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就労支援のため の ICF 国際生活機能分類入門. 独立行政法人高齢・ 障害・求職者 雇用支援機構 障害者職業総合センター 春名 由一郎 Haruna.Yuichiro@jeed.or.jp. 障害に ついて の 「 古くて新しい問題」. 障害についての認識 「障害」「障碍」「 障がい 」「チャレンジド」・・ ・ “Disabled person”, “Person with disability” 「障害者」の範囲の見直し 病気や障害による「生きづらさ」の理解 発達障害、うつ病、慢性疾患、高齢・・・・ 人権問題としての障害 障害者権利条約等の国際的動向
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就労支援のためのICF国際生活機能分類入門 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 春名由一郎 Haruna.Yuichiro@jeed.or.jp
障害についての「古くて新しい問題」 • 障害についての認識 • 「障害」「障碍」「障がい」「チャレンジド」・・・ • “Disabled person”, “Person with disability” • 「障害者」の範囲の見直し • 病気や障害による「生きづらさ」の理解 • 発達障害、うつ病、慢性疾患、高齢・・・・ • 人権問題としての障害 • 障害者権利条約等の国際的動向 • 医療・福祉・教育・職業の総合リハビリテーション
国際生活機能分類 (生活機能、障害、健康の国際分類) 世界保健機関(WHO), 2001
障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方)障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方) • Ⅰ.「障害」概念の構造化の発展 • Ⅱ. 職業生活/人生における障害の構造 • Ⅲ.障害についての関係者の共通認識
障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方)障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方) • Ⅰ.「障害」概念の構造化の発展 • Ⅱ. 職業生活/人生における障害の構造 • Ⅲ.障害についての関係者の共通認識
Ⅰ.「障害」概念の構造化の発展 構造化されていない「障害」概念(~1980年) ICIDH(国際障害分類)(1980年) ICFにおけるICIDHの課題の解決(2001年) 社会における普遍的状況としての「障害」 「医学モデル」と「社会モデル」の統合 医学的視点を補完する「生活機能」の視点
~1980年構造化されていない「障害」概念 • 混沌とした一体的な「障害」の理解;目に見える特徴でのレッテル貼り;心身の異常=社会不適合(一人で生活できず、学校にも行けず、働けない);個人=「障害者」 • 「盲」「めくら」 • 「聾」「つんぼ」「おし」 • 「かたわ」「ちんば」 • 「白痴」「精神薄弱」 • 「狂人」 • 「the disabled」 • ⇒ 偏見と差別
ICIDH(1980年, WHO)障害の構造化の画期的モデル 社会的不利 handicap (社会化) 疾病又は変調 (内的状況) 機能障害 impairment (顕在化) 能力障害 disability (客観化) Impairment Disability Handicap
ICIDHに基づく「障害者」の概念的定義 • 身体障害、知的障害又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者。 機能障害(身体障害等級表等で定める) 能力障害 社会的不利
ICIDHモデルに基づく現行の「障害者」の操作的定義ICIDHモデルに基づく現行の「障害者」の操作的定義 • 身体障害:視覚、聴覚、平衡機能、音声言語、肢体不自由、内部障害 • 知的障害 • 精神障害 • 発達障害(広汎性発達障害、学習能力の特異的発達障害)、高次脳機能障害、を含む • その他 • 難病、等 • 疲れやすさ、外見、ストレスへの弱さ、皮膚障害、腹痛、関節痛、免疫低下等 雇用率カウント・雇用助成金の対象 障害者雇用義務 機能障害 疾病又は変調
ICIDHの課題 1「障害者」の範囲は? • 発達障害は? • エジソン、リチャード・ブランソン、キム・ピーク、某大学教授、等は? • がんや難病の人は? • 腰痛の人は? • 糖尿病、高血圧の人は? • 妊娠中の人は? • 高齢者は? • アルコール依存症の人は? • 薬物中毒の人は? • 近視の人は? • ・・・ 国によって、「障害者」と考えられる人の範囲は大きく異なる。
ICIDHの改定プロセス 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 Madrid London WHO総会 β2版 α版 β1版 最終案 最終案 実地試験 実地試験 ・子どもと若者TF→ ・精神保健等TF→ ・環境因子TF→ 生活機能をいかに記述するか? 障害とは何か?
ICIDH=障害の分類(何を「障害」と考えるかは、意見が一致しにくい)ICIDH=障害の分類(何を「障害」と考えるかは、意見が一致しにくい) 視覚障害 下肢切断 皮膚障害 妄想 学習障害 移動障害 職業障害 障害とは何か?
考えること 学習すること 仕事につくこと 足の構造 皮膚機能 歩くこと 視覚機能 ICF=障害者や能力でなく生活機能そのものの分類 生活機能とは何か? 視覚障害 下肢切断 皮膚障害 妄想 学習障害 移動障害 職業障害 障害とは何か?
機能障害 能力障害 社会的不利 健康問題と障害は表裏一体 健康科学 生理、心理機能、解剖 ADL (日常生活活動) QOL (生活・人生の質) リハビリテーション
「機能障害」「心身機能/構造」 • 医学 • 「症状」(⇒疾患の診断) • 看護 • 「症状」(⇒ケア) • 障害対策 • 「機能障害」(⇒機能訓練、代償対策、障害認定) • 職リハ • 検査、評価
ICF:「心身機能」分類(大分類)(生理的、心理的機能)ICF:「心身機能」分類(大分類)(生理的、心理的機能) • 精神機能 • 感覚機能と痛み • 音声と発話の機能 • 心血管系・血液系・免疫系・呼吸器系の機能 • 消化器系・代謝系・内分泌系の機能 • 尿路・性・生殖の機能 • 神経筋骨格と運動に関する機能 • 皮膚及び関連構造の機能
全般的精神機能 意識機能 見当識機能 知的機能 全般的心理社会的機能 気質と人格の機能 活力と欲動の機能 睡眠機能 個別的精神機能 注意機能 記憶機能 精神運動機能 情動機能 知覚機能 思考機能 高次認知機能 言語に関する機能 計算機能 複雑な運動を順序立てて行う機能 自己と時間の経験の機能 ICF:「精神機能」の中分類
ICF:「身体構造」分類(大分類)(解剖学的分類)ICF:「身体構造」分類(大分類)(解剖学的分類) • 神経系の構造 • 目・耳および関連部位の構造 • 音声と発話に関わる構造 • 心血管系・免疫系・呼吸器系の構造 • 消化器系・代謝系・内分泌系に関連した構造 • 尿路性器系および生殖器に関連した構造 • 運動に関連した構造 • 皮膚および関連部位の構造
従来の「障害」より普遍的な視野をもつ「活動」と「参加」従来の「障害」より普遍的な視野をもつ「活動」と「参加」 • ADL: Activity of Daily Living • 見る、聞く、動く、操作する、食べる、衣服の着脱、交通機関の利用、入浴、排便、・・・・ • QOL: Quality of Life • 当人の目標に応じた達成度 • 客観的、主観的 「活動」 (Activity) 能力障害 (Disability) • 「参加」 • (Participation) 社会的不利 (Handicap)
評価点 領域 構成要素 能力 実行状況 d1 学習と知識の応用 活動 d2 一般的な課題と遂行要求 個人レベル d3 コミュニケーション d4 運動 d5 セルフケア d6 家庭生活 d7 対人関係 d8 主要場面での生活 社会レベル d9 地域・社会・市民生活 参加 ICF:「活動と参加」分類(大分類)(人間が行う全ての活動と社会参加)
機能障害 活動制限 参加制約 生活機能(ICF) Functioning=生活機能(「生きる」機能) 心身機能 ・構造 活動 参加 生命 生活 人生 Disability=障害 「障害」とは「生きること」に関する健康問題
生活機能=「生命・生活・人生」は、全ての人に関わること生活機能=「生命・生活・人生」は、全ての人に関わること
「障害」のある人はマイノリティではない。レッテル貼りはできない。「障害」のある人はマイノリティではない。レッテル貼りはできない。 • 「障害者」の範囲は? • 日本: 1.8% • ドイツ: 5% • 米国: 10% • ちょっとした配慮がないと仕事が続けられない人たちが多い • がんサバイバー、脳卒中サバイバー、膠原病、偏頭痛、腰痛、精神疾患・・・ • 誰もが一生のうちに「障害」を経験するという観点での認識が世界的な動向 • ただし、年金等の支給対象はより狭い範囲に限定されたり、差別禁止では幅広く見たり、という目的に応じた範囲の設定はある。
「生活機能/Functioning」モデルによる障害観の発展「生活機能/Functioning」モデルによる障害観の発展 例: 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)H25.4.1施行」 (「障害程度区分」→「障害支援区分」、難病を障害者に加える、等)
ICIDH → ICF • ICIDH (1980): International Classification of Impairment, Disability, and Handicap(国際障害分類) • ICF (2001): International Classification of Functioning, Disability and Health
21世紀の健康問題とICF • WHOの健康の定義「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」 • 世界保健報告2000:世界の保健医療制度の業績評価の初の報告。高齢者の介護、うつによる失業・・・ • 病気の国際分類(ICD)はあるのに、死亡に至らない健康影響についての国際分類がない! Brundtland事務総長Murray政策根拠情報部長
WHO国際分類ファミリーとICF~疾病分類を補完する健康分類~WHO国際分類ファミリーとICF~疾病分類を補完する健康分類~ 疾患、死因、受療理由 ICD-10 International Statistical Classification of Diseases& Related Health Problems 介入 手順 プライマリケア での適用 受療 理由 ICF International Classificationof Functioning, Disability and Health 専門分野を 基盤とした適用 IND 国際疾病用語 生活機能、障害、健康 主分類 適用 関連物
疾病分類と生活機能分類 • 疾病分類(ICD-10) (精神障害についてDSM-IVもほぼ同一) • 精神遅滞、ダウン症候群、統合失調症、自閉症、アスペルガー症候群、全盲、難聴、心不全、腎不全、HIV感染症・・・ • 生活機能分類(ICF) • 心身機能:知的機能、全般的な心理社会的機能、注意機能、記憶機能、視覚機能、聴覚機能、心機能、尿排泄機能、免疫系の機能・・・ • 活動と参加:読み書き、課題遂行、日課遂行、コミュニケーション、運動・移動、清潔・健康管理、対人関係、教育、職業訓練、職業準備、職探し、就労継続・・・
国際疾病分類ICD-10により記述される 健康状態 心身機能・ 構造 活動 参加 生活機能・障害 国際生活機能分類ICFにより記述される
? ICIDHモデルの課題2(社会モデルからの批判) DPI:障害者インターナショナル、1980 Disabled People’s International 機能障害 インペアメントをもつ人を閉め出す社会 能力障害 物理的・社会的障壁 社会的不利
障害=個人の問題 福祉・保健政策 父権主義 障害者のリハビリ 障害=社会の問題 機会均等政策 消費者主義 社会側の環境改善 医学モデル vs. 社会モデル
ICIDH改定ネットワーク 北欧 WHOタスクフォース 英国 カナダ 日本 オランダ EU 精神保健 フランス 米国 小児・学童 環境因子 スペイン語圏 NGO アメリカ心理学協会 障害者インターナショナル 欧州障害フォーラム 世界精神保健連盟欧州協議会 統合インターナショナル リハビリテーションインターナショナル オーストラリア +各国の個別研究者、インターネットでのモニター登録
環境因子 個人因子 生活機能と障害は個人と環境の相互作用によるダイナミックな現象 健康状態 心身機能・ 構造 活動 参加 ICF=医学モデルと社会モデルの統合
ICF「環境因子」分類(大分類) • 生産品と用具 • 自然環境と人工環境 • 支持と関係 • 家族、友人、知人、同僚、上司、部下、専門職者、ペットなど • 態度 • サービス、制度、政策 障害者インター ナショナル(DPI) 会長 Rachael Hurst
障害者基本法(H23年8月改正)での障害者の定義障害者基本法(H23年8月改正)での障害者の定義 • 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 • 社会的障壁:障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
診断 治療方針 「症状」 「障害者」支援と「障害のある人の職業生活」の支援の違い 医学的視点 生活機能的視点 病因 健康状態 健康状態 心身機能 活動 参加 /構造 心身機能 活動 参加 /構造 環境因子 個人因子 環境因子 個人因子 各構成要素間の相互関係の理解と制御
Hawking教授は「職業的な障害者」か? □8時間労働は? □単独通勤は? □手先の巧緻性は? □医療的自立は? □生活自立は? □コミュニケーションは? • 筋萎縮性側策硬化症(発症から35年以上;人工呼吸器使用) • 物理学者 • 研究、執筆、講演(海外を含む)
ICFの枠組みからみると、 Hawking教授が働けることは不思議なことではない。 健康状態(ALS) 機能障害 (全身の筋麻痺、呼吸、心臓機能障害、発声機能障害) 職業関連活動 職業的目標(物理学者、講義の免除) 環境因子 ・職住近接、段差のない家の提供、人的支援(公的援助サービス、私的な看護婦)、人工呼吸器(車椅子据付)、電動車椅子、特殊な入力機器、コンピュータ読み上げ機 個人因子 ・興味 ・スキル ・知識や経験
医学的視点と生活機能的視点-同じ症状を見ても対応は全く異なる-医学的視点と生活機能的視点-同じ症状を見ても対応は全く異なる- • 症状 • 「知能指数低下、全般的心理社会的機能低下」 • 医学的視点 • ⇒診断[自閉症スペクトラム障害]⇒治療、機能訓練、障害者としての処遇・措置 • 生活機能的視点 • 知的機能や心理社会的機能の問題を、本人が希望する生活や仕事に影響させない方法の検討⇒ジョブコーチ、同僚や上司への働きかけ、仕事内容やツールの検討等
医学モデルによる縦割り連携からの脱却と、本人の生活機能中心の連携への転換医学モデルによる縦割り連携からの脱却と、本人の生活機能中心の連携への転換 医学モデルによる地域連携 生活機能モデルによる地域連携 就職(=最終ゴール) 障害のある人 (生命・生活・人生) 労働 評価 支援 職業生活上の生活機能 ナチュラル・サポート 教育 評価 支援 職業準備 就職活動 職場適応 就業継続 キャリアアップ 福祉 評価 支援 医療 診断 治療 医療支援 福祉支援 教育支援 労働支援
障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方)障害構造論(健康状態による人の生命・生活・人生への影響の総合的見方) • Ⅰ.「障害」概念の構造化の発展 • Ⅱ. 職業生活/人生における障害の構造 • Ⅲ.障害についての関係者の共通認識
Ⅱ.職業生活/人生における障害の構造 生活場面としての職業生活 能力評価と環境因子 個人因子と職業生活を通した社会参加
Ⅱ.職業生活/人生における障害の構造 生活場面としての職業生活 能力評価と環境因子 個人因子と職業生活を通した社会参加
障害のある人の「生活」? 職業生活 障害のある人への支援は日常生活と地域生活の支援が中心で、就労は「究極のゴール」? 地域生活 日常生活 施設 医療 家族 学校
職業生活は「生活」そのもの(職業生活における「活動」)職業生活は「生活」そのもの(職業生活における「活動」)
職業経歴の各局面での障害の例(職業人生における「参加」)職業経歴の各局面での障害の例(職業人生における「参加」) • 職業準備段階 • 両親や教師の影響など • 就職活動 • 書類選考、面接、会社訪問、筆記試験、等 • 職務遂行、就業継続 • 体力、健康管理、対人関係、・・・等々 • 退職 • 不必要な自主退職