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STAS-J の 施設・地域レベルでの普及のために 新潟県厚生連 豊栄病院 外科 齋藤義之 平成 20 年 10 月 5 日 死の臨床研究会(札幌). 緒言. 緩和ケアの評価における STAS-J の有効性に ついては既に多くの報告があるが、未だ 施設・自治体レベルでの広範囲な普及には 至っていないように思われる 豊栄病院、新潟県における STAS-J の普及に 関する活動について報告する. 施設レベルでの普及について. 豊栄病院の概要. 名称 診療科目 病床数 病院併設 平均在院日数 病床稼働率. 新潟県厚生農業協同組合連合会豊栄病院
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STAS-Jの 施設・地域レベルでの普及のために 新潟県厚生連 豊栄病院 外科 齋藤義之 平成20年10月5日 死の臨床研究会(札幌)
緒言 緩和ケアの評価におけるSTAS-Jの有効性に ついては既に多くの報告があるが、未だ 施設・自治体レベルでの広範囲な普及には 至っていないように思われる 豊栄病院、新潟県におけるSTAS-Jの普及に 関する活動について報告する
豊栄病院の概要 名称 診療科目 病床数 病院併設 平均在院日数 病床稼働率 新潟県厚生農業協同組合連合会豊栄病院 内科・外科・整形外科・産婦人科・小児科・歯科など 9 科 199 床 人工透析 22 台 (1997年9月新築移転) 豊栄訪問看護ステーション とよさか在宅介護支援センター 豊栄訪問看護ステーション指定居住介護支援事業所 16.8日 86.7 % (データは2007年) 「写真:豊栄病院(左上)、福島潟(上)」
豊栄病院におけるSTAS導入の経過 2005年 2月 ・医師と「外科病棟・訪問看護」のコア・ナースとのミーティング ・「外科病棟・訪問看護」の患者数名をコア・ナースにより検討 2005年 3月 ・コア・ナース+プライマリ・ナースによる事例検討の蓄積 ・コア・ナースを中心とした少数のスタッフによるSTAS-Jの 講演会・仮想症例を用いた実習への参加 2005年10月 ・STAS-Jを用いた緩和ケアの評価を「外科病棟」で開始 良いツールであることの理解は得られたが普及しなかった
緩和NSTの立ち上げ 当院では2005年2月からNSTが稼動していたが NST稼動開始から3年近くが経過した時点で 活動内容の評価指標(在院日数やAlb値等)に 著明な変化が認められなかった また、NSTの介入を要すると思われる症例でも 栄養管理計画が提言されていない場合があり 終末期癌患者に対する介入依頼も少数であった
NST介入システムの改定 (2006.11~) • 入院患者 • 「2週間毎に」SGAを再評価することとした • 2) Albが3.0g/dl未満の入院患者 • 「主治医による介入依頼の有無に関わらず」 • ODAを評価することとした
SGA用紙の改訂(2007.02~) 「主治医としてNSTの介入が必要か」の項目 「必要 不必要」 ↓ 「必要 不必要:理由」 1. 栄養状態良好なため 2. 現在の(予定の)治療後に 栄養状態の改善が見込める 3. 患者(家族が)積極的な治療を希望しない 4. 癌終末期 5. その他( )
n=443 n=105 n=40 n=28 n=70 (64.6%) (15.3%) (5.8%) (4.1%) (10.2%) NST介入不要とされた理由(2007.03~05) 「SGA用紙提出数 : 704 」 NST介入症例数 : 18 (2.6%) 介入不要とされた症例数 : 686 (97.4%) 1) 栄養状態良好なため 2) 現在の(予定の)治療後に栄養状態の改善が見込める 3) 患者(家族)が積極的な治療を希望しない 4) 癌終末期 5) その他 終末期癌患者にも適切な栄養管理が必要であり 2007年6月に「緩和NST」を立ち上げた
緩和NSTの介入形式 1) 2) 3) SGAで「癌終末期」とされた患者の状態を 緩和ケアの評価尺度である「STAS-J」を 用いて評価 (スタッフが必要と判断した場合も評価) 「終末期癌患者に対する輸液治療の ガイドライン」を参考にして 栄養管理計画を検討し、主治医に提言 定期的に「STAS-J」を用いて患者の状態を再評価
終末期癌患者における栄養管理の検討 【対象】 緩和NST前期症例(外科単科型:2007.06~10) 当科で死亡した癌患者17例 (STAS評価症例7例、未評価症例10例) 緩和NST後期症例(全科型:2007.11~2008.05) 当院で死亡した癌患者の内 「STAS-J」で評価されていた23例 【方法】 倫理的配慮に基づき終末期の栄養管理につき レトロスペクティブに検討した
緩和NST前期症例(外科単科型)の栄養管理 STAS未評価症例で臨死期における輸液量や 投与カロリーが多い傾向が見られたが 「気道分泌・胸水・腹水・浮腫による苦痛」などの 症状が悪化した症例は認められなかった
終末期癌患者の栄養管理 (STAS評価症例) 後期症例の内、2例で高カロリーかつ過量と思われる 輸液が施行されており、その内1例においては 「呼吸苦・浮腫」が増悪していた (2例とも患者への病状説明が不十分な症例であった)
末期癌患者への人工的栄養や 水分補給の投与を決める要因 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 腫瘍・臨床状態 症状 推定される生存期間 水分・栄養摂取状態の評価 食事摂取状況 患者の病状の理解と態度 消化管機能および投与経路(経腸管、経静脈) 特殊な栄養補給の必要性 Bozzetti,F. et al.: Guidelines on artificial nutrition versus hydration in terminal cancer patients. European Association for Palliative Care. Nutrition, 12(3) : 163-167, 1996
終末期癌患者の包括的評価の重要性 日本においては、未だ「悪い情報」について 患者自身に正確に説明していないことが多く 医師や家族の判断で、癌性悪液質であっても 強制栄養補給が臨死期まで継続されている 場合が少なくない 終末期癌患者に栄養療法を施行する際には 「患者や家族の病状認識」の把握など 患者や家族が抱える様々な問題点を包括的に評価する必要がある
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 豊栄病院NST:2008.07.24 (看護師8名、薬剤師1名、管理栄養士1名、医事課職員1名) 「当院における緩和NST立ち上げ(2007年6月)の 時点でSTAS-Jをご存知でしたか?」
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 豊栄病院NST:2008.07.24 (看護師8名、薬剤師1名、管理栄養士1名、医事課職員1名) 「患者さんの『包括的評価』を行う際に STAS-Jは有効だと思いましたか?」
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 豊栄病院NST:2008.07.24 (看護師8名、薬剤師1名、管理栄養士1名、医事課職員1名) 「STAS-Jを使用した印象はいかがでしたか?」
まとめ (1) 終末期癌患者にも適切な栄養管理が必要であり 2007年6月に「緩和NST」の活動を開始した 終末期癌患者の包括的評価にSTAS-Jが有効で あることが多くのNSTのメンバーに認識された 既に日常診療と強く結びついていたNSTの活動に 組み込むことでSTAS-Jの施設レベルでの普及に 成功した
がんに対する国の取り組み 2004年7月 2006年6月 2007年4月 2007年6月 「第3次対がん10か年総合戦略」発表 「がん対策基本法」公布 基本的施策 ・がんの予防及び早期発見の推進 ・がん医療の均てん化の促進等 ・研究の推進等 「がん対策基本法」施行 「がん対策推進基本計画」閣議決定 重点的に取り組むべき課題 ・治療の初期段階からの緩和ケアの実施 ・放射線療法・化学療法の推進、 これらを専門的に行う医師等の育成 ・がん登録の推進
緩和ケア教育に関する動き 2005年 2007年10月 2008年 4月 2008年9月 「日本緩和医療学会教育セミナーEPEC-O」開催 (2006年より「EPEC-Oトレーナーズワークショップ」 として年2回の定期開催、第5回で終了) 厚生労働省「緩和ケアの基本教育のための 都道府県指導者研修」開催 厚生労働省健康局長より各都道府県知事に対し 「すべてのがん診療に携わる医師に対する 緩和ケアに関する研修会」を開催するよう通達 日本緩和医療学会「PEACEプロジェクト緩和ケア 指導者研修会」開催 (平成20年度厚生労働省委託事業)
がん緩和ケアガイドブック(2008年度) PEACEプロジェクトにおいて テキストとして推奨されており 「症状の評価」の項目では アセスメント・ツールとして STAS-Jが記載されている
緩和ケア教育に関する新潟県の動き 2007年12月の時点で 「緩和ケアの基本教育のための 都道府県指導者研修」修了者 「EPEC-Oトレーナーズワークショップ」修了者 3名 6名
緩和ケア教育に関する新潟県の動き 2007年12月 「新潟緩和ケア教育推進委員会(有志の会)」発足 2008年5月 「新潟緩和ケア教育推進委員会」が 「新潟県緩和医療研究会(全県レベルの組織)」の 内部機構となる (研修会の開催を県から委託される) 2008年6月 厚生労働省に研修会のプログラム内容を送付 「開催指針」に準拠した研修会と認定される
緩和ケア教育に関する新潟県の動き 2008年7月26日(土) 平成20年度 第1回 「がん診療に携わる医療者に対する 新潟県緩和ケア研修会」開催 主催 新潟県、新潟県緩和医療研究会 後援 新潟県医師会、新潟県立がんセンター新潟病院 場所 新潟県立がんセンター新潟病院 がん予防総合センター
新潟県緩和ケア研修会プログラム ・「包括的アセスメント」 「STAS-J」を用いたsmall group discussion (180分) ・「コミュニケーション・スキル・トレーニング」 「SHARE」を用いたロール・プレイ (240分) ・「症状マネジメント(精神症状)」 配布資料に基づいたインタラクティブ・ティーチング (60分) ※「緩和ケアの教育をする人の研修」を目的としたため、受講者は「疼痛のアセス メントとマネジメント」については既にある程度の知識があるものと考え、 医師だけでなくコメディカルも対象とした1日開催の上記プログラムを作成 ※後日、厚生労働省「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会 開催指針」に準拠して「単位制・二日開催」のプログラムを作成
「包括的アセスメント」研修内容 受講者に「STAS-Jの仮想症例」と 検査成績などを記載した 「緩和医療データセット(1枚目)」を 配布し、仮想症例について 「包括的に」アセスメントしてもらう ようにした(2例) 1例目についてはSTAS-Jの説明を せずに検討してもらった STAS-Jの点数(0~4)はつけずに 「マネジメントが必要かどうか」までの アセスメントをしてもらうようにした
「包括的アセスメント」タイムスケジュール ・グループ全体(6名)への研修内容説明 ・仮想症例(1例目)の小グループ(3名)による検討 (配布資料:STAS-Jの仮想症例+緩和医療データセット) ・小グループ毎の検討内容発表および全体での討論(6名) ・小休憩 ・グループ全体(6名)へのSTAS-Jの講義 ・仮想症例(2例目)の小グループ(3名)による検討 (配布資料:STAS-Jの仮想症例+緩和医療データセット) ・小グループ毎の検討内容発表および全体での討論(6名) 5分 40分 30分 5分 30分 40分 30分 計180分
平成20年度第1回 「がん診療に携わる 医療者に対する新潟県緩和ケア研修会」
新潟県緩和ケア研修会参加施設 第1回 第2回
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 新潟県緩和ケア研修会受講者:2008.07.26 (医師6名、看護師6名) 「STAS-Jをご存知でしたか?」
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 新潟県緩和ケア研修会受講者:2008.07.26 (医師6名、看護師6名) 「患者さんの『包括的評価』を行う際に STAS-Jは有効だと思いましたか?」
STAS-Jの使用に関するアンケート調査 新潟県緩和ケア研修会受講者:2008.07.26 (医師6名、看護師6名) 「STAS-Jを使用した印象はいかがでしたか?」
まとめ (2) 2008年7月に開始した「新潟県緩和ケア研修会」に おいてSTAS-Jを使用した 終末期癌患者の包括的評価にSTAS-Jが有効で あることが多くの研修会参加者に認識された 全県レベルで開催される緩和ケア研修会の プログラムに組み込んだことで STAS-Jの自治体レベルでの普及が進むことが 期待される
結語 STAS-Jは緩和ケアの評価における 有効なツールであるが 臨床現場で実際に広く使用されるためには NSTやPCT等の熱意を持った 他職種のメンバーからなるチームが関わる 日常診療や教育システムに組み込むことが 重要であると思われた