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π. ~計算法の変遷~ 2006 年2月17日 明治大学理工学部数学科 鎌田 伊織 吉本 清夏. 円周率の計算法の歴史. 円に内接・外接する正多角形の周長の利用 ( アルキメデス ( BC3C ) ・関 孝和 (17 C ) ・建部 賢弘 (18 C) ) 逆正接関数 (Arctan) の Taylor 展開の利用 ( Leibniz (15 C) ・ Sharp ((17 C) ・ Machin (18 C) ) AGM ( 算術幾何平均 : Arithmetic Geometric Mean )
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π ~計算法の変遷~ 2006年2月17日 明治大学理工学部数学科 鎌田 伊織 吉本 清夏
円周率の計算法の歴史 • 円に内接・外接する正多角形の周長の利用 (アルキメデス(BC3C)・関 孝和(17C)・建部 賢弘(18C)) • 逆正接関数(Arctan)のTaylor展開の利用 (Leibniz(15C)・Sharp((17C)・Machin(18C)) • AGM(算術幾何平均:Arithmetic Geometric Mean) (Salamin-BrentによるGauss-Legendre法(1976)・Borwein法) • DRM(分割有理数化:Divide and Rationalize Method) (後 保範(1998) & 金田 康生(2002))
Arctan級数とは? の両辺を微分すると, 項別積分することで, ArctanのTaylor展開が得られる. 実は, x=1でも成立し, Leibniz級数を得る. (1) x= とすると, Sharpの公式が得られる. (2) ・ (1)は収束速度が非常に遅く, 効率が悪い ・ (2)は(1)よりはずいぶん速くなる ・ 長い年月をかけて多くの人々が競って計算するようになった
Arctan級数の公式1/2 • Machin (1706)(当時の最高記録100桁を求め, その後 多くの人に利用された. ) • Euler (1737) (1755)
Arctan級数の公式2/2 • Gauss (1863)(おそらく3項公式で最高効率) (1985年にフェルトンによって1万21桁を得た) • 高野喜久雄 (1982) (2002年に世界一の1兆2400億桁を達成した公式!)
実験結果1/3 部分和の項数 j と 誤差log10(π-S( j ))との関係 *S( j )=各公式におけるTaylor 展開の第 j 部分和 *横軸 =項数 j *縦軸 =πとS( j )の誤差の log 10 をとったもの ・ ■ マチンの公式 ・ ■ オイラーの公式① ・ ■ オイラーの公式② ・ ■ ガウスの公式① ・ ■ ガウスの公式② ・ ■ 高野喜久雄の公式
実験結果2/3 • <グラフからわかったこと> • 傾きは, それぞれの公式において最も収束速度が遅い項による • (収束速度はArctan(x)の|x|が大きいほど遅くなる) • Arctan(x)の|x|が大きい項をもつ公式ほど, |傾き|が小さい • 傾きと|x|のlog10値を比べてみる • *傾きは log10(x )の2倍 • になっている • * 次に, この関係を調べる
実験結果3/3 <Machinの公式( )を例にとって考える> とおき, Taylor展開をすると, となる. また, j での部分和は, よって, πと j での部分和との誤差は, 対数をとると よって,log10xの2倍が傾きになると考えられる.
算術幾何平均とは・・・ ・ のことを昔は算術平均・幾何平均と呼んでいた. ・ とし、 ・数列{ }と{ }は共通の極限に収束する. ・この値を と の算術幾何平均(arithmetic-geometric mean)と呼び、 で表す.
背景1/3 <Legendreの関係式> (ⅰ)第一種完全楕円積分 第二種完全楕円積分 の間に成り立つLegendreの関係式
背景2/3 <Gauss,“the fundamental limit theorem”> 第一種完全楕円積分、第二種完全楕円積分の二変数版を で定めると、 が成り立つ.ただし、
背景3/3 • Legendreの関係式で の時、 であるので、 ①に②を代入して、
ガウス・ルジャンドルの公式 として、 以下の反復式を と の差が所要桁以上になるまで計算する. 所要桁になったら円周率は、 ≒ と求められる.
= と ≒ 関係 ・ ・ ガウス・ルジャンドルの公式より また、
誤差の減少の速さ <縦軸: 横軸:回数n> f i g.πとの誤差
まとめ • 今回は取り上げられなかったが、ボールウェインの4次式では計算精度が4倍である • 現在の世界記録は高野喜久雄の(Arctan)公式とDRM法を使って,2002年11月に後 保範氏&金田 康生氏によって計算された約1兆2400億桁! • 今後もコンピュータの発達によりπの計算記録の樹立は変わってくると考えられる
参考文献 • (1) E.ハイラー, G.ワナー 著, 蟹江幸博 訳, 解析教程 上, シュプリンガー・フェアラーク東京 (1997) • (2) 桂田祐史, πノート, 明治大学数学科助教授 (2004) • (3) 清水康生, πの数値解析, 明治大学数学科 2003年度卒業研究レポート (2004) • (4) ペートル・ベックマン 著, 田尾陽一, 清水韶光 訳, πの歴史, 蒼樹書房 (1973) • (5) 数学文化,Vol.1, 日本数学協会 (2003) • (6)金田康正, πのはなし, 東京書籍 (1991) • (7) 梅村浩, 楕円関数論, 東京大学出版会 (1999) • (8)ドゥラエ・ジャン=ポール(Jean-Paul Delahaye)著, 畑政義 訳, π-魅惑の数, 朝倉書店 (2001) 御静聴ありがとうございました。