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CSCL の背景と研究動向. 稲葉 晶子 大阪大学 産業科学研究所. 概 要. “CSCL” とは? なぜ CL か? CSCL 研究動向 CSCL 研究背景 学習支援システム研究の歴史 CL の有効性を保証する学習理論 / 教授法 理論と実践との bridging の試み CL グループの設計のための学習目的オントロジー. “CSCL” とは?. Computer Supported Collaborative Learning コンピュータを用いた協調学習 効果的な支援が可能 学習プロセス・相互作用の記録・モニタが可能
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CSCLの背景と研究動向 稲葉 晶子 大阪大学 産業科学研究所
概 要 • “CSCL” とは? • なぜ CL か? • CSCL研究動向 • CSCL研究背景 • 学習支援システム研究の歴史 • CL の有効性を保証する学習理論/教授法 • 理論と実践との bridging の試み • CL グループの設計のための学習目的オントロジー
“CSCL” とは? • Computer Supported Collaborative Learning • コンピュータを用いた協調学習 • 効果的な支援が可能 • 学習プロセス・相互作用の記録・モニタが可能 • CL‥ ‥協調学習 • 仲間とともに協力して問題解決や学習を行う学習形態(cf. 共同学習、グループ学習)
CSCL collaboration 知識獲得・スキル育成 学習プロセスの構成・サポート 学習プロセス 教育的効果 学習プロセスのコーディネーション 学習者の状態同定 グループ構成 CSCW cooperation, 分業 作業・プロセスの効率化 生産性向上 質の良いプロダクト プロダクトの質 コスト 透過性 データ共有容易性 定型処理の自動化 CSCL, CSCW 活動形態 支援目的 評価対象 機能的特徴
なぜ CL ? • 知識獲得・スキル育成のための手段 • 新しい学習効果の促進 • 人間の学習過程解明のためのテストベッド
なぜ CL ?1.有効な手段 • 目的 • 知識獲得・スキル育成 従来の学習支援と同じ • 学習プロセスの多様性 • 指導者から教えてもらう • 練習問題を繰り返し解く • 他者に説明する • 他者の問題解決過程を観察する
なぜ CL ?2.新しい学習効果 • 目的 • 他者モニタリングスキルの育成 • 他者と自己との主張の差異を認識する能力の育成 • 議論をまとめる能力の育成 • 議論の仕方に関する知識・スキルの育成
なぜ CL ?3.テストベッド • 目的 • 人間の問題解決過程の解明 • 未解決な問題 • 創造的問題解決 • 「三人寄れば文殊の知恵」 • 見習としての参加による発達の過程 「門前の小僧習わぬ経を読む」 • 学習効果の一貫性のなさ
CSCL 研究動向CSCL 環境の概念的構成 相互作用のモニタ・ コーディネーション 指導者 協調学習者 ツール - 意見交換 - 問題解決過程の共有 学習者 協調学習者
Virtual School ツール 領域依存ツール 学習課題達成 支援ツール 課題(活動)依存ツール 学習過程への直接的関与 指導者的な 役割の代行 学習場の設定 参加者の 役割代行 (協調)学習者の 役割代行 CSCL 研究動向CL 支援ソフトウェアの分類 CSCL 環境
CSCL 研究動向CL のためのツール • Virtual School, Cyber Classroom • ネットワーク上の仮想的な学校 • 実社会における学校の機能を模倣 • 学習課題達成支援ツール • 対象領域依存ツール • ある科目に特化した学習教材、CAI、シミュレーション環境などの共有 • 認知的課題依存ツール • 情報発信支援 • 議論可視化
CSCL 研究動向参加者の役割代行 • iCSCL (Intelligent CSCL) • 指導者的役割の代行 • 学習プロセスに直接関与 • 議論支援エージェント(coordinator) • 教師エージェント(facilitator, mediator) • 学習プロセス不関与 • 学習グループの構成 • 協調学習者の役割の代行 • 擬似学習者(computer companion)
CSCL 研究動向擬似学習者の概念的構成 説明生成 機構 問題解決機構 知識獲得 (学習)機構 領域知識 問題解決知識 協調的 対話制御機構 協調学習者の役割を代行する エージェント(擬似学習者) 人間学習者
概 要 • “CSCL” とは? • なぜ CL か? • CSCL研究動向 • CSCL研究背景 • 学習支援システム研究の歴史 • CL の有効性を保証する学習理論/教授法 • 理論と実践との bridging の試み • CL グループの設計のための学習目的オントロジー
学習支援システム研究の歴史CAI ~ ITS 知識:絶対的(伝達可能) 学習:一定の行動変容 • 1960年代 • Computer Aided Instruction • Behaviorism • 入出力に注目 知識:絶対的(伝達可能) 学習:内的変化 • 1970 年代 • Intelligent Tutoring System • Cognitivism • 内部処理に注目
学習支援システム研究の歴史ILE ~ CSCL 知識:相対的 学習:内的変容 • 1980 年代 • Interactive Learning Environment • (Cognitive) constructivism • 能動的な学習主体としての学習者 • 1990 年代 • Computer supported Collaborative Learning • Social constructivism • 学習の社会的側面 知識:相対的 学習:community 全体 の変容
外的世界 入力 出力 学習支援システム研究の歴史 (1) Behaviourism と CAI 正しい知識を どのように伝達するか? 学習者 観察可能な行動変容
外的世界 入力 出力 学習支援システム研究の歴史 (2) Cognitivism と ITS 学習者の状態を同定し、 正しい知識を どのように伝達するか? - 内部処理のモデルを仮定 - 認知的変容 学習者
外的世界 入力 出力 入力 学習支援システム研究の歴史 (3) Cognitive constructivism と ILE - 内部処理のモデルを仮定 学習者が仮説 検証するために適切な 環境とトリガは? - 認知的変容 学習者 仮説検証による独自の知識構造の構築
外的世界 外的世界 出力 入力 学習支援システム研究の歴史 (4) Social constructivism と CSCL 他者との適切な関係は? ↓ 学習グループの構成 - 内部処理のモデルを仮定 - 認知的変容 学習者 - 外的世界としての他者の役割を強調 - community としての変化
CL の有効性を保証する学習理論/教授法 • 個別学習との比較における CL の有効性 • 教育の現場では古くから実践 • 数多くの理論・方法論 • 幅広い研究領域 • 社会学 • 教育学 • 心理学….
CL の有効性を保証する学習理論/教授法 • Peer Tutoring (Endlsey, 1980) • Cognitive Flexibility theory (Spiro, et. al, 1988) • Sociocultural theory (Vygotsky, 1930) • Cognitive Apprenticeship (Collins, 1991) • Anchored Instruction (Blansford, et al., 1992) • Distributed Cognition (Salomon, 1993) • Cognitive Constructivism (Piaget, 1929) • Legitimate Peripheral Participation (Lave & Wenger, 1991) • Observational Learning (Bandura, 1971) • Zone of Proximal Development (Vygotsky, 1930)
Peer Tutoring学習者同士の教え合い 既に学習した 知識 学習者 学習者 - 新しい知識の獲得 - 質問がしやすい - 記憶が優れる - 既存の知識の外化 - 知識の定着 - 知識の再構成
Observational Learning観察学習 学習者 - 間接的な問題解決体験 - 知識の獲得 - 模倣による知識・スキルの発達 - 原因帰属の誤りの危険性
Legitimate Peripheral Participation正統的周辺参加 十全的参加者 周辺的参加者 - 実際的な問題解決への関与 - 徐々に知識・スキルを獲得 - 学習者は community の十全的参加者になる過程
Self-regulated Learning Monitoring + Control - メタ認知的スキル、Executive Control - 自己の学習過程・思考過程のモニタリング、診断・制御 - CL ではメタ認知的スキルを必要とする場面が多く存在
Cognitive Flexibility Theory - 知識構造の再構築 - 多角的な見方を共有する - リフレクション思考の喚起 - 知識間の関連付け
Distributed Cognition分散認知 - 知識の共有・再利用 - 集団としての認知の形成 - 実際的な問題解決 - 個人は他者との相互作用によって発達
概 要 • “CSCL” とは? • なぜ CL か? • CSCL研究動向 • CSCL研究背景 • 学習支援システム研究の歴史 • CL の有効性を保証する学習理論/教授法 • 理論と実践との bridging の試み • CL グループの設計のための学習目的オントロジー
学習理論に基づく協調学習グループ設計のためのオントロジー学習理論に基づく協調学習グループ設計のためのオントロジー
協調学習の効果 <Positive> • 動機づけ・学習意欲の向上 • 記憶・検索の促進 • 知識増加 • 理解の深化 • コミュニケーションスキル発達 • 認知的スキル発達 • メタ認知的スキル発達………...
協調学習の効果 <Negative> • 学習意欲低下 • 遠慮 • 社会的手抜き • 流される • 誤った知識の獲得 • 知識の混乱 • 効率の悪さ ………………...
効果の明暗を分ける要因 • 多種多様な相互作用 • 相互作用内容が予測困難 学習効果の差異 学習グループ構成メンバ間の関係に依存
適切なグループ構成のためには? • 協調学習の有効性を示唆する学習理論 • 学習理論に従ってグループを構成
学習理論の一般的構成 徒弟制の環境で 学習が成功... 背景、現象、認知的メカニズム 学習とは内的なプロセ スaを経てbに至る過程... 新たな情報を受け取る と内部の認知メカニズムは... だから... 結果として... X の環境が 学習には大切! ●●の能力を 育成 環境に埋め込まれ不明確な場合も
学習環境設計時の Needs 徒弟制の環境で 学習が成功... 学習環境が有効であることの根拠 学習とは内的なプロセ スaを経てbに至る過程... 新たな情報を受け取る と内部の認知メカニズムは... なぜなら... 目的 X の環境が 学習には大切! ●●の能力を 育成 そのためには
学習目的達成のための学習環境 Z の環境が 学習には大切! 競合 Y の環境が 学習には大切! 統合可能 目的 X の環境が 学習には大切! ●●の能力を 育成
研究目的:Needs • 目的志向で学習環境を設計 • 学習環境候補の選択を容易に • 学習理論を実現できる環境を明確に • 学習理論間の比較・統合を容易に
研究目的:アプローチ • 協調学習目的に関する概念の明確化 • 概念間の関係の明確化 学 習 効 果 他者との 相互作用 協調学習 グループ形態 既存の学習理論の統一的な記述体系を構築
オントロジーとは? 教育関係者 システム 概念間の関係 概念b 概念a 概念c 対象世界 研究者 (教育学、心理学、社会学、 工学、認知科学、 人工知能…….) 学 習 者 教育システム 設計者
学習目的オントロジーの設計 • W-goal (グループ構成目的) • 協調学習グループW全体の目的 • G: W • Y<=I-goal (相互作用目的) • 協調学習中のある学習者Iから見た他者Yとの相互作用の目的 • G:Y<=I • I-goal (学習目的=学習効果) • 協調学習に参加する学習者Iの達成する目的 • 協調学習を通じて獲得されるもの • G:I
G:Y(La)<=I(Lb) G:Y(Lb)<=I(La) G:W(La,Lb) G:I(La) G:I(Lb) G:W(La,Lb,Lc) G:I(Lc) I-goal, Y<=I-goal, W-goal Lb La Lc
Conceptual Structure of a W-goal W-goal I-goal I-goal I p/o ?a Y<=I-goal Y<=I-goal You p/o ?b G: I(I) p/o Learner Learner Learner Learner Learner Learner I p/o ?c You p/o ?d p/o G: I(I) Principal Role (P-role) p/o ?x=?a=?d ?y=?b=?c ?x Secondary Role (S-role) p/o ?y S-role <= P-role -goal p/o p/o P-role <= S-role -goal
I-goals • Acquisition of Content-Specific Knowledge • Accretion • Tuning • Restructuring • Modes of Learning, Rumelhart & Norman (1978) • Development of Cognitive Skill • Development of Metacognitive Skill • Development of Skill for Self-Expression • Cognitive stage • Associative stage • Autonomous stage • Acquisition of Cognitive Skill, Anderson (1982), Fitts (1964)
Y<=I-goals • Learning by Observation • Learning by Self-Expression • Learning by Teaching • Learning by being Taught • Learning by Apprenticeship • Learning by Practice • Learning by Diagnosing • Learning by Guiding • Learning by Reflection • Learning by Discussion
W-goals • Setting up the situation for Peer Tutoring • Setting up the situation for Anchored Instruction • Setting up the situation for learning by Cognitive Apprenticeship • Setting up the situation for sharing (Meta-)Cognitive function between learners (Sociocultural T.) • Setting up the situation for sharing Multiple Perspectives • Setting up the situation based on Distributed Cognition • Setting up the situation based on Cognitive Constructivism • Setting up the community for Legitimate Peripheral Participation (LPP) • Setting up the situation for Observational Learning
Peer Tutoring PeerTutee ?b PeerTutor - Content-specific knowledge (Tuning) ?a * G: I(PeerTutor) PeerTutor Tutoring P.Learning PeerTutee P.Learning Tutoring PeerTutee ?c PeerTutor * ?d - Content-specific knowledge (Accretion) G: I(PeerTutee) ?x=?a=?d ?y=?b=?c PeerTutoring S-role ?y P-role ?x S-role <= P-role -goal L by Teaching * P-role <= S-role-goal L by being Taught
Legitimate Peripheral Participation LPP Problem-solving Full P. Peripheral P. Problem-solving Group CC/ DC ?x=?a ?y=?b S-role ?y member W-goal P-role ?x * S-role <= P-role Full P. ?b L by Practice Peripheral P. ?a * G: I(Peripheral P.) - Development of (Meta)Cognitive Skill (Assoc. st.)