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MPPC の経年変化についての 研究連絡. 筑波大学 数理物質科学研究科 博士前期課程2年 高橋 優介. 目的. ILC では光検出器を長期 ( ~ 10 年 ) に渡って使用する。 - 使用期間内で性能が安定しているか調べる。. 方法. 温度加速を用いて長期安定性を測定 - 高温での動作を確認する。 - 長期安定性の測定を行う。. 2. 原理. 反応論モデル:. 拡散、酸化、吸着、転位、電界、腐食クラックの成長などのメカニズムで 変化が進行し材料や部品を劣化させ、ある限度を超えると故障に至る。. アレニウスモデル:温度による反応依存性.
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MPPCの経年変化についての 研究連絡 筑波大学 数理物質科学研究科 博士前期課程2年 高橋 優介
目的 • ILCでは光検出器を長期(~10年)に渡って使用する。 • -使用期間内で性能が安定しているか調べる。 方法 • 温度加速を用いて長期安定性を測定 • -高温での動作を確認する。 • -長期安定性の測定を行う。 2
原理 反応論モデル: 拡散、酸化、吸着、転位、電界、腐食クラックの成長などのメカニズムで 変化が進行し材料や部品を劣化させ、ある限度を超えると故障に至る。 アレニウスモデル:温度による反応依存性 寿命 (lnL) Λ:定数 [1/time] L :温度T での寿命 [time] kB:ボルツマン定数 [eV/K] E a:活性化エネルギー[eV] T :絶対温度 [K] 温度 1/T(K-1) 活性化エネルギーEaを精度良く測定できれば MPPCの寿命が推定できる 3
測定項目 25um 1600pix sample をOver Voltage = 3Vの電圧を印加した状態で85℃に加熱しLeakage Current を測定する。 2週間に1度25℃に戻して以下の測定を行う。 (Over Voltage = |Vbias - V0| ,V0:ガイガーモード開始電圧) • Gain • Noise Rate • Cross Talk Type B: 読み出し回路を含まない試作品 ※活性化エネルギーを0.585 eV 通常動作温度を25 ℃ と仮定 温度[℃] 60 85 温度加速定数 11 45 TypeA: 読み出し回路を含む従来の回路 NoiseRate が1MHz以上になるか、 Gainが105を下回ったとき故障と見なす。(ILD要求値) 4
Gainの測定方法 Set Up Width 55ns (ADC分布) CAMAC 1kHz Delay 2p.e. ADC Gate Analog In Clock Generator Gate Generator 1p.e. 3p.e. PC AMP×63 MPPC Thermostatic chamber Voltage source 4p.e. d Pedestal LED driver LED Voltage source (p.e.:photoelectron) LED発光に同期させ、ADC分布をとる S = ADC分解能(= 0.25pC/ADCcount) e = 素電荷(= 1.6 x10-19 C) A = アンプ増倍率(= 63) 5
Gainの結果 α:温度係数 [V/℃] β:0℃のときのV0 [V] ・25 ・30 ・40 ・50 ・60 Gain (105) ・#1102 TypeA ・#1102 TypeB ・#1103 Type A ・#1103 Type B V0 [V] Vbias [V] Temperature[℃] Capacitance[fF] V0は温度に対し線形に依存し、 Capacitance は温度に依存しない。 Temperature[℃] 6
NoiseRateの測定方法 ノイズ:主に熱による電子・正孔対発生によって起こる。 0.5p.e.以上の信号をノイズとした。 Threshold Curve Scaler counts 1.5 p.e. 0.5 p.e. Vth [mV] 2p.e.以上の信号はノイズ発生に伴うクロストークによるもの 7
Noise Rateの補正 Noise Rate が高いときDiscriminator の Dead Time を考慮しなくてはならない。 n = true value m = observed value τ= output pulse width (25ns) Noise Rate が高いときMPPCのシグナルが 偶然同時に発生することがある n = avg of noise rate T = pulse width (4ns) 8
NoiseRate(0.5p.e.)の結果 Type A Type B Sample #1102 ・25 ・30 ・40 ・50 ・60 Sample #1103 NoiseRate [MHz] OverVoltage [V] NoiseRate(0.5p.e.)は温度が上がると増加する。 9
Cross-TalkProbability Type A Type B Sample #1102 ・25 ・30 ・40 ・50 ・60 Sample #1103 Crosstalk Prob[%] OverVoltage [V] Cross-Talk Probability は温度に依存しない。 10
長期安定性試験 温度測定値なし ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 定期測定 停電 Time[Day] Sample #1102 Circuit Type A Sample #1103 Circuit Type B T ~ 85 ℃ , ⊿V ~ 3 V 45.4倍加速(10年分相当) ?! Time[Day] Leakage Currentが徐々に上昇している。 11
長期安定性試験 温度測定値なし ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 定期測定 停電 Time[Day] Sample #1102 Circuit Type A Sample #1103 Circuit Type B ?! Time[Day] 1102が上昇したのに対し、1103は下降した。 12
定期測定(Gain) Gain はILDの要求値を満たす。 ・#1102 ・#1103 ・ 0 days ・14 days ・28 days ・42 days ・56 days ・70 days ・84 days V0 [V] Gain (105) Time[Day] ○ #1102 □ #1103 Capacitance[fF] Vbias [V] (V0:ガイガーモード開始電圧) Time[Day] 13
定期測定(NoiseRate) V0:ガイガーモード開始電圧 Over Voltage = |Vbias - V0| Sample #1102 Sample#1103 ・ 0 days ・14 days ・28 days ・42 days ・56 days ・70 days ・84 days NoiseRate [kHz] Crosstalk Prob[%] OverV [V] OverV [V] NoiseRateもILDの要求値を満たす。 14
ここまでのまとめ 高温でのMPPC温度依存性を測定した。 - V0は温度に対して線形に変化する。(~0.05 V/℃) - Capacitance ,Cross-Talk Probability は温度に依存しない。 温度加速による長期安定性を測定した。 -85℃で84日間(10年分相当)では故障しない。 目的 • 温度加速によって得られたCurrent の理解にはMPPCが25℃でどのような変化をするのか調べる必要がある。 方法 • 25℃,Over V = 3V で Leakage Current の測定を行う。 15
Other Sample’s Performance(Gain) @ Over V = 3V count Gain (105) count count capacitance[fF] V0 [V] ILC の要求を十分満たしている。
Other Sample’s Performance(Noise) Interpolation @ Over V = 3V ILC の要求を満たさない。
Leakage Current ー 定期測定 Discriminator 故障 電圧は印加した状態 定期測定によるデータの断絶は十分に小さい(~4h/回) T ~ 25 ℃ , ⊿V ~ 3 V Sample #1089 Circuit Type A ?! 指数関数的に減少している。
Leakage Current T ~ 25 ℃ , ⊿V ~ 3 V Sample #1089 Circuit Type A (1時間平均) 時定数は28日程度,定数項は28nA程度。
定期測定 (Gain) Gain に大きな変化は見られなかった。 Sample #1089 Circuit Type A T = 25 ℃ ・ 0 days ・14 days ・28 days ・42 days V0 [V] Time[Day] Capacitance[fF] Time[Day] 20
定期測定 (Noise Rate) ・ 0 days ・14 days ・28 days ・42 days ・ 0 days ・14 days ・28 days ・42 days ※Iexpは1hの平均をとった Leakage Current の変化はNoise Rateの減少が原因。 Noise Rate の減少は現在調査中
加熱試験結果 ・Before ・After Sample #1090 Circuit Type A T = 25 ℃ 電圧を印加せずに85℃で 加熱試験を28日間行った ・Before ・After ・Before ・After Gain は変わらず、Noise Rate は減少した。
New Sample’s Performance @ Over V = 3V count Gain (105) count count capacitance[fF] V0 [V] ILC の要求を十分満たしている。
Noise Rate Interpolation @ Over V = 3V ILC の要求を十分満たしている。
Leakage Current (new sample) T ~ 25 ℃ , ⊿V ~ 3 V Sample #9235 Circuit Type A 電圧は安定して供給されている。
Leakage Current T ~ 25 ℃ , ⊿V ~ 3 V Sample #9235 Circuit Type A (1時間平均) Leakage Current は変化しなかった。
まとめ 25℃においてMPPC の基礎特性を測定した。 -Gain においてILCの要求を十分に満たしていた。 -new sample に関してNoise Rate はILC の要求を満たした。 Old Sample でLeakage Current を50日間測定した。 -50日間でCurrentが指数関数的に減少した。 (時定数28日 ,定数項28nA) Old Sample を28日間85℃に加熱した。 -Noise Rate が加熱前の半分まで減少した。 New SampleでLeakage Current を8日間測定した。 -8日間で Current は変化しなかった。 27
教えて頂いたこと • 旧サンプル出荷時のデータシート • - データを頂きました。(Back Up 参照) • 新旧のサンプルでの Capacitance の違いの理由 • - 厚さが違う。 • これはウェハ購入時に±10%のばらつきがあるため。 • Rq も同様の理由から±20%のばらつきがある。 • 活性化エネルギー Ea の値 • - 浜ホトでは Ea = 0.7 [eV]を使用している。 • どのように測定したかは不明だが、 • 浜松ホトも温度60℃,湿度90%で • 1000h(2年分相当)の耐久テストを行っている。 28
議論したこと • 温度加速試験サンプルの Current が二成分になる原因 • - 不明 • Leakage Current のシフトと急激な減少の原因 • - 85℃の高温に晒され、熱膨張を起こす。このとき、絶縁体などの界面で膨張率が異なるためボンディング等の接触が悪くなり断線状態となると考えられる。 • 定期測定で観測できないのは25℃では元の状態に戻ってしまうためと考えられる。 • 旧サンプルの Noise Rate が増加した原因 • - 不明。#1000番台では製造法が確立しておらず、 • 何が起こっていても不思議ではない。 29
データシート 31
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Gain #1089 Type A, T = 25℃ V0 74.259 ± 0.027 V Capacitance 24.845 ± 0.220 fF V0:ガイガーモード開始電圧 Over Voltage = |Vbias - V0|
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Noise Rate No1102,1103に比べ、 Noise Rateが非常に高い(~3,4倍)。
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Over V ~3 V 0 day Scaler counts Vth [mV]
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Over V ~3 V 14 days Scaler counts Vth [mV]
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Over V ~3 V 28 days Scaler counts Vth [mV]
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Over V ~3 V 42 days Scaler counts Vth [mV]
No.1089 Circuit Type A T = 25 ℃ Over V ~3 V 49 days Scaler counts Vth [mV]
Candidate • Random telegraph signals - Current が2成分に分離する (原因は未だ不明) • マイクロクラック現象 • - 経年変化(クラックの成長)でノイズの発生源が増加し、Current が増加する。 • (クラックが発生しても当初は電気的には異状が認められない。しかし、クラックを介して腐食性イオンが侵入することにより、チップ内の回路が腐食・破壊する。) • (確認が困難)
ILC実験 ILC(International Linear Collider) 電子・陽電子衝突型線形加速器 -全長:約31km -重心系エネルギー:0.5~1TeV 目的: ヒッグス粒子の精密測定, 超対称性粒子などの 標準理論を超える物理の探索 ILDはILCの検出器案の1つ ILDの構成はe+e-衝突点を中心に内側から • 崩壊点検出器 • シリコン飛跡検出器 • 中央飛跡検出器 • 電磁カロリメータ • ハドロンカロリメータ • ソレノイドコイル • μ粒子検出器 40
Slide Title 41
ILDカロリメータ • 電磁カロリメータ • 吸収体:W • 吸収体 • タングステン 特徴:カロリメータまでの半径を大きくとり、ジェット内の粒子エネルギーを個別に測定 → エネルギーの再構成の精度を向上 ILDカロリメータ ・サンプリング型カロリメータ ・検出部:ストリップシンチレータ ・吸収層:タングステン ○チャンネル数:~1千万ch ○3.5Tの磁場中に置かれる 従来のPMTはILDに使えない。 ILDカロリメータに適した 新しい光検出器が必要 42
MPPC Quenching Al Wire resistor クェンチ抵抗 25μm • Multi-Pixel Photon Counter (MPPC) • ガイガーモードAPD(Avalanche Photo Diode)を • 2次元に並列接続した構造。 • 各ピクセルの信号和を読み出す半導体光検出器 • 1pixがhitしたとき1p.e.相当の信号を出す。 • (ガイガー増幅はクェンチ抵抗により終結させる) • コンパクトで磁場の影響を受けにくく、安価である ピクセル拡大写真 V0:ガイガーモード開始電圧 Over Voltage = |Vbias - V0| 1 p.e. 2 p.e. 3 p.e. (p.e.:photoelectron) 43 43
原理(Ⅱ) アレニウスモデルを用いた温度加速 K :温度加速定数 L 1:通常動作時の寿命 L2:温度加速時の寿命 T 1 :通常動作温度 [K] T2 :温度加速時温度 [K] kB:ボルツマン定数 [eV/K] E a:活性化エネルギー[eV] ※活性化エネルギーを0.585 eV 通常動作温度を25 ℃ と仮定 温度[℃] 35 60 80 85 100 温度加速定数 2 11 35 45 97 44
Slide Title Type A Type B MPPC Pulse shape average Peak が変形している。 ケーブルの長さを変えたりターミネートをしても変化しなかった 46
Gain Type A Type B ・25 ・30 ・40 ・50 ・60 Sample #1102 Sample #1103
Noise Rate の Set Up Noise CAMAC Discriminator Coincidence Clock Generator 20ns 10MHz Scaler Gate Generator Width 0.5s 25ns PC 1Hz ECL to NIM 25ns Discriminator Thermostatic chamber(25℃) AMP×63×10 MPPC Vth hoge Digital Multi Meter GPIB Voltage source RS232C 48
Dead time correction ー ー 3MHz程度までなら2つの補正で違いはない。 n = true value m = observed value τ= output pulse width (15ns) ←1MHzで2%程度の補正を受ける。 49
NoiseRate補正前後 Type A Type B ・25 ・30 ・40 ・50 ・60 ● 補正前 □ 補正後 Sample #1102 Sample #1103 NoiseRate(0.5p.e.)は温度が上がると増加する。 50