0.5%, PN=5, n=100, X=1,...,n⇒ さらにp<0.10 & pn<10の場合、2項分布をポアソン分布で近似してよい。N=1000,P=0.5%, PN=5, n=100, X=1,...,n⇒
6章 検査・抜取検査 6・9 ・累積確率曲線 (ソーンダイク曲線、Thorndike Curve) 今、N:ロットのサイズ、p:ロットの実際の不良率、n:標本サイズ、 c:検査での不良件数の最大値 不良件数もしくは欠点数Xがポアソン分布に従う場合、平均pnを横軸に置き、c以下の不良率がでる確率(ロットが合格する確率)L(p)を縦軸に置く。これはp<0.10(10%), pn<10, N>=10nの場合に利用することができる。 先ほどの例題:N=1000個、実際の不良率=0.005、標本サイズn=100、c=1⇒pn=0.5<10 & N=1000=10*100なので使用できる。 ⇒pn=0.5, c=1⇒検査で合格する確率L(0.05)=0.9 これは近似的な値
6章 検査・抜取検査 6・10 例:抜取方式[n=100, c=2] 、不良率p=3%⇒横軸pn=3とc=2の曲線から縦軸L(p)を求めると、L(p)=0.45⇒p=3%とL(P)=0.45でOC曲線の1点が求まる。 ・見方:ロットの実際の不良率により、検査でロットがどのくらいの確率で合格されるかを読み取ることができる。
6章 検査・抜取検査 6・11 この図の実際の不良率p0とは、生産者として現在の生産能力からみて、なるべく合格させたいロットの不良率の上限(生産者危険率α=0.05もしくはL(p0)=0.95でp0を求める)。 この図において、実際の不良率p1とは、消費者として実用の上で大きな影響を及ぼすのでなるべく不合格としたいロットの不良率の下限(消費者危険率β=0.10もしくはL(p1)=0.10でp1を求める)。今の図では、p0=2.0%、p1=8.0%。 逆にp0とp1が契約で決まっている場合、計数基準型一回抜取検査表(表6.4)を用いて抜取検査方式[n=100, c=4]を求めることもできる。 1-α=0.95 =0.05 =0.10
6章 検査・抜取検査 6・12 OC曲線の性質: OC曲線はロットの大きさに影響される。 同じ[n,c]でも、Nが違うと、Nが増大すると、A⇒Cとなる。
6章 検査・抜取検査 6・13 OC曲線の性質:ロットの大きさN、標本の大きさn、合格判定個数cを変えながら、実際の不良率による検査でのロットの合格率であるOC曲線の変化を調べる。 (1) 6.8図では、n=20,c=2で、Nを変化。 標本サイズnがロットサイズNに近くなるほど、ロットの不良率の低いところ(良いロット)で合格率L(p)が高く、ロットの不良率の高いところ(悪いロット)で、ロットの合格率L(p)が低くなり、安全な抜取検査ができることが分かる。 品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第3版
6章 検査・抜取検査 6・14 (2) 6.9図では、N=1000, c=1を固定してnを変化。標本サイズnが大きくなるほど(Nに近付くほど)、ロットの不良率が高いところ(悪いロット)の合格する確率L(p)は低くなる。 図の実際の不良率が20%のとき(悪いロット)、【n=5、c=1】より【n=50,c=1】の方が厳しい検査となる。また 【n=5、c=1】 では高い確率でロットが合格されてしまうが、 【n=50,c=1】 ではロットの合格率は非常に低いことが分かる。 品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第3版
6章 検査・抜取検査 6・15 (3) 6.10図では、N=1000, n=20を固定してcを変化。各ロットの不良率に対して、合格判定個数cが大きくなるほど、検査が厳しくなくなっていくため、ロットの合格する確率L(p)も高くなる。 よって、図のロットの実際の不良率が20%のとき(悪いロット)、【n=20、c=1】より【n=20,c=3】の方が厳しくない検査で、ロットの合格する確率は比較的高くなってしまう。 品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第3版
6章 検査・抜取検査 6・16 (4) 6.11図では、nとcをNに比例にした, 例えばNの10%をn、nの5%をcとした比例抜取という検査でNを変化させていく。ロットのサイズが大きいほど、実際のロットの不良率が低い(良いロット)ところのロットの合格率は高く、逆に実際のロットの不良率の高い(悪いロット)のロットの合格率は低く、安全な抜取検査ができる。 品質管理テキスト、坂本碩也著、理工学社 第3版
6章 検査・抜取検査 6・17 抜取形式: 1)一回抜取検査:ロットから標本を1回だけ抜き取り、その試験結果によりロットを合格・不合格する基本的な検査方法である。 例:ロットの1000個の中から、標本を80個抜き取って、その中に不良品が3個以下であればロットは合格とし、不良率が4個以上ならば不合格とする。 2)二回抜取検査:指定された判定個数cにより、第1回目の標本でロットの合格・不合格・検査続行の3つの判定がある。もし検査続行の場合、第2回目の標本を抜き取り、第2回目の判定個数による判定結果と、第1回目との結果を合計した成績で判定する。例:ロットの大きさ1000個の中から第1回目に50個の標本を無作為に(ランダムに)抜き取って試験し、不良品が1個以下であれば合格、4個以上であれば不合格、2から3個あれば、さらに、第2回目として50個の標本を抜き取って試験し、第1から第2回目の標本を合計した100個の中で、不良品が4個以下であれば合格、5個以上であれば不合格とする。
6章 検査・抜取検査 6・18 3)多回抜取検査:毎回定められた大きさの標本を試験し、各回までの調べた成績を一定の基準と比較して合格・不合格・検査続行のいずれかの判定を行いながら、ある一定回数までに合格・不合格を判定する形式である。例:6回までの抜取検査。 検査単位の検査費用が高い場合に、検査個数減らす事ができる。
6章 検査・抜取検査 6・19 4)逐次抜取検査: ロットから1個づつ(各個逐次抜取検査)または一定の個数づつ(群逐次抜取検査)の標本を抜き取って試験し、そのつど、それまでの集計成績をロットの判定基準と比較することによって、合格・不合格・検査続行の判定をする形式である。 群逐次抜取検査で、標本の抜取回数を限定すれば、多回抜取検査になる。
6章 検査・抜取検査 6・20 抜取形式の決め方:
6章 検査・抜取検査 6・21 計数基準型一回抜取検査: 手順1 品質基準を決める。 (検査単位の良・不良の判定基準) 手順2p0とp1を決める。 生産者(品質を渡す側)と消費者 (受け取る側)が合議して、生産能力、経済事情、要求品質、検査費用・労力・時間などを考え合わせ、ロットの不良率p0とp1を決める。一般に生産者危険率(良い製品を悪いと判定する確率)α=0.05、消費者危険率(悪い製品を良いと判定する確率)β=0.10とする⇒L(p0)=1-0.05=0.95, L(p1)=0.10。 手順3 ロットを形成する。同一条件で生産されたロットを検査ロットとする。ロットが大きすぎる場合は小ロットに区切って検査ロットとしても良い。ここからロットサイズNが決定。 1 0.05 0.95 ロットの合格率 0.10 p0 p1 ロットの不良率
6章 検査・抜取検査 6・22 手順4po,p1,α,βから抜取検査方式【標本のサイズn、合格判定個数c】を求める。 表6.5を用いて、p0とp1の値から、p0を含む行とp1を含む列をクロスして[n,c]を求める。もし矢印が記載している場合は矢印に沿って出た[n,c]を求める。もし、*印の場合はp0,p1の比率を計算して、表6.6から[n,c]を求める。ここでN<nの場合、全数検索する。 求まったn,cとロットサイズNでOC曲線が求まる。ここから、再度p0とp1を検討して修正し、n,cを求め直す。 OC曲線、検査費用、経済的事情などを検討した結果、必要であればp0,p1の値を修正する。
6章 検査・抜取検査 6・24 手順5 抜取検査方式【n,c】に沿って、無作為に標本を抽出し、品質基準に沿って、標本を調べ、ロットの合格・不合格を判定する。 手順6 あらかじめ決められた約束に従ってロットを処置する。 6.7 計量抜取検査 計量抜取検査では、品質特性値が正規分布に従っていることを仮定している。正規分布に従っていない場合は、特性値xをlog(x), xの平方根、1/(xの平方根)などの変数変換をして、正規化する。 計数抜取検査で良・不良と判定するよりも、計量抜取検査で測定値や容量の大小で判断したほうが、計量の情報から小さな標本でもロットの合格・不合格の的確な判定をすることができる。 またJISの計量抜取検査では、ロットの標準偏差(ばらつきの尺度)σが既知の場合と未知の場合に分けて既定している。また、ロットの平均を保証する場合とロットの不良率を保証する場合がある。
6章 検査・抜取検査 6・25 (1)標準偏差σが既知で、ロットの平均を保証する場合: ロットの特性値の実際の平均をmとする。標本の平均を とする。 あらかじめ生産者(渡す側)としてなるべく合格させたいロットの平均の限界をm0(一般に生産者危険率α=0.05に基づく)と、消費者(受け取る側)としてなるべく不合格としたいロットの平均の限界をm1(消費者危険率β=0.10に基づく)を決めておく。これにより抜取方式【標本サイズn, 係数G0】を求める。 ①特性値が低い方が好ましい場合(例えば、鋼板の硬度):
6章 検査・抜取検査 6・26 ②特性値が高い方が好ましい場合(例えば、鋼板の引張り強さ):
6章 検査・抜取検査 6・27 (2)標準偏差σが既知で、ロットの不良率を保証する場合: 特性値に対して規格値(上限規格値、下限規格値)が与えられた場合、あらかじめ生産者(渡す側)としてなるべく合格させたいロットの不良率の上限をp0(一般に生産者危険率α=0.05に基づく)と、消費者(受け取る側)としてなるべく不合格としたいロットの不良率の下限をp1(消費者危険率β=0.10に基づく)を決めておく。これにより抜取方式【n,係数k】を求める。 ①上限規格値SUが与えられた場合:
6章 検査・抜取検査 6・28 ②下限規格値SLが与えられた場合:
6章 検査・抜取検査 6・29 ここでα=0.05、β=0.10
6章 検査・抜取検査 6・30 (2)標準偏差σが未知で、ロットの不良率を保証する場合: ロットの標準偏差が未知の場合は標本の標準偏差で推定することになる。また生産能力、経済的事情、品質に対する必要な要求、検査費用・労力・時間からp0、p1、α、β。 ①上限規格値SUが与えられた場合: ②下限規格値SUが与えられた場合: 抜取方式【n,k】の求め方:表6.10を参照。
6章 検査・抜取検査 6・31 表6.10
6章 検査・抜取検査 6・32 例1:高マンガン鋼の鋳造品は適度の熱処理をして粘り強さを持たせるが、あまり硬すぎるともろさが残る。鋳造品の硬さがブリネル硬さ220(HB)以下のロットを通し、224(HB)以上なら不合格とするような抜取検査方式nと上限合格値を求める。 この場合、ロットの標準偏差はσ=4、α=0.05、β=0.10とする。
6章 検査・抜取検査 6・33 例2:ある金属板の厚さの下限規格値が2.8mmと与えられた時、厚さ2.8mm未満のものが1%以下のロットは合格とし、それが8%以上のロットは不合格としたい。この場合、厚さの値はほぼ正規分布をなすものとする。 手順1:SL=2.8mm⇒X>=2.8の場合合格、X<2.8の場合不合格。 手順2:p0=1%、p1=8% ⇒ Pr(X<SL|m0)=p0,Pr(X<SL|m1)=p1 手順3α=0.05、 β=0.10 ⇒ L(p0)=1-α,L(p1)=βを満たす抜取方式を求める。 ⇒表6.10のp0=1%の行、p1=8%の列からn=28, k=1.83。 手順4:n=28の標本を抽出し、標本平均と標本の標準偏差を計算し
6章 検査・抜取検査 6・34 6.8 計量抜取検査でのOC曲線: 図の横軸はロットの平均m、縦軸はロットの合格する確率L(m)。 (1)ロットの平均を保証する場合、特性値が低い方が好ましい場合: 正規分布からロットの平均による、そのロットの合格率を求める。 特性の高い方が好ましい場合:
6章 検査・抜取検査 6・35 (1)ロットの不良率を保証、上限規格値が与えられている場合: 下限規格値が与えられている場合は省略。