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ー書籍紹介ー. エンデの警鐘 Ende ’ s Warning to the Future 「地域通貨の希望と銀行の未来」 坂本龍一+川邑厚徳 編著. 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梶原晋吾. 編著者紹介. ■ 坂本龍一 : 1952年東京都生まれ。東京芸術大学作曲科をへて同大学院音響研究科修士課程を修了。音楽家であるが、教養人として非常に幅広い読書家である。 ■ 河邑厚徳 : 1948年生まれ。71年東京大学法学部卒業後、 NHK 入局。主に教養番組でドキュメンタリー担当。現在、 NHK 放送総局エグゼティブプロデューサー。.
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ー書籍紹介ー エンデの警鐘Ende’s Warning to the Future「地域通貨の希望と銀行の未来」坂本龍一+川邑厚徳 編著 北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梶原晋吾
編著者紹介 ■坂本龍一:1952年東京都生まれ。東京芸術大学作曲科をへて同大学院音響研究科修士課程を修了。音楽家であるが、教養人として非常に幅広い読書家である。 ■河邑厚徳:1948年生まれ。71年東京大学法学部卒業後、NHK入局。主に教養番組でドキュメンタリー担当。現在、NHK放送総局エグゼティブプロデューサー。
プロローグ(対話:坂本×河邑)―エンデの遺言をどう読み解くかープロローグ(対話:坂本×河邑)―エンデの遺言をどう読み解くかー
『エンデの遺言』 1994年にエンデが、NHKに提案した新しい番組の企画で、現代の貨幣システムを扱ったもの 環境・貧困・戦争・精神の荒廃など、現代のさまざまな問題にお金の問題が絡んでいる 「そこで私が考えるのは、もう一度貨幣を実際になされた仕事や物の実態に対応する価値として位置づけるべきだということです。そのためには現在の貨幣システムの何が問題で何を変えなければならないかを皆が真剣に考えなければならないでしょう。人間がこの惑星上で今後も生存できるかどうかを決める決定的な問いだと私は思っています。重要なポイントはたとえばパン屋でパンを買う購入代金としてのお金と株式取引所で扱われる資本としてのお金は2つの全く異なった種類のお金であるという認識です」(エンデ)
『エンデの遺言』の衝撃 「あの『エンデの遺言』は衝撃的で、今、僕たちが何の疑いもなく使っているお金というもの、あるいは僕たちの生活の中にある経済原理に対して、疑いの目というか、もう一度見てみようと思いました。」(坂本)
キーワード • 『モモ』 • 『ネバーエンディングストーリー』 • エコノミーとエコロジー • 身体ー環境ー未来世代
エコロジーとエコノミー ―破滅に至る二つの道エコロジーとエコノミー ―破滅に至る二つの道 現代は、環境の豊かさと経済的な豊かさを両立させるのが非常に困難な時代 例.地球温暖化への取り組み 現行の金融システムがその病原の核 人類の選択肢は、エコノミーの破局かエコロジーの破局の二者択一
第三の道へ―経済学のパラダイムを変える 玉野井芳郎教授:経済学200年のパラダイムの見直しを提唱。自然と人間のための社会/経済システムを目指す ジョーン・ロビンソン:新古典派経済学を痛烈に批判した女性闘士。人間活動はすべて、歴史的時間の中で行われるということを常に念頭に置き、経済学の危機を克服する道を時間と切り離せない人間存在に求める
従来の生産概念 エントロピー論による生産概念 低いエントロピー資源 原料資源 原料資源 生産過程 生産過程 商品 商品 廃物・廃熱 自然科学法則を経済学に応用すると 新しい経済学に熱力学の第二法則「エントロピー増大の法則」を組み込む
天体の運行時間 人生の時間 経済学は時間をどう見るのか 物理学をモデルに発達した経済学は均質で無限の広がりを持つニュートン的時空の産物 経済学がとらえる時間の概念は限定された狭いもの
未来を割り引く金融の時間 例.あるプロジェクトに今日1000ドルを投資すれば、その後15年間にわたって、年初めの日に100ドルずつ利益がかえってくるとする。このプロジェクトのキャッシュフローはどうなるか? 最初の年はマイナス1000ドルである。しかし1年後の収支である100ドルは、プロジェクトを通して利子が10%と仮定すると、現在価値はたった91ドル。(金融アナリストは今日91ドルを銀行に預金すれば、確実に10%の利子を稼ぎ1年後には100ドルを得ることができることを知っている)。2年目では83ドル。15年目の100ドルならばわずか24ドル 利子は現在の100ドルと10年後の100ドルは同じではないという考えを生み出す 社会全体としては長期的思考より短期的見返りを優先する金融システムの圧力が生み出される
アマルティア・センについて ・アマルティア・セン:1998年にノーベル経済学賞を受賞した厚生経済学者 ・センの論文は、「利己的な行動は社会の善を達成しうるのか」という議論を検証 したもの ・彼は自己愛でない行動を「共感」と「コミットメント」の二つの概念で定義 他人の苦痛を知ったことによってあなた自身も具合が悪くなる→「共感」 他人の苦悩を知ったことによってあなたの個人的な境遇が悪化したとは感じられないけれども、しかしあなたは他人が苦しむのを不正なことと考え、それをやめさせるために何かをする用意がある→「コミットメント」 「共感」と「コミットメント」を峻別した理由 「共感に基づいた行動は、ある重要な意味で利己主義的だと論ずることができる。というのも人は他人の喜びを自分でも嬉しいと思い、他人の苦痛に自ら苦痛を感じるからであり、その人自身の効用の追及が、共感による行為によって促進されうるからである。この意味で、非―利己的なのは、共感に基づく行為であるよりはコミットメントに基づく行為である」
アマルティア・センについて(つづき) 「非共感的な孤立」を克服するために、経済学がモデル化しなかったコミットメントが自己利益のみによって動機づけられた経済学の枠を壊す 共感的な共同体すなわちコミュニティをつくりあげるために地域通貨が注目されている。地域通貨の根本的な思想に通じるものがそこにある 地域通貨は自分が選択する価値や関係性へのかかわりの道具、すなわちコミットメントの具体的方法だと考えられる
お金も商品化した現代 (エンデ) お金自体は何も悪いものではないとして、ただ本来の機能を超えて、お金そのものを商品にしてしまった経済のあり方を批判 お金が金融商品となった背景 国際通貨ドルは、ブレストン・ウッズ体制のもとでは金と交換できる金本位制をとっており、またIMFは固定相場制を維持していたのが、日本や欧州などの先進工業国の経済力が増し、アメリカのドルが流出して過大なドル高を招くようになった。その結果、アメリカはドルの金本位制を放棄し、そして固定相場制も放棄され、現行の為替変動相場制の時代に入った。 お金が商品となる新しい時代が始まった
お金も商品化した現代 カール・ポランニー ・人類学、歴史学、経済学を統合しようとした経済人類学 ・市場で商品化できない領域を、まず労働、土地、お金のそれぞれで論証 ・お金の歴史についても考察 ダホメ王国では、複数のお金が場所や用途で使い分けられていた。一つの市場だけで通用するお金があるのと同時に、外国との交易ではゴールドや奴隷などがお金として使われていた。 単一の通貨を売買から貯蓄、さらには資本や投資などあらゆる目的に使っている現代とは対照的
お金も商品化した現代 人類史的なアプローチで貨幣制度を比較考察すると ・交換も、市場的な売買の形だけではなく、共同体の中での互酬(互いに贈与を繰り返す形の交換)によってコミュニティがつくられ、かつ持続してきた ・共同体の再分配のような形の富の交換が行われ、公平な分配や社会的な扶助 の機能を果たしてきた 生物は、種の多様性やサブシステムをもつことで、気候の変動や災害にあっても絶滅せず子孫を残していく戦略をもつ システムが一つしかなく、それが巨大化した現代の社会は新たな危機に対応できず脆弱 地域に立脚してコミュニティをつくっていくお金である地域通貨の可能性は大となる
経済変革の担い手は? 他者の尊厳を認め対等な立場で支えあい、労働をシェアする友愛の経済の可能性が、エコノミーとエコロジーの破滅を避ける第三の道としてある 新たな国家をつくろうという思想的実験でもあったコミュニズム(共産主義) 国家から脱出して私的なユートピアを目指した自給自足のコミューン(共同体) へ向かう道とは異なる 「消費者共同体」と「生産者共同体」にひとつの可能性
経済変革の担い手は? (つづき) なぜか? ・それらのコミュニティでは友愛が実現できる ・このコミュニティの担い手は、生産者であり消費者である個人 ・経済のパラダイムを変革するのは、政治家でもなく資本家でもなく、 市民であるという新たな光明がそこにある 地域通貨の意義 社会を生命体のような有機組織とみなし、「お金」はその組織を隅々まで循環しながら生命を維持していく血液のようなものだと考えれば、資本に転化しない、利子を生まないお金としては非常に意義が大きい 「生産者共同体」、「消費者共同体」といったコミュニティを支えるシステムとして、 地域通貨は不可欠なツールである
1.日本全国に広がる波紋 お金のあり方を正面から問いかけ、世界の地域通貨の実践を紹介した番組「エンデの遺言」は1999年5月の放送直後から話題となり、多くの視聴者がエンデのメッセージに衝撃を受け、地域通貨の実践に新たな希望と可能性を見出した 番組放送後、日本の各地で地域通貨の実践が相次いで立ち上がった (1999年) ポラン(東京都立川市)、レインボーリング(全国)、ハートマネー安雲野リング(長野県) (2000年) レッツチタ(愛知県知多半島)、クリン(北海道栗山町)、ガル(北海道苫小牧)、ずらあ(長野県駒ヶ根市)、yufu(大分県湯布院町)、八ヶ岳大福帳(山梨県)、COMO(東京都多摩市)、ダニー(長野県飯田市)、モモマネー(大阪府)、WAT清算システム(全国)、ポート(三重県)など
2.仲間通貨から地域通貨へ -北海道苫小牧・ガル2.仲間通貨から地域通貨へ -北海道苫小牧・ガル ・「ガル」は北海道苫小牧市を中心に活動する地域通過で、環境グループ「苫小牧の 自然を守る会」が母体となって、2000年3月に始まった ・ガルでは「ガル帳」と呼ばれる可愛い通帳を使って口座変動方式で取引 ・ガルという名前は「人と人がつながる」に由来し、会員は「ガルフレンド」と呼ばれる ・ガルが始まって1年半、発足当時30人だったガルフレンドは60人ほどになっており、 人と人のコミュニケーションを深めるというガルの当面の目標は達成されている
3.商店街の結束を生む -千葉県・ピーナッツ3.商店街の結束を生む -千葉県・ピーナッツ ・1999年2月に発足した千葉県の地域通貨「ピーナッツ」は、NPO法人千葉まちづく りサポートセンターが運営 ・1P=1円、1時間の労働=1000Pを目安に取引し、その取引額をサービスやモノ を提供した人の通帳にはプラス、提供された人の通帳にはマイナスとして記帳する ・2000年4月、ゆりの木商店街の1軒の商店がピーナッツを導入。開始時の4月の 取引は3件、参加した客は10人未満だった ・たった1軒の店から始まったピーナッツは2001年9月の段階で30名の事業者会 員450名の会員を数える規模となった ・現在、ゆりの木商店会では月一回土曜市を開いており、そこで千葉県野栄町から運 ばれてくる無農薬の有機野菜や自然卵からつくったプリンなどが売られている ピーナッツの特徴・・・商店会を中心に使われ、商業的な効果もあげていること
4.楽しくセーフティネット -大分県湯布院町・yufu(ユフ)4.楽しくセーフティネット -大分県湯布院町・yufu(ユフ) ・現在ユフの会員は70名、そのうち20名が店などを営む事業者 ・ユフは全国資本に店に対する「地元商店ブロック」を形成しようというものではない ・ユフは通帳方式と借用証書方式との併用 ・ユフの目指すものは地域内自給自足 「観光は、地域を本当に自立させる土台にはなり得ない、地元住民の暮らしには関係なく入ってきて去っていくものだから」 「地域通貨が、自分たち自身の中にある、実は元々持っていながら忘れていた人材や能力、特技、道具に光を当てて『いつかどこかで誰かが』でなはく、『今、ここで、私が』という発想で、私たちの本来持っているパワーを取り戻せる気がしたからです」 (ユフの事務局を務める浦田龍次から番組に届いたアンケート回答より)
5.事業者もコミュニティの一員 -滋賀県・おうみ5.事業者もコミュニティの一員 -滋賀県・おうみ ・地域通貨おうみの活動は1999年5月に滋賀県草津市で始まった。同時期に始まっ た千葉県のピーナッツとともに、草分け的存在として日本での地域通貨の実践をリー ドしてきた ・地域通貨イサカアワーズを参考に「草津コミュニティ支援センター」の施設利用権か ら地域通貨「おうみ」となった ・2000年6月、この地域で営業する滋賀京阪タクシーがおうみでのタクシー料金の支払いを受け入れた。つづいて、映画館シネマハウスも映画料金1500円のうち500円分を5おうみで受け取るようになった おうみは法律問題の嵐に見舞われた
5.事業者もコミュニティの一員 -滋賀県・おうみ5.事業者もコミュニティの一員 -滋賀県・おうみ 地域通貨に課税すべきか? ・会員同士の相互扶助の範囲ならば課税の対象のならないが、商取引に用いられて 円と変わらない実態である場合、収入に計上していただくなどの経理処理が必要 ・会員同士のボランティア的な取引について、仮に子供の肩たたきであっても、それ が何百万円相当の収入を上げているとなれば、課税の対象とせざるを得ない <地域通貨の課税について大阪税務局の見解> 事業者もコミュニティの一員 ・事業者コミュニティを支える個人に立ち返り、そこから事業者としての本来の役割を 捉え返すことが大事 ・これまで市場的なところからしか見られることがなかった商店や企業をコミュニティ の中に位置付けなおすことも、地域通貨の大きな役割
6.企業がリードする都市型地域通貨 -東京渋谷・アール6.企業がリードする都市型地域通貨 -東京渋谷・アール シブヤプロジェクト 商店・企業とNPOと個人を結んで、地域通貨を循環させようとするもの。コミュニティウェイと呼ばれ、今、世界で注目されているコミュニティづくりの一つのモデル 現状 2001年12月現在、円貨と交換して発行されたアールは約10万アール、ボランティア活動の報酬として5万6千アール、計16~17万アールが発行され、そのうち約1万8千アールが加盟店で使用されている 今後の課題 個人ベースの地域通貨と違って、都市での地域通貨の実践がある意味で規模が拡大していくことは必然である。その中で、いかに参加者の主体性を引き出し、交換の「質」とでもいうべきものを保ちつづけ、高めていけるかが、アールの今後の課題
7.地域を支える緩やかな信頼ネットワーク -WAT清算システム7.地域を支える緩やかな信頼ネットワーク -WAT清算システム WAT清算システム ゲゼル研究会の森野栄一が創案した、借用証書形式という世界にもあまり例をみないユニークなシステム。ワット券はゲゼル研究会のホームページから誰でもダウンロードして印刷できる。よって、ワット券は正真正銘のただの紙切れにすぎず、何らかの方法でワット券を手に入れさえすれば、いつでもどこでも誰とでも、たとえ遠く離れていても簡単に地域通貨での交換ができる 使い方 サービスやモノの提供を受けてその代価を支払いたいと思う者が「振出人」となってワット券にサインをし、「貸付人」である相手の名前と額面を記入して手渡すだけである ワットはいわば約束手形のようなもので、しかも支払い期日がない
実例.えどがわっと 2002年7月、ワットの精神とシステムを実現する「えどがわっと」が立ち上がる。「えどがわっと」はNPO法人「足元から地球温暖化を考える市民ネット・えどがわ(足温ネット)」が発行するグリーン電力証書につけられた地域通貨である 自然エネルギーと地域通貨 ・今、自然エネルギーの発電所設立のために市民が出資する市民共同発電所のプ ロジェクトが全国で立ち上がっている ・地域通貨がもつひとつの意義に、全国に基盤を置く大企業や国境を越えて利益を 追求する多国籍企業へと流れていくお金を再び地域へ取り戻して循環させるという、 反中央集権、反グローバリズムの方向性がある ・自然エネルギーへのシフトは地域の資源の再発見であり、自立的な地域経済や 分散型の社会を形成する基盤といえる 地域エネルギーでもある自然エネルギーと地域通貨が結びつくのはある意味で必然なことと言える
1.東西統一の狭間で -ドイツの交換リング・デーマーク1.東西統一の狭間で -ドイツの交換リング・デーマーク デーマーク 旧東独地域に属するハレ市で実践せれている通帳だけでサービスやモノを交換できる地域通貨 なぜ、デーマークは停止したのか? ・青年施設の改装という大きなプロジェクトが終了し、デーマーク本来の役割を終えた ・デーマークを稼ぐ時間自体がなかった ・管理者を失った ・事業者の参加が得られなかった 何よりも大きかったのは、統一によって一気に流れ込んできたグローバル経済が人々の生活と精神に及ぼした大きな変化だったのかもしれない・・・ ハレのデーマークは地域通貨がたどる最も一般的な道を選んだ
2.定着か停滞か? ーニュージーランドのLETS2.定着か停滞か? ーニュージーランドのLETS ニュージーランドのLETS ・経済が混乱している中、1987年、ニュープリマスとファンガレイという二つの街で ニュージーランド初のLETSがはじまった ・1988年、ファンガレイLETSがテレビのニュース番組で取り上げられ、失業者を 中心に市民に大きな反響を呼び、ニュージーランドの各地に、何十ものLETSが 立ち上がった 現状 ニュージーランドには40ほどのLETSがある。非常に活発な活動をしているグループもあるが、多くはプラス残高の溜め込み、取引の不活発、管理者のなり手不在などの問題を抱えている。またLETSコネクションという各地のLETS間を結ぶ取引システムがあるが、各LETS間で極端な格差が生じている ニュージーランドLETSは停滞とまではいわないまでも、階段の踊り場で足踏みしているといった印象
2.定着か停滞か? ーニュージーランドのLETS2.定着か停滞か? ーニュージーランドのLETS 今後の課題 ニュージーランドではバーターカードと呼ばれる零細な商店や企業が集まって、現金とクレジットを併用して、サービスや商品を取引するシステムが存在し、そのシステムに事業者が集結したことで、事業者と市民の凄み分けが起こり、一方のLETSが伸び悩む結果をうんでいるかもしれない 既存のビジネスや市場とどう関わるかは、地域通貨がコミュニティの再生や相互扶助の促進を目指すものか、地域経済の活性化をめざすかの違いに関わりなく、その発展と存続に大きな鍵となる
地域通貨から何が見えてきたか? 地域通貨やオルタナティブな銀行に取り組む人々にとって共通する問題意識 ・金融上の投機を割の合わないものにする ・金融システムによる無からの貨幣創造、金融バブルの増大を制限する ・競争至上主義によって破壊された協同的な行動へのインセンティブを、住民や コミュニティの間につくり出す ・地域に根の張った、息の長い、実質資産に対する投資のインセンティブをつくり出す ・人間関係やコミュニティの社会的紐帯を強化する 問題意識の背景 グローバルな成長や競争の増大を望まず、むしろコミュニティの成員に環境と調和した経済生活上の安全をもたらし、地域社会への生産的な貢献に公正な報酬を提供する健全で豊かな社会が建設されるべきであるとの考えが存在している
地域通貨から何が見えてきたか? 地域通貨から見えてきたこと ・地域通貨は根底で、普遍的で均質的なものに向う運動と対をなす観念を経済社会 にもたしているということ ・何もかも金銭次元に切り縮めるところでは、人間の関係は金融上の信用でしか計 られず、貨幣という次元にすべてが還元されてしまうこと ・行動の見返りに得る報酬、リターンにはエネルギー次元、物質、財などの次元での りターンもあること ・人との関係の中で協同して社会をつくる中で、協同関係がもたらす報酬もあること ・金融次元の直線的な時間の概念、また短期の考慮にのみ基づく考え方は非人格なところにその特徴があるということ
銀行の金融システムがもつ問題 銀行の起源、つまり信用創造と利子の始まり 銀行は13世紀のイタリアで始まった。金細工師士ゴールド・スミスは腕が良く、人々から信用されているため、金貨の保管を依頼されるようになった。彼は預かり賃をとって金貨の預り証書を発行した。その預り証がやがて実際の金貨の代わりに流通するようになった。しばらくすると、彼は決して全員が同時に金貨を引取りに来ないことに気が付いた。そして、自分の持っている金貨の量以上の預り証を発行することで収入をあげるようになった。 我々が利用している今の銀行システムの基本。預かり賃は「利子」で、実際の金貨より多くの預かり証を出すことは「信用創造」ということ 「利子」:利子を生み出すために無限の成長と競争のメカニズムをその存在そのもの に内在させている 「信用創造」:無からお金が自己増殖していくことを可能にしている →この問題に果敢に挑戦したのがJAK銀行
1.日本に50年ぶりに銀行が生まれた <インターネットバンクの登場 ―ソニー銀行> ソニー銀行が銀行業界にもたらした新しさ ・銀行の形態がインターネットバンクであること ・異業種の参入であること ・「預金はすなわち投資」であるという考えを明快にしたこと 「預金者に対する第一義的な義務は、私たちの投資内容を明らかにすることだと思います。私たちの投資内容を理解して上で、そんなところは嫌だというかどうか、これはお客様の選択です。この中身を全部明らかにしていくのがフェアなやり方だと思っています」 (ソニー銀行社長 石井茂)
2.未来バンクの挑戦 未来バンク 一般の銀行が果たしていない社会的投資をしていこうと、1994年に市民活動家が立ち上げたノンバンク形式の銀行。融資の利率は3%で、環境によいもの、市民が社会をつくろうというような市民事業、福祉の3つだけにしか融資しない 正式な銀行ではないので出資者の出したお金の額以上の融資はできない →信用創造機能を持っていない。また、預金者保護が適用されない 融資には責任とリスクがあり、融資の決定には厳しいルールを設けている 未来バンク理事長の田中氏の提案 民主的で成熟した市民の金融への姿勢と実践
1.無利子銀行の可能性 -スウェーデンのJAK会員銀行1.無利子銀行の可能性 -スウェーデンのJAK会員銀行 JAK会員銀行について ・1997年、スウェーデン政府に正式な銀行として認可された ・「経済解放のための国民協会」という非営利組織が発展したもの ・無利子の貯蓄と融資のシステムをもつ ・主要な目的は、利子・債務の重荷から人々を救済すること ・預金受け入れは1967年に始まり、最初の貸付が1970年に行われた なぜ無利子経済なのか? JAK銀行CEOのオスカーシェルパリに聞く 利子が生み出す社会的不公平が問題 利子で収入を得られる人はほんのわずかであり、国民の大多数が利子を支払い、少数の資本家がそれを受け取ることで資本はより貧しいものから富めるものへと移動していく。実際、アメリカでは99%の資産が1%以下の人々によって所有されている
1.無利子銀行の可能性 -スウェーデンのJAK会員銀行1.無利子銀行の可能性 -スウェーデンのJAK会員銀行 無利子貯蓄―貸付システムについて ・会員の事前の貯蓄、すなわち借入の際に基準となる貯蓄が、借入可能額を 決定する ・会員はJAKに預金して利子の代わりにセービングポイントを入手する ・会員がどれだけ多くの、またどれだけ長くの融資を受けられるかどうかを決めるの はセービングポイントである ・会員は200SEKを銀行株式発行のために支出し、融資に際しては融資準備金とし て融資額の6%を銀行に払い戻す ・融資の管理や情報の共有、運営コストは、融資総額の3.5%の融資手数料 と、 毎年の返済額の1%の手数料でまかなわれる JAKの無利子融資の手法は、利益をあらかじめ合意している配分比率で分配しあう『損益配分』契約に基づいたものといえる
2.世界で唯一の独自通貨を持つヴィア銀行 ・1934年に設立されたヴィア経済リングが発展してヴィア銀行となった ・零細な商店や中小企業のための独自通貨を発行するシステムを持った 協同組合銀行である ヴィア経済リングの発展は、基本的に3つの局面に分けることが出来る ・1934年~52年(創世記):多くの実験や厳しい試練を伴った絶え間のない革新を 繰り返した。長期間使用に耐えうるヴィアのコンセプトがつくりあげられた ・1952年~88年:ヴィアの決済システムという重大な構想に関する部分の改正に よって成長が再開し、また支部ネットワークの拡充などが行われた ・1988年~:コンセプトや構造的な変化を通して、数多くの改革が行われた ヴィア銀行の基本理念 各中小企業が,ほかの中小企業のためにモノ・サービスを購入し、購買力を相互に行使しあい、共同関係にたつものとしての連帯の輪をつくり上げていくこと
第6章 環境と共存めざす銀行 ・地域を支える銀行第6章 環境と共存めざす銀行 ・地域を支える銀行
1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み エコバンク 1988年、ドイツのフランクフルトで誕生。母体となったのは社会運動、平和運動家たちのグループで、銀行設立の目的は平和運動、女性活動、環境運動、エコロジー運動 しかし、現行の経済システムの問題点にいち早く挑んだエコバンクは2001年、13年続いたその業務を停止せざるを得なくなった →経済システムを環境によい倫理的なものにするのは不可能なのか? 1.エコバンクが何をめざし、2.どのような成果をあげ、3.なぜ志半ばにして挫折に追い込まれたのかを検証することは、エンデの「貨幣システムの何を変えるべきなのか」という問いを考えるうえで何かヒントを得られるかもしれない
1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み 1.エコバンクがめざしたもの ・銀行とは利益を得るためだけではなく、完全に民主主義的に組織され、 商業的な気持ちから解き放たれたものになるべき ・お金がどこからきて、どこへ流れていくのかといった過程を公開し、 目に見えるようにすること →「道徳的な銀行」を目指した 2.エコバンクが13年間に成し遂げたこと 社会的投資、倫理的投資をドイツ社会の中に根付かせた ・エコバンクの創業からの13年間でドイツの環境産業は飛躍的に成長した ・「環境へ投資する」必要性を社会に認識させるのに大きな役割を果たした
1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み1.環境と地域の調和を目指す -エコバンクの試み 3.なぜ志半ばにして挫折に追い込まれたのか 環境産業が成長を遂げ、利潤が出せるようになるにつれ、利潤を求めて大銀行が市場に参入してきたことによって、資本主義の原理のもと環境市場は激しい競争にさらされるようになり、エコバンクは利潤を追求しないという大原則を守りながら競争相手と戦わねばならなくなったため エコバンクも銀行であり続ける限り、利子というシステムの中に取り込まれてしまい、わずかでも預金者に利子を支払わなくてはならない。お金がいつも利子と一緒に、しかも無から生み出されるという、この経済システムの根幹にかかわることが挫折の原因となったと考えられる
2.コミュニティを支える地域開発銀行 ショア・バンク ・1973年、アメリカのシカゴ郊外で立ち上がったアメリカ最初の地域開発銀行 ・目的はコミュニティに投資し、その発展のためにつくすこと ・開業以来、30年間で地域に注ぎ込んだ投資の総額はおよそ90億円 ・融資は顧客一人ひとりの人柄を判断するリスク・アセスメントという手法で管理 ・不動産開発会社を立ち上げて地域の不動産の改善を行った
2.コミュニティを支える地域開発銀行 地域再投資法(CRA)について ・1977年に施行された ・この法律は銀行が融資活動をする際、営業する地域から得た預金をまた地域に 投資還元するよう促すもの ・基本精神は、免許を受けて営業する金融機関は、経営の安全性や健全性の 確保を前提に、店舗が所在する各地域において、中低所得者層を含むさまざ まな階層の信用需要や金融サービス需要にこたえることを求めるものである ・今後、期待されることは、一定地域に居住する市民が地域に対して何らかの一体感 を持ち、自己完結的な地域内資金循環の形成を、地域に店舗をもつ金融機関とと もに行っていくこと グローバリゼーションがもたらす数々の負の要素が世界で問題を引き起こしているが、アメリカは実はこの負の側面を緩衝する政策をとっており、そのアメリカの二面性をもっと知るべきである(中京大学 由里宗之教授)