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GPS/GNSS シンポジウム 2007 東京海洋大学 Nov. 21, 2007. MSAS の性能向上. 電子航法研究所 坂井 丈泰. Introduction. MSAS ( 運輸多目的衛星用衛星航法補強システム )は、実用を開始: MTSAT-1R/2 (ひまわり 6/7 号)の2機体制。 インテグリティ(完全性)を備えた衛星航法システム。 MSAS のアベイラビリティ(有効性): NPA (非精密進入)航法モードまでは 常時 100% 利用可能 。 APV (垂直誘導付進入)航法モードでは、アベイラビリティの向上が課題。
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GPS/GNSSシンポジウム2007 東京海洋大学 Nov. 21, 2007 MSASの性能向上 電子航法研究所 坂井 丈泰
Introduction • MSAS(運輸多目的衛星用衛星航法補強システム)は、実用を開始: • MTSAT-1R/2(ひまわり6/7号)の2機体制。 • インテグリティ(完全性)を備えた衛星航法システム。 • MSASのアベイラビリティ(有効性): • NPA(非精密進入)航法モードまでは常時100%利用可能。 • APV(垂直誘導付進入)航法モードでは、アベイラビリティの向上が課題。 • 電離層遅延補正方式の改良による性能向上: • APVモードのアベイラビリティを阻害している最大の要因は電離層。 • アベイラビリティを向上するため、電離層遅延補正方式の改良を検討した。 • シミュレーションによる評価の結果、モニタ局を数局追加したうえで改良方式を採用することにより、南西諸島方面も含めて日本全域でAPVモードをサービス可能との見通しを得た。
測位精度の例 水平 0.50m RMS 垂直 0.73m RMS GPSのみ GPSのみ MSAS MSAS 南北 上下 東西 東西 GEONET 940058(高山) 05/11/14-16 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal
まれに起きる 大きな誤差 保護 レベル 測位精度 保護レベル • 測位精度:精度を代表する指標: • 95%値(95%信頼限界)がよく使われる。 • 「測位誤差の95%はこの範囲内に入る」の意味。 • 残りの5%については、保証はない(とんでも • ない誤差があるかもしれない)。 • 安全上は残りの5%が重要: • これを問題とするのが完全性(インテグリティ) • という性能指標。 • 99.99999%信頼限界(危険率5%→10-7 )を保護レベルという。測位誤差の99.99999%はこの範囲内に入るという数値(実質的には誤差の上限とみなしてよい)。 • 故障や伝搬異常により、まれに大きな誤差が生じることがあるため、保護レベルは大きめの値となる。過去に観測した異常値はすべて考慮。 • 航空航法用途では、誤差の最大値として保護レベルを用いる(95%測位精度では議論しない。残りの5%が安全上問題だから)。
保護レベルと測位誤差 GEONET 93011 Tokyo 06/10/17 00:00-24:00 PRN 129 (MTSAT-1R) Test Signal APV-I mode HAL = 40m VAL = 50m All-in-view Receivers
垂直保護レベルの分布例 MSAS Broadcast 06/10/17 00:00-24:00 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal Contour plot for: Average VPL 垂直保護レベル (VPL)の平均値
アベイラビリティ • 定義:「システムが利用可能な時間割合」 • 航法システムが所定の性能を発揮している時間割合。 • 場所や時間帯により異なる。 • 航法モードによっても異なる。たとえば、APV航法モードでは確実な測位が求められる(警報限界が小さい)が、NPA航法モードでは必ずしもそうではなく、垂直方向については要求そのものがない。 • 航法モードにより、99~99.999%のアベイラビリティが求められている。 • MSASのアベイラビリティ: • 「保護レベルが警報限界(アラートリミット)より小さな」時間割合。 • なぜなら、MSAS受信機は、計算して求めた保護レベルが警報限界を超えた場合、その警報限界に対応する航法モードを使用不可とするから。 • 警報限界は航法モードによりあらかじめ決められている:NPAモード=556m(水平のみ)、APV-Iモード=40m(水平)/50m(垂直)。 • MSASが利用可能かどうかは、測位精度とは関係がない。保護レベルで決まる。
アベイラビリティ分布例(NPA) MSAS Broadcast 06/10/17 00:00-24:00 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal Contour plot for: NPA Availability HAL = 556m VAL = N/A 全域で100%利用可能 NPAモードを 利用可能な時間割合(%)
アベイラビリティ分布例(APV-I) MSAS Broadcast 06/10/17 00:00-24:00 PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal Contour plot for: APV-I Availability HAL = 40m VAL = 50m APV-Iモードを 利用可能な時間割合(%)
アベイラビリティの性質 • MSASが利用可能かどうかは、保護レベルで決まる: • 保護レベル:ユーザ測位誤差の最大値の見積り。 • 測位精度がどんなに良くても、保護レベルが警報限界以下でなければMSASは利用可能ではない(測位誤差は未知だから)。 • アベイラビリティを改善する手段は、安全性を保ちながら保護レベルを小さくする以外にはない。 • MSASのアベイラビリティを向上するには: • 測位精度は十分に良いが、保護レベルが大きめとなる傾向がある。 • 全体的な測位精度の向上を図る必要はない。 • 保護レベルが大きめになる原因である、「大きな誤差を生じる可能性(脅威)」を抑制する必要がある。 • 最大の問題は、電離層伝搬遅延の推定の難しさにある。推定が不完全なため、保護レベルを大きめにせざるを得ない。
垂直保護レベルの内訳 垂直保護レベル 電離層の成分 (5.33 sUIRE) クロック+軌道 (5.33 sflt) MSAS Broadcast 06/10/17 00:00-12:00 3011 Tokyo PRN129 (MTSAT-1R) Test Signal • MSASの垂直保護レベルは、電離層による項が支配的。
GIVE値の分布 GIVEI sGIVE 0 0.092 m 1 0.182 m : : 10 1.094 m 11 1.368 m 12 1.824 m 13 4.559 m 14 13.68 m 15 Not Monitored GIVEI = 15 Not Monitored GIVEI = 14 最大GIVE 割合 GIVEI • GIVE:電離層遅延量の不確実性を表すインテグリティ情報。 • MSASが放送している全IGPにおけるGIVE値の分布(05/11/14-16)。 • MSASでは、GIVEI=0~11が使われていない:不確実性が大きい。
不確実性の例:電離層の赤道異常 電離層 遅延マップ (NASA/JPL) • 磁気赤道の南北にある、電子密度が高い領域。 • 常に存在するが、密度や大きさの変化を予測することは難しい。 • このため、南西諸島方面ではGIVE値を大きくせざるを得ず、保護レベルも大きくなる。
電離層遅延補正方式:プレーナフィット • Planar Fit:米国WAASのために考案された方式。 • MSASも同じ方式を使用(パラメータが若干異なる)。 • 平面モデルで電離層を近似し、そのモデルパラメータを最小二乗法により推定する。 • 近似誤差が正規分布に従うとの仮定があるため、磁気嵐モニタが必要:正規性のチェック。 • 推定パラメータの共分散行列からインテグリティ情報を生成する。
現行の電離層遅延補正方式 プレーナフィットによる遅延量推定 1次平面近似で推定 磁気嵐モニタによるチェック カイ2乗検定 平面近似は適当? 適当でないとはいえない (磁気嵐ではなさそう) 適当でない (磁気嵐かもしれない) 共分散行列からGIVE値を計算 GIVEを最大値とする 最大値の代わりに 何らかの根拠のある値を セットできないか? プレーナフィットの結果を補正値とする
電離層遅延補正方式の変更 • 保護レベルの大部分は電離層に起因: • 保護レベルの抑制には電離層補正方式の改良が不可欠。 • 磁気嵐モニタの挙動に着目: • 磁気嵐モニタ:磁気嵐の可能性がある場合、GIVEに最大値をセット。実際は、1次近似が適当かどうかのチェックをしている。 • 日本付近では、赤道異常などの影響により、(磁気嵐ではなくても)磁気嵐と判定される(False Alarm)ことが多い。 • 保護レベルが大きくなる原因は、磁気嵐モニタのFalse Alarmにある。 • 修正アルゴリズムの検討: • 磁気嵐とされた場合に、GIVEに最大値をセットする代わりに何かできないか。 • 通常は現行と同じプレーナフィットを行い、磁気嵐モニタが嵐と判定した(1次近似が適当とはいえない)場合は、代替アルゴリズムを使うことを考える。 • 代替アルゴリズムとしてゼロ次フィットを採用:適応ゼロ次フィット。
代替アルゴリズム:ゼロ次フィット 平面近似 (未知数=3個) Rmax ゼロ次フィット (未知数=1個) 電離層遅延量 IGPにおける垂直遅延量の推定値 • 磁気嵐モニタが磁気嵐状態と判定した場合:平面モデル(1次近似)は現実の電離層遅延量分布に当てはまらない。 • このような場合、1次に代えてゼロ次の近似が有効な可能性がある: • 次数を落とした、よりロバスト(安定)な推定。 • 推定すべき未知パラメータは1個ですむ(重み付き平均と等価)。 • 磁気嵐モニタが磁気嵐状態(1次近似が適当でない状態)と判定したか、あるいは観測データ数が不足する場合(プレーナフィットが実行できない場合)に適用。
修正版の電離層遅延補正方式 プレーナフィットによる遅延量推定 1次平面近似で推定 磁気嵐モニタによるチェック カイ2乗検定 平面近似は適当? 適当でないとはいえない (磁気嵐ではなさそう) 適当でない (磁気嵐かもしれない) ゼロ次フィットによる遅延量推定 共分散行列からGIVE値を計算 共分散行列からGIVE値を計算 プレーナフィットの結果を補正値とする ゼロ次フィットの結果を補正値とする
保護レベルの改善 APV-I APV-I APV-I APV-I 現行アルゴリズム 改良アルゴリズム • プロテクションレベルを約1/3に抑制:アベイラビリティを改善。 • ユーザ測位誤差は依然として十分に余裕をもってバウンドされている。
GIVE値の低減 GIVEI = 14 最大GIVE 現行アルゴリズム 修正アルゴリズム GIVEI = 15 Not Monitored • 現行アルゴリズムでは、半数のIGPについて最大GIVE値を設定(GIVEI=14)。 • 修正アルゴリズムはこれをGIVEI=13に削減している。
現行MSASのシミュレーション APV-Iモードアベイラビリティの計算例 4局を追加した場合 (稚内・根室・宮古島・石垣島) 現行の地上局配置(国内6局) モニタ局を追加しても、南方では効果がない。
WAAS新アルゴリズムの評価(参考) APV-Iモードアベイラビリティの計算例 4局を追加した場合 (稚内・根室・宮古島・石垣島) 現行の地上局配置(国内6局) 4局の追加により、那覇付近までは常時利用可能(アベイラビリティ100%)となる。
適応ゼロ次フィットの評価 APV-Iモードアベイラビリティの計算例 4局を追加した場合 (稚内・根室・宮古島・石垣島) 現行の地上局配置(国内6局) さらに、南西諸島全域で常時利用可能(アベイラビリティ100%)となる。
Conclusion • MSAS補強情報の特性を調査: • 測位精度は良好。 • NPA(非精密進入)航法モードまではアベイラビリティ100%を達成。 • 性能向上の検討: • APV(垂直誘導付進入)航法モードではアベイラビリティが十分でない。 • 電離層遅延補正方式の変更により保護レベルを抑制する必要がある。 • 適応ゼロ次フィットを提案:南西諸島も含めて日本全域でAPV-I航法モードのアベイラビリティを100%とできる見通しを得た。 • 今後の課題: • 改良方式について、多くの磁気嵐の際のデータを用いて検証する。 • さらに有効な方式の検討。