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閉弦の場の理論による 動的 D-brane 系の記述. 東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター 小林 晋平. 早稲田大セミナー 2004 年 6 月 14 日. 目次. 導入と動機 弦理論とは ( HIKKO 型)閉弦の場の理論 マターカレントが入った閉弦の場の理論 結果とまとめ 今後の展望. 1.導入と動機. 量子重力・量子宇宙論における問題の解決 宇宙の初期特異点 プレビッグバン模型、 ekpyrotic 宇宙、・・・ ブラックホール蒸発の最終段階 バックリアクション入りのホーキング輻射 (統一理論の完成)
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閉弦の場の理論による動的D-brane系の記述 東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター 小林 晋平 早稲田大セミナー 2004年6月14日
目次 • 導入と動機 • 弦理論とは • (HIKKO型)閉弦の場の理論 • マターカレントが入った閉弦の場の理論 • 結果とまとめ • 今後の展望
1.導入と動機 • 量子重力・量子宇宙論における問題の解決 • 宇宙の初期特異点プレビッグバン模型、ekpyrotic宇宙、・・・ • ブラックホール蒸発の最終段階バックリアクション入りのホーキング輻射 • (統一理論の完成) 超弦理論を用いてこれらの問題に取り組む動的・不安定なD-brane系の解析が鍵
(超)弦理論とは? • 弦というひも状の1次元物体が基本構成要素cf.) 量子力学/場の理論の点粒子的描像 • 開弦(open string)と閉弦(closed string)の2種 • 弦の振動状態で各種粒子を表現
点粒子 閉弦 開弦 弦の長さのスケール (string scale = Planck scale(?) ) 遠方(低エネルギー)から観測すれば、 弦も点粒子に見える
超弦理論の面白さ • 重力まで含めた統一理論の最有力候補 • 4次元以上の高次元時空の存在を示唆 • ボゾン的弦理論では26次元超弦理論では10次元 • D-braneのような高次元オブジェクトを内包 • 時空の非可換性を示唆 • 相対論的にも興味深い
超弦理論の問題点 • 摂動論しかわかっていない • 摂動的には無数の弦理論を定式化可能 • どれが「真の」理論なのかわからない • 弦同士の相互作用の仕方がわからない • 不安定な系・時間依存する系が扱えない • 低エネルギー有効理論(SUGRA)で近似 • 非線形シグマ模型で近似
IIB型 超弦理論 I 型 超弦理論 IIA型 超弦理論 M理論 ? SO(32) ヘテロ型 超弦理論 E8×E8 ヘテロ型 超弦理論
重力子(点粒子) アインシュタイン-ヒルベルト作用 アインシュタイン方程式 一般座標変換不変性等価原理 弦 (非摂動的弦理論の作用) (非摂動的弦理論の運動方程式) ?? 重力理論と弦理論
D-braneの性質(Polchinski, ’94) 弦理論の非摂動的効果を表す物体 • 弦理論のソリトン(古典解)、(mass)~1/g • RRチャージを持つ • 開弦の端点がくっつく 「領域」 • 空間p次元に広がっているとき、Dp-brane IIA型超弦理論・・・D(2p)-braneが安定に存在IIB型超弦理論・・・D(2p+1)-braneが安定に存在
開弦が励起 端点がくっつく 閉弦を放出 閉弦のソース D-brane
D-braneからわかったこと • 各種摂動的超弦理論の間に双対性 • AdS/CFT対応 • D-brane上のゲージ場とD-brane周りの時空に対応関係がある ただし、今までによくわかっているのは全て BPS状態の(安定で静的な)D-brane に限られている
IIB型 超弦理論 I 型 超弦理論 IIA型 超弦理論 M理論 ? SO(32) ヘテロ型 超弦理論 E8×E8 ヘテロ型 超弦理論 T双対性 コンパクト化 S双対性 コンパクト化 T双対性
D-braneと重力系 • D-brane系は重力系への応用として面白い • D3-braneは4次元時空 (空間3次元) • 我々の宇宙?cf.) RS model • D-braneとblack p-brane • D-braneを低エネルギー近似(SUGRA) →ブラックホールによく似た古典解 →D-braneでブラックホールが記述出来る?
動的なD-brane系 • 重力系はほとんどが動的 • これまで理解されているのは安定で静的なD-brane系のみしかし、動的なD-brane系や不安定なD-brane系も存在 →重力系へ応用出来る
動的なD-brane系 • 動的なD-brane系その1 • 非BPS状態D-brane (チャージのないD-brane) 閉弦を放出 D-braneが崩壊 真空に遷移(?)
動的なD-brane系 • 動的なD-brane系その2 • D/D-brane系互いに逆符号のチャージをもつ2枚のD-brane ¯ 互いに引き合う 消滅(?) 低次元D-braneへ(?)
ここまでのまとめ • 重力系で、高エネルギー領域を解析するには弦理論が必要 • 弦理論は未完成 (摂動論のみ完成、定式化の仕方は無数) • D-braneは弦理論の重要な構成要素 • 動的D-brane系の研究は弦理論の非摂動的効果や相互作用の性質を明らかにすることにつながる • 動的なD-braneは重力系に応用がききそう 動的なD-brane系の記述・解析が重要
D-braneの崩壊過程や生成などのダイナミクスを記述することでこれらの問題を解明するD-braneの崩壊過程や生成などのダイナミクスを記述することでこれらの問題を解明する 閉弦の場の理論 (Closed String Field Theory) を用いる 従来の(超)弦理論での 解析を超える目的のために・・・
なぜならば・・・ • 相互作用が本質的な役割を果たすので、弦の場の理論が必要になる(弦理論は弦の一体系、on-shellしか扱えない) • 宇宙論、BHなどとの関連を見越し、重力子を含む閉弦を考える • 超重力理論に含まれていない、弦のmassive modeの効果も取り入れたい(低エネルギーに限らない解析を試みる)
戦術 • 閉弦の場の理論 • HIKKO型 (Hata,Itoh,Kugo,Kunitomo & Ogawa, ’86) • Witten型 など • 相互作用が単純なことからHIKKO型を選ぶ議論は型に依らないようにする • D-braneを一般化して、マターカレントの形で閉弦の場の理論に付け加える
本研究のまとめと結果 • 動的なD-braneのような一般的なマターカレントを、閉弦の場の理論で扱うための形式を構築 • 理論の対称性から、カレントが従うべき拘束条件を導いた • その拘束条件が低エネルギー理論における「エネルギー・運動量テンソルの共変保存則」に対応することを発見
2.弦理論とは • 作用・対称性・臨界次元・場 • Polyakov作用・共形対称性・26次元・X,b,c • BRST量子化 • BRST不変性から物理的状態が決まる • D-brane • 弦以外にも特徴的な配位がある
2.弦理論とは (1)~ 作用・対称性・場 ~ 1次元に広がった「ひも」状物体の古典的・量子論的運動を考えたい (背景時空は平坦)cf.) 自由な相対論的点粒子の作用ds:微小な世界線 →粒子の世界線の長さが極値をとるように 運動が決まる
X0 X0 σ = 0 σ = π τ = 2 τ = 2 τ = 1 τ = 1 τ = 0 τ = 0 τ = -1 τ = -1 Xi Xi 点粒子の 世界線 開いた弦の 世界面
自由な相対論的「ひも」(弦)の作用 • D次元の平坦な時空中を運動する弦 • 点粒子との類推→弦の世界「面」が作用になる→南部・後藤作用 →これが極小をとるように運動が決まる
Polyakov作用(ゲージ固定後) • ゲージ固定することで、(b,c)-ghost が入るこれは共形対称性を持つ運動方程式を解き、解をモード展開→質量などの各スペクトルを調べる
Polyakov 作用の特徴 • 一般座標変換不変性時空の各点で座標変換可能 • Weyl変換不変性時空の各点でスケール変換可能 上記2つを使ってゲージ固定した後も共形不変性がある →β関数が0、超重力理論へ
モード展開 ここで、
弦理論に現れる状態 • 第1量子化 重心の量子化 振動モードの量子化
弦の運動を表すのはPolyakov作用 • 共形対称性をもつ→β関数が0 これを再現するのが超重力理論 • 運動方程式を解く→解をモード展開して量子化→弦の状態を決めていく
2.弦理論とは(2) ~BRST量子化~ • ゲージ固定した後の作用には、ゲージ不変性の名残りのBRST不変性があるBRST変換 のもとで作用が不変
BRSTカレントとチャージ • BRSTカレント • BRSTチャージ
BRSTチャージの性質 • 冪零性BRSTチャージQBは を満たすただし、26次元のときのみ(超弦理論では10次元) • 物理的状態条件物理的状態はBRST不変
物理的状態(閉弦の場合) BRST不変性を満たす閉弦の物理的状態の例 • 基底状態 (tachyon state) • 第1励起状態 (massless state)
閉弦と重力子 閉弦のmassless mode→時空中では2階のテンソル→重力子・B場・ディラトンに分解できる 重力子 B場 ディラトン
BRST不変であることから、弦の物理的状態が決まるBRST不変であることから、弦の物理的状態が決まる • 閉弦のmassless modeには、重力を媒介する粒子(重力子:graviton)が含まれている • 開弦のmassless modeはゲージ場
2.弦理論とは(3) ~D-brane~ • 開弦 (open string) の端点がくっつく領域 閉弦 (closed string) のソース←これら2つの読み替えは共形対称性が 保証 • 弦理論のソリトン(古典解)、(mass)~1/g • 空間p次元に広がっているとき、Dp-brane • 開弦・閉弦と並ぶ、弦理論の代表的配位
X0 Xi Xα 開弦での見方~D-brane~ D-brane 開弦
閉弦 開弦 τ σ σ τ 境界状態 D-brane 閉弦のtree グラフ 開弦の1-loop グラフ
閉弦での見方 ~境界状態~ 閉弦 σ τ 境界状態
(境界状態の具体的な形) Tp : D-brane(境界状態)の張力 Ghost number は 3
2章のまとめ • 平坦なD次元時空中を運動する自由な弦 • 南部・後藤作用 or Polyakov作用 • 弦が掃く世界面上の理論は、共形対称性を持つD個のスカラー場の理論 • 26次元(超弦理論なら10次元)のときのみ量子異常がない • このときBRSTチャージQが冪零
2章のまとめ (つづき) • 物理的状態はBRST不変 Q|φ>=0 • 閉弦のmassless mode には重力子(graviton)やディラトン(dilaton)が入る • D-braneと呼ばれる物体が存在 • D-braneは弦と並ぶ代表的配位 • 開弦の端点がくっつく領域閉弦のソース(境界状態) • 重力子などを放出、物理的オブジェクト • 閉弦で見たとき、境界状態という
3.HIKKO型 閉弦の場の理論 • 記法、および弦理論と弦の場の理論の違い • HIKKO型閉弦の場の理論の作用 • HIKKO型閉弦の場の理論のBRST対称性
3.HIKKO型閉弦の場の理論 (1)~記法~ モード展開
交換子 • Ghost 0-mode
量子力学と場の理論の関係~点粒子の場合~ • 第1量子化 • 古典場の理論第1量子化で現れる全ての状態を足し上げる
量子力学と場の理論の関係~弦理論の場合~ • 第1量子化 重心の量子化 振動モードの量子化